SDGs学生メンバーで、日本で初めてVMAT(災害派遣獣医療チーム)を福岡にて設立した船津先生にお話を聞いてきました!
先生紹介
船津敏弘先生
1980年鳥取大学獣医学科を卒業。小動物臨床獣医師として動物病院にて勤務したのち、1982年ふなつ動物病院開業、1987年ハーレー動物病院共同開業。
福岡県獣医師会理事として過剰繁殖問題解決のため、「あすなろ猫」の定義づけや執筆活動、セミナーなど精力的な活動を行う。
東日本大地震にて取り残された犬猫のレスキューへ向かった時の体験をきっかけに、災害時における動物救護の専門チーム、VMATを福岡県に設立する。
また、動物環境科学研究所・所長を務める。
VMATって?
地震や洪水等の大規模災害時には、人命救助が最優先され、動物に対する支援は遅れがちとなる。
それを改善しようと生まれたのがVMATである。
VMAT (Veterinary Medical Assistance Team:災害派遣獣医療チーム)とは、大規模災害等が起きた際に、動物の保護、救出や災害状況の情報収集を行う部隊であり、訓練を受けた獣医師、動物看護師、動物トレーナー、トリマー等の獣医療関係者で構成され、行政が対応できない災害急性期(発生後48時間)に活躍する。
負傷した動物に対する活動だけでなく、避難所やシェルターでの動物の健康管理と人と動物の円滑な関係づくりをサポートすることも目的の一つであり、動物と一緒に避難する人の助けとなる。
日本では、船津先生を中心に福岡で初めてのVMATが組織され、現在は全国で14箇所に活動部隊ができている。
熊本地震出動時のエピソード
2016.04.16に熊本大地震が発生し、翌日には調査隊として現地に赴いた。
そこではペットがいることにより車中泊を余儀なくされる家族の姿があった。
また、本来ならば避難所においてペットはケージに入れなくてはならないが、多くの飼い主が不安のためケージ外に出し、寄り添いあっていた。誰もが疲弊している状況下で、それを咎めることは出来なかった。
実際にVMATとして出動したのは10日後の4/25であった。
というのもあくまで福岡県の団体であった福岡県VMATは、県外への出動に関しては許可が必要だった。しかし震災時の役場は正常な機能を失っており、それらの手続きはスムーズには行われなかった。
活動しているとVMATの青い隊服が非常に役に立った。一目で救援に来た者だと分かり、被災者の方々にも頼って貰い易かった。
現場に同行避難用テントも設営されていたものの、非常に暑く、長時間過ごすことは困難であった。
実際には以下のような活動を行なった。
・ペット相談コーナー、ペット健康相談所
それほど件数は多くなかったが、ペットに関わる悩みの解消、健康診断等を行った。
また、下顎膿瘍が破裂したダックスが救急的に飼い主から持ち込まれ、アニコムの大型検診車内で緊急処置を行った。
・避難所巡回
避難所を巡回し、必要なケアや聞き取り調査を行った。
・救援物資の供給
ペットフードやペットシーツなどの供給を行った。
等々
人と動物の関わり(避難所での話や、被災した動物の心理など)
避難所においては、基本的にペットをケージに入れることがルールである。しかし、人間が不安な時に親しい人が側にいて欲しいと願うのと同様に、飼い主やペットも不安な時はお互いを必要としている。そのためルールがあるとは言えど、獣医師がペットをケージにいれることを強要することは難しいというのが現状である。
また、避難所で行われるペットの診療においても飼い主とペットの心境が伺える。実際に熊本地震で行った診療において、被災直後はいざ診察するとなっても飼い主が無意識のうちにペットを離せなかったが、2週間後再度診察するとなった時、飼い主はペットを手から離し、診察に応じたということがあった。
ペットは将来のことを不安に思い、精神的に苦痛を感じることはほとんどない。しかし、飼い主が心的外傷を受けた状態になってしまうとペットは普通ではない状況を察知し、かなりのストレスを受ける。災害というイレギュラーな状況において、人間が動揺することは仕方のないことではあるが、なるべく普段通りに過ごすことはペットの安心に大きくつながる。そしてペットを守るためにもまず飼い主自身が自分の命を守ることが大切である。
VMATの今後の課題
・次の世代にどうVMATを引き継いでいくのか?
災害はこれからも続く(より増えてくる..?)ので、若い世代の人にも動物防災に興味を持ってもらいたい。獣医師は全科診療(オールラウンダー)の人が多いので、災害救助で役に立ちやすいはず!(耳掃除〜出血への対応までなんでもできる)
・VMATは動物防災の一つのパートである。
全ての都道府県にVMATが組織されることは理想ではあるが、そこまで行かなくともどんな地域でも動物防災ができる体制整えていくことが必要である。
学生VMAT Club募集
この記事を読んでVMATに興味を持った学生のみなさん、一緒に学生VMAT clubを作りませんか?学生である広い視野を持った今だからこそできる経験を一緒にしてみませんか?興味のある方は以下の連絡先まで!
担当:白石周吾、藤田滋、土山いさら