講演順に、講演題名と概要(あれば)を列挙、講演ファイル(公開可能な場合)ダウンロードリンクは講演題名の横です。
講演1 樽家篤史「宇宙の非線形構造形成」
概要: 暗黒物質の重力不安定性による宇宙の構造進化について、ここ最近の話題と取り組んできた研究を話します。
講演2 白水徹也「ブラックホールは宇宙よりも小さい」
概要: インフレーション宇宙におけるブラックホールの事象の地平面の面積に対して上限が存在することが知られている。本講演では、証明を再考することで、より精査された不等式が得られることを示す。(今回は気の利いたことがあまり話せないので、心苦しく思う次第です。)
講演3 藤井悠里「生命と惑星の共進化:光環境の変遷とシアノバクテリアの進化」
講演4 寺山慧「化学空間における探査と普遍性について」
概要: 存在しうる分子のなす空間(化学空間)は莫大で、小分子のみでも 10^60 個を遥かに超えるとされるが、実験的に素性の判明している領域はごくわずかである。分子機能性材料や薬の開発はこの化学空間内の探索に他ならない。本講演では、機械学習と分子シミュレーションの融合による化学空間の効率的な探索の試みを、いくつかの例を示しながら紹介する。
講演5 森川雅博「 1/f ゆらぎの簡単なモデル:同期・共鳴・赤外発散からの多様性」
概要: 1/f ゆらぎは自然界にあふれている。固体物理から神経系、生体系、海洋、地震、太陽、宇宙まで、時系列のパワースペクトルが周波数 f に対して f^α (-1.5<α<-0.5) となる超低周波の信号を持つ。普遍的なので簡単な原理があるはずだと追究されてきたが、1925年Johnsonによる真空管実験以来、まとまった解決がない。
我々は、揃った波の作るうなりが 1/f ゆらぎを生成する簡単なモデルを提案する。揃った波は、一般に同期や共鳴や赤外発散を持つ系で自発的に形成され偏在する。うなりなので 1/f ゆらぎには Wiener-Khinchin の定理は成り立たず長時間相関もない。また揺動散逸定理は成り立たず保存系でも存在する。
1/f ゆらぎは振幅変調なので、その発現のためには復調(整流とか閾値とか2乗検波)が必須である。これが多様性を生む:半導体では電圧2乗平均や検液、地震では断層、太陽フレアでは磁気再結合、生体・神経系ではスパイク発火、音楽や流体の流れでは2乗平均、など。特に、地震や太陽フレアなどには共鳴が背景にある可能性があり、地球自由振動や太陽5分振動との関連を議論する。
講演6 岡村隆「Wigner 関数でトンネル現象をみる」
概要: 量子効果であるトンネル現象は、古典粒子描像では本来解釈できない。しかし、量子状態を相空間上の擬儀確率分布として表す Wigner 関数でトンネル現象を眺めたら、どのような「古典粒子描像」解釈ができるだろうか?
講演7 犬塚修一郎「銀河系円盤領域の星形成史の解明に向けて」
講演8 萩原広道「乳幼児期における初期の語彙の意味形成・意味分化」
講演9 三島隆「円筒対称時空上の電磁波-重力波の厳密解を用いた非線形現象の解析」
概要: 円筒対称性を課したEinsten-Maxwell方程式系の解を、簡便な方法で構成し、その解を用いて、円筒対称時空上における重力波と電磁波間の転換現象について紹介したい。
講演10 阪上雅昭「ダイナミックシステムアプローチと機械学習、人の発達」
講演11 鵜沢報仁「Slow-roll inflation and the swanpland」
概要: 本講演では、超弦理論や重力理論で注目されている swampland 予想が inflation の slow-roll 条件とどのように関係しているかについて報告する。はじめに、swampland 予想とは何かについて説明し、inflation の動力学を探るうえで何故 swampland 予想に注目したのかを簡単に述べる。次に inflation 宇宙の進化を記述するスカラー場の振る舞いを swampland 予想の観点から議論し、それにより得られるスカラー場の動力学に対する制限を明示する。最後に、本講演で扱う slow-roll inflation のモデルでは、swampland 予想を破る場合があるのかについて言及する。
講演12 河井伸介「PBH from inflation motivated by supergravity and superstrings 」
概要: LIGO/Virgoによる重力波の直接観測の成功に関連して、初期ブラックホール(Primordial Black Holes, PBH)及びそれに付随した重力波の生成メカニズムが盛んに研究されている。本講演では、超重力理論や超弦理論から示唆されるインフレーション模型においてPBHが生成される可能性と、その観測的制限、将来の重力波干渉計による観測可能性について議論したい。
講演13 奥住聡「惑星形成環境の温度構造理論の刷新」
概要: 地球をはじめとする惑星は原始惑星系円盤の中で誕生する。惑星やその他の小天体の組成の起源を解明するためには、原始惑星系円盤の温度構造の理解が必須である。この発表では、我々のグループが近年取り組んできた、磁気流体力学とダスト成長理論に基づく円盤温度理論の刷新と、そこから見えてきた惑星形成の描像を紹介する。
講演15 小林晋平「Gravity and its surroundings in noncommutative or discrete spacetime」
概要: 量子的な時空のモデルである離散的な時空やフラクタル時空など、座標間に非可換性のある時空における重力解について述べる。またそれらを相対論の範疇で考えた特異点を持たないブラックホール(regular ブラックホール)や分数階微分によるモデル化にも触れる。
また最後には講演者がこの数年で行なってきた物理教育や様々なアウトリーチ活動についても報告したい。
講演16 斉田浩見「銀河系中心 いて座A* は一般相対性理論のブラックホールなのか?」
概要: 私たちの銀河(天の川銀河)の中心(いて座A*)には、太陽の400万倍の質量をもつ巨大ブラックホールが居るだろうと強く推察されています。では、このブラックホールは、一般相対論で記述できるのでしょうか? この問いかけをベースとした研究を現在進めている途中です。その途中経過をお話しします。
また、時間があれば、小林くん(↑)のNHK番組や YouTube には及ばないものの、これまでの高校生向け講座なども簡潔に紹介します。