演習の2週目

2週目の課題は3Dゾエトロープです。

ゾエトロープとは

別名回転のぞき絵とも呼ばれる、 筒型をした本体の内側に連続する絵が貼られた映画史以前のアニメーション・ディバイスの一つです。ヴィクトリア時代におもちゃとして流行しました。1834年にイギリスの数学者ウィリアムス・ジョージ・ホナーが発明したとされます。

筒の内側に貼られた一連の複数の絵を、その絵と同じ一定間隔で水平開いた切れ目から覗くことによって、連続した静止画を脳が動画として認識するのはPersistence of vision 呼ばれる現象によるとされます。これは我々の網膜上に、先に観た静止画が一定時間残るために起こるオプティカル・イルージョンとされます。

回転のぞき絵について 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


この演習で製作するのは3Dゾエトロープです。どんな仕上がりになるべきかはリンク先の過去の生徒達の演習動画を視聴して参考にして下さい。一周12コマから成るサイクリックアニメーションをリプレイスメント・アニメーションでつくります。因みにサイクリックとは、最初と最後のコマが繋がっている、または繋がっていなくても連続することが自然に感じられる構造のアニメーションのことです。前者なら人の歩行を、後者なら波が打ち寄せる様子などを思い浮かべて下さい。今時点のこの説明では製作方法が今ひとつ理解ができないかもしれませんが、下のデモ動画や説明写真をみていただければきっとわかると思います。

リプレイスメント・アニメーションについて

複数の絵やモデルを作って準備しておき、それらをカメラの前で置き換えながら撮影する方法のことです。ゾエトロープの場合もこの方式です。筒の内側には紙に描かれた複数の絵が列として回転する際に、各スリットの間にある黒い表面に視覚を遮られながら連続的に絵が入れ替わるのを単一の視点から観たときにアニメーションに見えるわけです。この方式のアニメーションをリプレイスメント(置き換え)と呼びます。この演習においては粘土で小さな像を12個作りスマホのカメラレンズの前で入れ替えて動画にします。

その対語として使われているかどうかはわかりませんが、もう一つ我々が馴染みのあるものにモーフアニメーションという方式もあります。これはカメラの前の被写体は入れ替えずに、被写体そのものを変形させたり絵を部分的に描き変えるなどの手を加えてアニメーションさせる方式です。演習1週目のバウンシング・ボールを思い起こして下さい。デモ動画では複数のボールを準備する代わりに一つのボールを一コマずつ移動したり変形させてアニメーションを撮りました。

駒撮りアニメーションの商業作品の多くはリプレイスメントとモーフの両方の方式を使用したハイブリッドです。

lachsa_zoe.mp4

過去の生徒達の3Dゾエトロープ作品

横の動画は私が数年前教えていたカリフォルニアの美術高の生達が作った3Dゾエトロープです。9、10年生達(15、16才くらい)の子供達の手によるもので、非常にうまくいっているものがいくつか収められてます。中にはサイクリック・アニメーションとして機能していないものもありますが、造形的な魅力や愛嬌があったりと、それぞれに魅力のあるゾエトロープを作りました。

気をつけて観ると、造形は良くてもプレイスメント(配置)が雑でアニメーションがガタついてみえる場合もあります。ゾエトロープとしての精度が落ちないよう撮影する際にはプレイスメントにも気をつけて下さい。

ゾエトロープのテンプレートについて

ゾエトロープのモデルを配置するためのテンプレートをこちらからダウンロードできます。A4 用紙いっぱいにプリントアウトしたのを一番外側の円で切り抜いて使います。プリンターをお持ちでない方は、USBドライブでデータをコンビニに持参してコンビニのプリンターから出力して下さい。(一枚10円程度) 自分でコンパスを使って作っても構いません。その場合は正円360度を12で均等割りするために30度ごとに6本の円心を通る線を引き、一つの円を12のセクションに分けます。自作の場合は紙の色も自由に選べるので黒やその他好きな色で構いません。円の直径は20から26センチくらいが作業しやすいでしょう。

黒い台紙が良い人はこちらを。参考動画のように線が見えない台紙にしたい人は、 A4 サイズにきっちり切った薄い黒画用紙を手差しして上の普通のテンプレートを印刷すると、つまり黒い紙の上に黒い線を印刷すると、作業するのに肉眼では線がギリギリ見えるけど写真には映らないテンプレートが出来ます。ただしこの場合に紙が厚すぎたり手差し給紙がうまくいかないとプリンターが紙詰まりしてしまいますので注意しましょう。こちらの黒地に白線の物を印刷して撮影直前にマジックで潰す方法もあります。

いよいよ実制作開始

課題4. 3Dゾエトロープはこうして作る

先ず最初にこのシンプルなアニメーションディバイスの仕組みを説明します。

小中学校の時授業中に教科書の隅にパラパラ漫画を描いたことのある人がいるかと思います。自分では描かなかったとしても、人が描いたものを見せてもらった経験なら皆にあるでしょうか。そうです、この円形のテンプレートは12ページから成るパラパラ漫画だと考えて下さい。教科書の隅のパラパラマンガは長方形の本の開いている方の角に描くのですが、円形の場合は円の外側寄りを使います。30度のビザスライス形の一枚一枚が一コマであり、アニメーションはピザのフチの方りでやります。本の頁の角っこを一枚一枚めくる代わりに、この場合は正円の円心を画鋲で留めて30度ずつ回転させて写真を撮ります。


セットアップされたスマホ他に準備するもの

  • ゾエトロープのテンプレート(できれば2枚、造形用と撮影用)のプリントアウト(コンビニからでも)

  • 粘土、 またはリプレイスメントアニメーションに向くと思われるありとあらゆる物 (※自分で造形しなくていい良い場合リプレイスメント・アニメーションとしてあまりに工夫が無いと再提出になる可能性があります)

  • 画鋲

  • 画鋲を刺すことのできる平面(絨毯の床やスケッチブックや開いたダンボール、スチレンボードなど)※最低でも21x21cm以上の面積が必要。その他ヨガマットなど探せば色々あると思いますが、高級な家具に(高級でない家具だとしても)画鋲を刺して後々ご家族とトラブルになったりしないよう気をつけて下さい。この平面はアニメーションしている最中にフガフガ動かないようにセットアップの際にテープなどで留めて固定しておいて下さい。

セットアップのデモ動画

モデルは粘土以外の物を使っても良いです。例えば植物の種やプチトマト(?)や市販のお菓子など。ただ自分で成型しない場合はアイディアで独自性を出すよう頑張ってみてください。単に回転させるだけとかだと再提出になる可能性があります。


ゾエトロープとは直接は関係ありませんが、 作家 PES の作品はリプレイスメント・アニメーションのアイディアの宝庫です。



everydayHIT.mp4

村上のデモゾエトロープがなんとか出来ました。

題して「自粛中のわたし」。このアニメーションの為にはあと4コマくらい余計に欲しい感じですが今回は12コマ厳守ってことでこれにて終了。

手順


  1. 12コマでどうアニメーションするかアイディアを出してスケッチする。

  2. テンプレートを丸く切り抜く(粘土の水分を吸ってヘラヘラになった場合に備えて2枚あると良い)必要ならテンプレートを少し厚めの紙で裏打ちする。

  3. アイディアに沿って、テンプレートのスケールに合わせた大きさで12個モデルを粘土で(またはあっと驚く何かを使って)作る

  4. テンプレート円盤の上にモデルを設置してゾエトロープを完成させる

  5. ゾエトロープを適切な平面の上に画鋲で留める。光がちゃんと当たっているかどうかに留意しプレイスメントも再びチェックする。

  6. どの角度からどの画角で撮るのが最も効果的なアニメーションになるか考える。

  7. 自分が最高だと思う位置と角度と照明でスマホを設置してアプリを立ち上げる。fps は8で設定する。

  8. 画鋲が動かぬよう注意しながら円盤を一コマずつ回転させ計12コマの写真を撮る。何かうまく行かないことがあるなら問題を解決して再度撮り直す。

  9. ループさせてみて問題がなければ全12コマを一度に選択し二回コピペをアプリ内でする。つまりループなしで三週するアニメーションにする。

  10. できたアニメーションを動画に書き出し、ファイル名を指定の様式で付けなおし manaba の 「テーマDの二週目」レポートとして提出する。ファイル名はs20xxxxx_Namae_kadai04(学籍番号_姓の英文字表記_課題番号)を厳守すること。

※1. アングルを二種類で撮っても可。(平面的見下ろしアングルとクローズアップの斜めアングルなど)その場合ファイル名の最後にa やbを足しておくこと。

※ 2.ギャラリーに匿名で出されたい人はスレイトが無くても可。しかしその場合はファイル名は絶対に正しくつけること。...でないと成績がつけられません。


課題の提出先

課題の提出先は4月20日現在はmanaba 上の、基礎ユニットⅠのレポートページにある「分野D レポート二週目」から添付ファイルとして提出して下さい。

提出する前に、まず課題が終わったら動画をアプリから書き出す必要があります。(StopMotion Studio での書き出し方は振り子課題PDFの13枚目にスクショがあります)それを自分あてに添付ファイルとしてメールします。動画の書き出し方はアプリによって違います。

課題動画にファイル名を付け直して指定された場所に課題を提出します。

ファイル名の付け方は s20xxxxx_Yourname_kadai04 (学籍番号_姓の英文字表記_課題番号)として下さい。


※ちゃんと3回か4回のループにさせてアップしてください。ループにしてないものは再提出するまで成績がつきません。

※注意書きがあったにも関わらず白粘土の方が結構みられます。きちんと陰影が出れば良いのですが、そうでなければ黒テンプレートを使ったり照明に一層の注意を払ってください。