ウナギから社会の「サステナビリティ(持続可能性)」を考える
ウナギから社会の「サステナビリティ(持続可能性)」を考える
かつてニホンウナギは、水路や水田など水辺の至る所に入り込み生息をしていた。
これは里山・里川に人手が入ることで、自然や生物の多様性が確保される「SATOYAMAイニシアチブ」や「里山コモンズ」の思想のとおり、人が関わらない原生的な自然以上に餌となる生物が豊富だったことの証明ではないか。
特にウナギは、生物学上「アンブレラ種」と呼ばれており、水圏生態系の頂点に立つ生物である。その個体数が維持されていることで生態系の下位にあたる生物や餌となる生物の量も維持されていると考えられている。
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私たちは、行政や企業から多様なメンバーが集まった勉強会「埼玉県サステナビリティ研究会」を2015年設立し、社会で実践されているサステナビリティ活動について学び、一緒になって考えた。
その活動を通じて、「座学だけではなく、もっと現場に出たい!」「社会や経済の基盤である自然環境の実態を把握して、保全活動を楽しく実践したい!」という想いが高まり、当時、絶滅危惧種となり話題となっていた「ニホンウナギの保全」をテーマとして、2017年8月に「サステうなビリティ・クラブ(通称:うなクラ)」を誕生させた。
まずは、埼玉県のメイン河川とも言える荒川と、歴史ある都市緑地「見沼田んぼ(さいたま市・川口市)」を流れる芝川を主たるフィールドとして、子どもたちと一緒になって生息状況調査を行うことから取り組みを始めている。
うなクラで、海と川・沼・池、田んぼを結ぶ生きものと触れ合いながら、子どもや若者に対する新たな環境学習の場を提供することで、将来、彼らが我々の仲間として活動に加わり、持続可能な社会・未来へとつながっていくことを期待している。
芝川の風景
1 ニホンウナギの生息データの取得・蓄積
水環境の改善に取り組む上では、関係する基礎データの存在が欠かせない。県内の主要河川荒川とその支川の芝川で生息データを取得、県の水産行政や大学とも共有することでその活用を可能とする。
2 身近な絶滅危惧生物種の調査を通じた子ども等の環境意識の向上
感受性の高い子どもや若者が、ニホンウナギに係る問題をきっかけに自然の劣化や生物多様性の問題に関心を持ち、環境問題を自分ごととして考えられる大人へと成長する。
3 里山・里地・里川保全活動の価値に係る再確認
里山コモンズという概念と価値は未だ社会に浸透しているとは言い難い。そこに棲む生き物の観点から参加者及び団体スタッフがその価値を再確認することで更なる活動の強化につなげる。
部 員
部長:佐藤正太
副部長:安村雄一郎
構成メンバー(イメージ) :
・無類の鰻(生き物・うな重)好き
・埼玉県サステナビリティ研究会員
・漁業協同組合員
・埼玉県川の国応援団
・大学生(環境サークル等の会員)
・埼玉県職員及び県内の市町村職員
役 割
・水生生物保全に係る行政機関や協同組合浦和のうなぎを育てる会様の取組を支援する実働部隊(現地スタッフ・事務処理等の支援)
・河川での水生生物調査の実施(ボランティア)
※ 行政職員はボランティア休暇等を活用して対応。
・産学官連携の組織としてネットワークを充実させていく。
具体的な取組
・越谷レイクタウン及び出羽堀での生き物調査
・荒川や芝川でのニホンウナギ遡上調査(秋ヶ瀬取水堰での汲み上げ放流等)など