洞窟から極域の氷床、さらに現在の大気に至るまで、液体・固体・気体として存在する「水」に注目し、過去と現在の環境変動を多角的に調べています。鍾乳石やアイスコアに保存された「過去の水」そのものを分析することで、長い時間スケールにわたる環境・気候変動のしくみを解明しています。
洞窟から極域の氷床、さらに現在の大気に至るまで、液体・固体・気体として存在する「水」に注目し、過去と現在の環境変動を多角的に調べています。鍾乳石やアイスコアに保存された「過去の水」そのものを分析することで、長い時間スケールにわたる環境・気候変動のしくみを解明しています。
洞窟は外界の影響を受けにくい安定した地下環境であり、古くから人類の居住や活動の場として利用されてきました。同時にこのような安定した環境は、長期的な環境変動の記録が保存されやすいという特徴も持っています。とくに鍾乳石は、降水や地下水の環境情報を取り込みながら成長する天然の記録媒体として注目されています。近年の安定同位体分析技術の進展により、鍾乳石から高精度に過去の気候変動を復元する研究が進んでいます。
本研究室では、鍾乳石内部に液体のまま保存された過去の降水(流体包有物)を抽出し、数千年前の水循環や気温変動を直接分析しています。観測記録が限られていた陸域の気候変動史の理解を進めるとともに、地下における炭素循環や二酸化炭素の挙動に関する研究にも取り組んでいます。
流体包有物中の気泡が動いている様子(空隙のサイズは20μm程度)
過去の環境変動を詳しく理解するためには、試料に含まれるわずかな同位体情報を高精度に測定する技術が不可欠です。本研究室では、環境試料の分析に必要な測定手法の開発から取り組んでいます。既存の方法では対応できない場合には、装置の設計や改良を行い、新しい分析技術を開発します。
鍾乳石や岩石に含まれる極微量の水(流体包有物)の水素・酸素同位体比測定、水蒸気の同位体分析など、多様な試料に対応した測定技術を開発しています。こうした手法の開発により、これまで取得が難しかった環境記録を読み取ることが可能になります。
鍾乳石の内部には、過去の降水が液体のまま閉じ込められています。本研究室では独自に開発した分析装置を用いて、ナノリットルレベルの流体包有物の同位体比分析を行っています。写真や動画は、顕微鏡下で観察される流体包有物や分析装置の一例を示しています。
南極極や北極の氷床で掘削されたアイスコアは、過去の大気環境や気候変動を層状に記録した自然試料です。氷そのものや含まれるエアロゾルの安定同位体比を精密に分析することで、過去の気温変化や大気循環の変動を明らかにする研究を進めています。
さらに、水蒸気や降水の同位体比に関する研究として、酸素18だけでなく酸素17も同時に測定する三酸素同位体分析に取り組んでいます。これらの測定結果から導かれる指標は 17O-excess と呼ばれ、水蒸気の蒸発や輸送の過程を反映するため、過去の湿度変化を復元する手がかりとなります。本研究室ではこの分野の初期から研究を進め、古気候復元への応用を展開しています。