13. 上田紘司・岩崎雄一・亀田 豊・内藤 航 (2024)未計測の粒径範囲を考慮したマイクロプラスチック粒子の個数濃度推計と濃度換算. 水環境学会誌 47 (4): 105-112. (DOI)
8.Ueda K., Nagai T. (2021) Relative sensitivity of duckweed Lemna minor and six algae to seven herbicides. Journal of Pesticide Science 46(3): 267-273(DOI)
藻類6種と水草のコウキクサLemna minorの除草剤に対する種の感受性差をまとめた論文です。初めに効率的なハイスループット培養試験法を活用し、コウキクサの感受性(半数影響濃度、EC50)を評価しました。次に、その結果を既に発表されている藻類の感受性データと比較しました。その結果、除草剤の種類によって感受性の高い生物種が異なることが明らかとなり、高感受性種は除草剤の作用機作と関係していることが示唆されました。
【重要用語】
コウキクサ:湖沼や水路、水田、ハス田などに群生する常緑の浮葉植物です。一次生産者に対する除草剤の毒性を調べる試験生物種として欧米などで導入されています。日本でも2020年3月に導入されました(環境省)。
7.上田紘司・永井孝志 (2021) 魚類と甲殻類等に対する水生植物の生態学的有用性に関するシステマティックマップ. 保全生態学研究 26: 33-46 (DOI)
システマティックレビューの手法を用いて魚類と甲殻類等に対する水生植物の有用性のエビデンスを明らかにした論文です。また、新たな試みとして生態学分野の10 種類の研究手法を3 段階のエビデンスレベルに分類しました。その結果、水生植物が魚類や甲殻類等に対して生息場・餌資源・産卵場として有用であることを高いエビデンスで示す文献を抽出することができました。しかし、今後のエビデンスレベルの評価には、研究手法だけでなく内的妥当性と外的妥当性の観点が必要と考えられました。
【重要用語】
システマティックマップ:明確に定式化された課題に関し、一定の基準を満たした複数の研究に基づく研究データを検証し、エビデンスを導きだす研究手法です。
内的妥当性:研究の対象となった集団に再度同じ介入を行った場合、同じ結果が再現される程度。
外的妥当性:研究の対象とは異なる集団にその介入を行った場合、同じ結果が再現される程度。
5.上田紘司・芦沢 淳・藤本泰文 (2018) 伊豆沼・内沼およびその周辺水域におけるトンボ目成虫の種組成と季節消長. 伊豆沼・内沼研究報告 12: 9-16. (DOI)
伊豆沼・内沼およびその周辺地域におけるトンボ目成虫の種組成および季節消長を明らかにした論文です。
4.上田紘司・芦沢 淳・藤本泰文・嶋田哲郎 (2016) 2014年の調査で確認された伊豆沼・内沼およびその周辺地域のトンボ目成虫相. 伊豆沼・内沼研究報告 10: 21-37. (DOI)
これまでに10科44種のトンボ目成虫が確認されている伊豆沼・内沼およびその周辺地域において、 2014 年にトンボ目成虫を対象とした定性調査を行ないました。その調査結果について既に発表された論文と比較し、トンボ目の生息状況の変化について考察した論文です。本調査では新たに確認された3種(アオイトトンボ、サラサヤンマ、リスアカネ)を含む10 科 37 種の生息が確認されました。一方、環境省および宮城県のレッドデータブックの掲載種を中心に10 種が確認されませんでした。そのうち5種(オゼイトトンボ 、モートンイトトンボ 、カトリヤンマ、ハッチョウトンボ、シオヤトンボ)が湿地に生息する種でした。近年の沼周辺は植生遷移による乾燥化が進んでおり、浅い水面が見られる場所はほとんどありません。生息場の保全が急務と考えられました。
【重要用語】
伊豆沼・内沼:宮城県北部(栗原市、登米市、38˚43’N、141˚07’E)にある水深1.6 m程の浅い淡水湖沼で、ガンカモ類など渡り鳥の重要な越冬地として知られ、1985年にラムサール条約登録湿地に指定されている。