一部工事中。。。
研究室のビジョン
我々の研究室では、電子の持つ“スピン”の自由度に着目して、新しい物理現象の解明、新しい機能性材料の創出、新しい機能性デバイスの開発を目指している。これらの研究は、従来のエレクトロニクスに、スピン自由度を積極的に取り入れた研究になることから、“スピントロニクス”と呼ばれている。スピン自由度を積極的に利用した省消費電力・高密度・高速動作・高感度が期待されるスピントロニックデバイスは、情報社会の急速な発展に伴い、次世代型エレクトロニックデバイスとして、近年非常に期待されている。当研究室では、磁性多層薄膜、磁性細線、3次元構造等を舞台とし、電気、スピン、熱、光、高周波、MEMS、数値計算、機械学習など関連する様々な最先端技術を制限なく駆使し、材料開発及びデバイス開発の研究に精力的に取り組んでいる。
熱とスピンの融合研究
スピントロニクス分野では、熱を融合した新しい研究テーマが急速に広がっている。代表例としては2004年に日本で発見されたスピンゼーベック効果や異常ネルンスト効果である。スピン自由度をうまく駆使することで、熱の制御や検出、発電が可能になってきている。我々の研究室では特に熱流センサーを応用先の出口に見据えて、研究開発を進めている。
熱流センサーは、熱マネージメント社会における要素技術として期待されている。熱流センサーは温度センサーとは異なり、熱流を可視化することが可能なセンサーである。発熱前の異常な熱の流れ込みや、プラント内の加熱プロセスにおける熱流入量の最適化が可能になるとされる。熱流センサーのさらなる高感度化を目指して、我々は従来とは異なる、熱伝導率に注目して研究を進めている。熱伝導率の評価は非常に難しく、100 nm以下の金属薄膜における評価法は存在しないが、我々は異常ネルンスト効果を使って、 1 nmの極薄膜での計測法の確立に成功した。またこの技術を基に、低い熱伝導率を有する材料に注目して研究を進め、GdCo合金において世界最高感度を実現した[Odagiri et al., Sci. Rep. (2024).]。(本研究室の修士学生が熱心に取り組んだ研究成果です。Natureグループの姉妹紙に出版されました。)
またさらにナノインプリント法を利用することで 3D熱流センサーの開発を進めている。これまでの2D型の研究では実現し得なかった巨大な感度を実現した[Imaeda et al., APL (2024).]。(本研究室の修士学生が熱心に取り組んだ研究成果です。注目論文Featured Articlesに選出されたり、IEEEの発表賞を受賞し、注目されています。)
機械学習を用いた研究
磁気パラメータは磁石材料の特徴を知るうえで重要な値であり、材料開発研究における指標を与える。しかし、次世代磁気記憶デバイスなどにおいて重要とされる磁気パラメータの中には、評価手段が確立されていないものや、精度よく評価できないものがある。我々は機械学習を用い、強磁性体薄膜の磁区画像から評価が難しい複数の磁気パラメータを一瞬で同時に取得できること目指している。
これまでの研究ではマイクロマグシミュレーションを用いて作製した磁区画像を用いてDMI定数は異方性分散の推定に成功している[Kawaguchi et al., npj Comup. Mater. (2021).]。(米国の磁気学会のチュートリアル講演や、ドイツの物理学会の招待講演、東大理物のipiセミナー、電気学会の招待講演など、注目されているテーマです。)
さらに 光学顕微鏡画像を用いた実験画像からの推定にも成功している[Kuno et al., APL Mach. Lean. (2023).]。この研究では準安定状態の磁区画像からの推定にも成功している。(本研究室の修士学生が熱心に取り組んだ研究成果です。)
また撮像スケールの異なる画像からのパラメータ推定にも成功している[Watanabe et al., APL (2025).]。この研究では、これまで学習画像とテスト画像の撮像スケールを揃えていたのに対して、異なる撮像スケールでもある条件では推定が可能であることを明らかにした。(本研究室の学部学生が熱心に取り組んだ研究成果です。)
3次元スピントロニックデバイスの研究
これまでのスピントロニクスの研究は、そのほとんどが2次元デバイスを用いたものであった。しかし、3次元デバイスへの挑戦は次世代エレクトロニクスにとって喫緊の課題である。しかし、3次元化のためには、基板面に対して垂直方向への、微細加工技術が必要になっており、現在の技術ではほとんど実現できていない。我々は、ナノインプリリント法を利用して3次元デバイス作製技術を確立し、2次元デバイスでは到底実現し得なかった、高効率、高密度、高感度なデバイス開発を目指す。
まず3次元熱流センサー開発を進めており、3次元デバイスが、2次元デバイスに比べ、けた違いに高い感度を示すことを明らかにした[Imaeda et al., APL (2024).]。(本研究室の修士学生が熱心に取り組んだ研究成果です。注目論文Featured Articlesに選出されたり、IEEEの発表賞を受賞し、注目されています。)
レーストラック磁気メモリ開発の研究