Multinuclear Complexes
多核錯体

【キーワード】多核錯体、らせん錯体、ヘリケート、シッフ塩基、キレート効果、ピロール、ビピロール、典型元素、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、蛍光、多色発光、白色発光、円偏光発光、時間分解発光、ストークスシフト、固体発光、単結晶X線構造解析、キラルカラム、光学分割、回転障壁、DFT計算

らせん錯体を用いた円偏光発光材料の開発

発光には、右・左回転する2種類の円偏光発光(CPL: Circular Polarized Luminescence)があり、3Dディスプレイ、セキュリティ、センサへの応用が期待されています。CPL特性を示す色素は、キラルな有機低分子(ヘリセン、ビナフチル、環状・筒状構造体等)、キラルな金属錯体、ランタノイド錯体、分子集合体・有機高分子(らせん高分子等)に大別されます。しかし従来のCPL材料は、①高価なキラル源やレアメタルを原料とする、②煩雑・高環境負荷な有機合成が必要、③熱や媒質変化に対する低い安定性(ラセミ化)、など多くの問題点を抱えています。

本研究では新たなCPL材料として、3つの4座配位子と2つの3価典型元素(Al, Ga, In)からなる中性の二核三重らせん錯体の合成に取り組んでいます。①右巻き(P体)、左巻き(M体)の違いにより光学活性を示すため高価なキラル源が不要、②金属イオンと多座配位子との錯形成で簡便に合成可能、③高温、強酸性(強塩基)に対する高い安定性などの特徴を有しており、多色・強発光特性を示す色素として機能することを見出しました。

Dinuclear Triple-Stranded Helicates Composed of Tetradentate Ligands with Al(III) Chromophores: Optical Resolution and Multi-Color Circularly Polarized Luminescence Properties
Toshikazu Ono,* Kohei Ishihama, Ai Taema, Takunori Harada, Kiyohao Fukusho, Yuki Nojima, Masashi Hasegawa, Masaaki Abe, Yoshio Hisaeda*
Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60, 2614-2618.
https://doi.org/10.1002/anie.202011450


Dinuclear Triple-stranded Helicates Comprising Al(III), Ga(III), or In(III) and a Hydrazine-linked Bisiminopyrrolyl Ligand: Synthesis, Structure, Optical Resolution, and Chiroptical Properties

Kohei Ishihama, Toshikazu Ono,* Toru Okawara, Takunori Harada, K. Furusho, Yuki Nojima, Masashi Hasegawa, Taro Koide, Masaaki Abe, Yoshio Hisaeda*

Bull. Chem. Soc. Jpn. 2021, 94, 573-578.
https://www.journal.csj.jp/doi/abs/10.1246/bcsj.20200327

四核ホウ素錯体を用いた多色発光材料、円偏光発光材料の開発

多色発光かつ高い発光量子収率を示す新たな蛍光色素の開発が望まれています。特に円偏光発光(CPL: Circular Polarized Luminescence)を示すキラルな発光体の創製は、構造多様性や発光色について、まだ発展途上にあり、新たな分子デザインが望まれています。

本研究では、強発光性のビルディングブロックとしてピロール系ホウ素錯体に着目し、2,2'-ビピロールを前駆体とする配位子を用いることで、ホウ素(BF2)を含む四核錯体のワンポット合成を行いました。これらの錯体は、強発光性を有するとともに、溶液および固体状態でCPLを示すことや、量子収率が最大で100%に達する多色発光を達成しました。単結晶X線結晶構造解析、フェムト秒過渡吸収分光法などの光学測定、計算化学によって、これらの錯体を包括的に評価しました。結果として、ビピロールの2,2'軸周りの回転障壁エネルギーを適度に調整することにより、剛直性と柔軟性のバランスがとれた旗蝶番型色素となることが明らかとなりました。さらに固体状態でエナンチオマーを会合させることにより、緑、緑黄、黄色などの多色CPLの発光を観測することができました。

Highly Fluorescent Bipyrrole-based Tetra-BF2 Flag-hinge Chromophores: Achieving Multicolor and Circularly Polarized Luminescence 
Luxia Cui, Hyuga Shinjo, Takafumi Ichiki, Koichi Deyama, Takunori Harada, Kohei Ishibashi, Takumi Ehara, Kiyoshi Miyata, Ken Onda, Yoshio Hisaeda* and
Toshikazu Ono*
Angew. Chem. Int. Ed. 2022, 61, e202204358 (Front Cover)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.202204358