本研究室では群ロボットシステム(複数の移動ロボットを同時に作業させるシステム)の状態推定や移動制御に関する研究を行っています.
移動ロボットの協調作業に関する技術相談・共同研究を歓迎します.お気軽にお問い合わせください.
ロボットに関する公開講座を不定期で開催しています.詳しくは一般向けページをご覧ください.
群ロボットでは複数のロボットがお互いに観測し合い,情報交換することで群れ全体の目的を達成します.多数のロボットで構成されることから,少数のロボットが故障しても残りのロボットで作業を継続できることが,群ロボットのメリットの1つとして挙げられます.
ロボットの故障と一言で言っても,実際にはセンサの故障,通信機の故障,モータの故障,など様々な故障が考えられます.例えばセンサが故障した場合は,故障ロボットは周囲を観測できず,他のロボットの位置もわかりません.一方で通信機やモータは故障していないため,他のロボットの観測情報を利用して作業を継続できる可能性があります.
いずれかの故障が起きても,故障していない機能を活用して故障ロボットを作業に参加させ,群ロボット全体の作業に貢献するための手法を研究しています.
マルチホップ通信の例
群ロボットの多くは無線通信を利用して,近くのロボット同士で情報交換を行わせることが想定されています.しかし,各ロボットが長距離無線通信を行うことには様々な問題(通信遮蔽物の存在や電波干渉,送信電力コスト)が考えられるため,バケツリレーのような通信方式(マルチホップ通信)によってネットワークを構成するモバイルアドホックネットワーク(MANET)によって問題を解決することが考えられています.
アドホックネットワークによって情報交換を行う群ロボットシステムには,通信路が途切れてしまう危険があります.各ロボットは移動に際してネットワーク全体が常に連結であるように(通信路が常に確保されているように)気を付けて移動する必要があります.しかし連結性が崩れることを恐れるがあまり,ロボット間の距離を近づけすぎると,ロボット同士が衝突してしまったり,自由な移動が制限されてしまいます.
MANETを構成する群ロボットの自律移動に関する問題
このような複雑な条件下においてもロボット群のスムーズな自律移動を実現するために,ネットワーク構造の推定や協調移動に関する分散アルゴリズムの開発と解析を行っています.
以下の動画は,ロボット群が移動しながらフォーメーションを変形する例を示しています.我々の提案手法によってネットワークが途切れないように,ロボット同士が衝突しないようにフォーメーションを変形させていることを確認できます.
提案手法では,ロボットの移動速度の上限などの様々な制約を考慮できる,モデル予測制御と呼ばれる手法を採用しています.これは最適制御問題の解を数値計算で求める事によって制御入力を決定する手法で,幅広いクラスのシステムに有効であることから注目されています.本研究ではモデル予測制御手法を分散化し,ネットワークの連結性維持と衝突回避を実現しています.
ロボット間ネットワークが連結であるように注意して移動しても,ロボットの故障によって連結性が崩れることがあります.我々はこの問題に対して,ネットワークの弱点(articulation node)を発見する分散アルゴリズムを開発しました.さらに,各ノードの重要度 (故障した時にネットワークへ与えるインパクト) を考慮することで,重要なロボットを保護しながら重要でないロボットには自由に移動させることが可能になりました.
以下の動画では,ロボットが範囲全体を覆うように移動しながら,故障や通信遮蔽物の影響によって生じるネットワークの弱点を補う様子を表しています.ネットワークの弱点(赤い〇)が発生した際に,周囲のロボットはネットワークを修復するかどうかを重要度から判断しています.