本研究室では群ロボットシステムの自律分散制御に関する内容に軸に,各学生が興味のあるテーマを自身で選定して卒業研究/特別研究を行っています.以下は自律分散制御が必要になる対象の一例です.
複数の無線機器を繋いで即座にネットワークを構築できる技術(例えばモバイルアドホックネットワーク(MANET)など)が開発されています.この技術を利用して各ロボットがMANETの通信ノードとなり,ロボット以外の無線機器にとって都合の良いアクセスポイントとなるには,各ロボットは協調してそれぞれ適切な位置へ移動する必要があります.このとき,各ロボットの移動先を「誰が」「どのように」決定すれば良いのでしょうか.
一番シンプルな解決方法は,1台のコンピュータが集中的にシステム全体を統括することです.しかしこの方法では,ロボットが多数ある場合,全ロボットの移動を決定するための計算コストや全ロボットの情報を1か所に集めるための通信コストが多くかかってしまいます.例えばロボット100台のシステムを想像してください.バケツリレー式に情報を集めることも,全ロボットの行動を考えてあげることも,大変な労力が必要になってしまいます.
上記のようなロボット数の増加に伴う問題を解決するには,各ロボットの移動を「ロボット自身が」「すぐ手に入る情報だけで」決定することが重要になります.各ロボットがどのような計算を行い移動すればシステム全体として都合良く振る舞えるのかを考えることが本研究の主な内容となります.
研究成果例:通信2重連結性を修復する移動制御手法の提案
提案制御手法によってロボットの故障によって生じたネットワークの弱点(関節点)を他のロボットが自律的に移動して修復することができました.(赤い円がが故障するロボットを示しています)
研究成果例:実験用ロボットの開発と通信維持の検証
制御手法を検証するためのロボットを開発しました.ここでは2ロボット間の通信可能最大距離(1.5m)を維持できることを実験によって確認しました.
研究成果例:通信可能範囲拡大のための被覆制御実験
提案手法によって障害物を回避しながら,かつ通信可能距離を維持しながら,各ロボットが自律分散的に被覆範囲を拡大できました.
山本, 村山, "センサ故障ロボットを含む群ロボットの協調移動のための相対位置推定" 日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス講演会 (ROBOMECH2024), 2024年5月
平, 村山, "センサ故障を考慮した群ロボットの被覆維持制御" 日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス講演会 (ROBOMECH2024), 2024年5月
岩崎, 村山, "充電のための移動を考慮した群ロボットの2重連結性制御実験" 計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会 (SI2023), 2023年12月
今村, 村山, "群ロボットの長時間運用を考慮した充電器割当制御手法" 計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会 (SI2023), 2023年12月
山本, 村山, "群ロボットにおける外界センサが故障したロボットの協調移動" 計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会 (SI2023), 2023年12月
平, 村山, "群ロボット実験のためのLED点滅を利用した近傍ロボットの認識方法" 日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス講演会 (ROBOMECH2023), 2023年6月
岩崎, 村山, "群ロボットネットワークの2重連結性制御手法の実験検証" 日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス講演会 (ROBOMECH2023), 2023年6月
山本, 村山, "群ロボットによる電波強度を利用した無線通信範囲拡大手法" 計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会 (SI2022), 2022年12月
平, 日浅, 村山, "群ロボット実験システムのためのフルカラーLEDを用いたID識別" 計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会 (SI2022), 2022年12月
日浅, 村山, "自律分散的な実験システムによる群ロボット連結性制御手法の検証" 計測自動制御学会 システム・情報部門 学術講演会 (SSI2022), 2022年11月
日浅, 村山, "群ロボットのネットワーク連結性維持手法の実験的検証 " 日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス講演会 (ROBOMECH2022), 2022年6月
岩崎, 村山, "群ロボットネットワークの2重連結修復手法の改善" 日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス講演会 (ROBOMECH2022), 2022年6月
日浅, 岡本, 村山, "ネットワーク連結性維持実験のための群ロボットシステムの開発と検証" 日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス講演会 (ROBOMECH2021), 2021年6月
松本, 村山, " 摂動代数的連結度を用いた群ロボットネットワークの 2 重連結性の修復と維持" 計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会 (SI2020), 2020年12月
西, 村山, "連結性を失った群ロボットネットワークの連結性修復移動制御" 計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会 (SI2020), 2020年12月
大橋, 村山, "無線通信情報を利用した自律移動ロボット群の確率的位置推定手法" 計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会 (SI2018), 2018年12月
岩橋, 村山, "複数台の自律移動ロボットによる通信維持のための協調移動制御", 第23回高専シンポジウム, 2018年1月
川島, 村山, "通信維持を目的とした自律移動ロボットの安全移動可能地図生成", 第23回高専シンポジウム, 2018年1月
大橋, 辻本, 森本, 村山, "自律移動ロボットによる無線ネットワークの通信維持", システム制御情報学会 研究発表講演会 (SCI'17), 2017年5月
森本, 村山, "無線メッシュネットワーク構築のためのモジュールロボットの開発と制御手法の検討", 第22回高専シンポジウム, 2017年1月
辻本, 村山, "無線通信の品質を考慮した自律型ロボットの移動制御手法", 第22回高専シンポジウム, 2017年1月
薮田, 宮本, 村山, "メッシュネットワークを構築する群ロボットによる被覆制御", 第22回高専シンポジウム, 2017年1月
宮本, 村山, "非凸空間における群ロボットの被覆制御", 計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会 (SI2016), 2016年12月
宮本, 村山, "狭路を通過する群ロボットのネットワーク構造制御", システム制御情報学会 研究発表講演会 (SCI'16), 2016年5月
宮本, 村山, "通信連結性を維持した群ロボットのフォーメーション制御", 第21回高専シンポジウム, 2016年1月
中出, 村山, "無線通信環境構築のための群ロボットの被覆制御", 第21回高専シンポジウム, 2016年1月
古谷, 村山, "無線通信の電波による位置推定", 第21回高専シンポジウム, 2016年1月
藤田, 村山, "自律移動ロボットのための2.5次元の環境地図生成手法の研究", 計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会 (SI2015), 2015年12月
藤田, 村山, "自律移動ロボットのための高さ情報を含む環境地図生成手法", 計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会 (SI2014), 2014年12月
研究室年数:11年(在籍12年−在外研究1年)
卒研生総数:39人(研究室の年数に対する割合 3.5[人/年])
うち進学者数:20人(卒研生総数に対する割合 0.51、年数に対する割合1.8[人/年])
学科内最優秀発表数:6件(年数に対する割合 0.55[件/年])
卒研生学外発表数:14件(卒研生総数に対する割合 0.38[件/人]、年数に対する割合1.4[件/年])
専攻科生総数:8人(卒研生総数に対する割合 0.21)
うち大学院進学1人(専攻科生総数に対する割合 0.13)
専攻科生学外発表数:15件(専攻科生総数に対する割合 1.8[件/人])
東北大学、広島大学、岡山大学、信州大学、茨城大学、岐阜大学、奈良女子大学、九州工業大学、京都工芸繊維大学、豊橋技術科学大学、長岡技術科学大学、和歌山高専専攻科、
2024年度:
移動機構が故障したロボットを活用したネットワーク範囲拡大手法の開発
長時間運用を想定した群ロボットの協調充電手法の開発*
2023年度:
群ロボットの充電器割当手法の開発
確率分布を利用した近傍ロボット位置推定手法の開発
移動機構が故障したロボットの近傍ロボットの協調移動手法の開発
故障を考慮した群ロボットの2重連結性修復制御
群ロボットにおける外界センサが故障したロボットの協調制御
2022年度:
実験用群ロボットの遠隔利用のためのインターフェース開発
群ロボット実験システムのためのフルカラーLEDを用いたID識別
長時間実験のための群ロボットハードウェアの改良
群ロボットによる無線通信範囲拡大のための移動制御手法開発*
2021年度:
群ロボットネットワークの2重連結修復手法の改善
故障を考慮した群ロボットネットワークの動的な連結性改善手法*
群ロボットの連結性維持のためのネットワーク構造の性質調査
障害物がある環境での照明ロボット群による被覆制御実験
群ロボットネットワークの連結性維持実験のためのロボット識別機能の開発
2020年度:
群ロボットネットワークの2重連結修復/維持制御*
連結性を失った群ロボットネットワークの連結性修復制御
充電行動を考慮した被覆制御手法の検討
群ロボット自律分散制御実験検証のためのロボット開発
カメラ画像による近傍ロボットの位置計測とID識別
2019年度: (在外研究のため卒業研究なし)
2018年度:
画像処理による人流解析
2017年度:
電波強度のみを用いた協調追従制御
通信可能範囲地図の生成と経路計画
2016年度:
スマートフォンのセンサを利用した気象予測アプリケーションの開発
機械学習による局所天気の解析と予測
アドホックネットワークを形成するロボット群の開発と通信維持制御の検討*
アドホックネットワークを形成するロボットの電波強度を利用した自律移動制御
被覆制御を行う群ロボットのネットワーク構造制御
2015年度:
スマートフォンの気圧センサを利用した降雨推定
無線通信電波強度による移動体の位置推定
群ロボットの通信範囲を考慮した被覆制御*
狭路を通過する群ロボットの通信構造制御
2014年度:
動画像による雲速度の推定
無線電波強度による距離推定
全方位カメラによる3次元位置計測
複数ロボット間の衝突回避
2013年度:
距離センサによる障害物高さの推定
群ロボットの協調位置推定手法の検討
※2021年度より自主実験からプレ卒研に名称が変わりました.
卒業研究では上記のように群ロボット/分散システムに関する内容を行いますが,4年生後期の自主実験ではテーマを限定していません.ただし本研究室で実行可能な内容に限ります.テーマが思いつかない場合は相談にのりますが,その場合は計測制御・情報処理・ロボティクス関連のテーマになります.
過去の自主実験テーマ例
2022年度:
2021年度:
2017年度: 人に集まる群ロボット/画像認識による誘導ロボット
2016年度: マルコフ連鎖を用いた文章予測変換/暗闇方向へ移動する照明ロボット
2015年度: 環境センサネットワーク(マイコンによる観測とデータ転送/ソーラーパネルによる電源確保)
2014年度: 倒立振子ロボット/机から落ちない移動ロボット
2013年度: 文字を書く2リンクマニピュレータ/音声認識によるしりとり
倒立振子ロボット(2014年度)
2リンクマニピュレータ(2013年度)