公開シンポジウム

【公開シンポジウム】 令和6年9月7日(土)14:35~16:50

テーマ

 「子どもの世界」からみえる特別活動の新たな風景

 

テーマの趣旨設定

 2021年度に実施された本学会の創立30周年記念集会「特別活動がつくる学校の未来―開かれた研究と実践に向けて―」では、特別活動研究の課題として「特別活動に関する批判的検討の不足」が提起された。その背景には、本学会が「特別活動の研究の充実・発展奨励並びに普及を図ることを目的」(会則)としているがゆえに、特別活動は「よい」という前提に立った議論が展開されやすいというジレンマがある。

 例えば、特別活動において育成を目指す資質・能力の1つとして、「意見の違い等を理解した上で認め合い、互いのよさを生かすような関係をつくる」人間関係形成能力が掲げられている。しかし、リアルな子どもの世界に目を向けると、子どもたちが心理的安全性の保障されない教室で、空気を読む「優しい関係」に束縛されていることも少なくない。こうした状況に対して、「それは特別活動が量的・質的にきちんと行われていないからだ」という反論だけでは、諸刃の剣である特別活動の本質を見逃すことになりはしないだろうか。集団活動を通して連帯性や協調性を育むことは、その反作用として連帯・協調できない者を排除する機能を生み出しやすく、これを大人・教師がコントロールするのは至難の業である。結果として、こども達が排除を回避すべく「優しい関係」を形成することに、特別活動が寄与してしまう可能性も否定できないだろう。こうしたネガティブな側面を問題視し、集団活動の縮小や学級集団の解体を訴える声すらある。

特別活動に対する批判のまなざしを受容し、乗り越えていくためには、教師・大人が理念や理想論のみを振りかざすだけではなく、子どもや学級の複雑な現実から特別活動の本質を問い直していくことが必要ではないか。折しも2022年には「こども基本法」が制定され、全ての子どもの声を聴き、教育活動に反映させていくことが求められている。また、2023年度の第32回大会では、主体性(エージェンシー)の視点から、予測困難な時代における特別活動の役割について検討がなされた。本大会では、この成果を発展させつつ、「特別活動は(そもそも)子どもの主体性を尊重した活動である」という暗黙の了解をあえて疑ってみたい。

 特別活動を指導する教師・大人の側の視点だけでなく、子どものコスモロジー(意味世界)からみたとき、どのような特別活動の景色がみえるだろうか。学校教育として制度化された「自治的活動」という制約を伴いつつも、なお「優しい関係」を編み直すような可能性を見出すことができるのか。学会外からの意見にも耳を傾けつつ、参加者全員で議論していきたい。


・コーディネーター: 京免 徹雄(筑波大学) 山田 真紀(椙山女学園大学)

・パネリスト:    清水 弘美(学校法人八王子学園なかよし幼稚園)

           長谷川 祐介(大分大学)

           古田 雄一(筑波大学)

           土井 隆義(筑波大学)

・指定討論者:    添田 晴雄(大阪公立大学)