草津白根火山

草津温泉と火山

草津白根山では,山頂の湯釜火口湖,山麓の草津温泉をはじめとして各所で温泉・熱水が湧出しています.これらの起源は,高温火山ガスが凝縮することで形成された共通の熱水であると考えられます.

温泉や熱水は,山体浅部に広がる粘土層に規制されて地中を山体規模で流動しています.そのような熱水循環システムは,山体形成史を反映した地下浅部構造に規制されていると考えられます.また,地球物理学的観測事実から,白根火砕丘直下の数 100 m 程度の深さには不透水性の粘土層で覆われた熱水だまりが存在すると考えられています.水蒸気噴火は,この熱水だまりと地表面との間にクラックが形成されることで発生します.

草津白根山の一般的な解説は,産業技術総合研究所「草津白根火山地質図」や,気象庁「草津白根山」などのホームページを参照ください.

本学による火山観測体制

東京工業大学が運用する定常観測点として,地震計は13か所,地殻変動(傾斜計,GNSS)は10か所,全磁力が5か所あります.このほか,現地へ赴いて実施する地殻変動観測を数か所,火山ガス定点採取を5か所,湯釜湖水採取を1か所,近隣の温泉水採取を数か所で実施しています.湯釜火口湖では水位と水温を連続観測しているほか,火口湖内に監視カメラを設置しています.さらに,気象庁や防災科学技術研究所の観測点も存在します.

本学の定常観測点が最初に設置されたのは1991年でした.2014年時点で地震計は6か所,地殻変動は3か所でした.2014年3月以降の白根山活発化,2018年の本白根山噴火をうけて,火山観測装置を強化しています.

噴火予測の難しさ

過去に草津白根火山で発生した水蒸気噴火では,多くの場合,噴火に先行する異常が観測されています.現在は,白根火砕丘を取り囲むように稠密観測網が敷かれており,更に,噴気や火口湖の化学成分も定期的に測定されています.このような充実した多項目観測により,将来発生するであろう水蒸気噴火の先行過程が観測できるものと期待しています.

しかし,これまでの同火山の事例を検討すると,噴火先行現象の内容は噴火場所・規模とは関係がなく,しかも,時代とともに先行現象の内容が変化しています.たとえ噴火先行現象に類似する変化が観測されても,噴火に至らないケースも多々ありました.草津白根火山において,観測データに現れる変化から噴火前兆現象を識別することは容易ではありません.その典型的な事例が,本白根山で2018年に発生した噴火でした.


解説資料


草津白根山に関する研究論文リスト(制作中)


以上