私たちがやっているシステム神経科学は学際的な領域なので、研究には生物学の知識や実験技術から数理統計やプログラミングまで様々なテクニックを使います。また、研究によっては経済学や心理学など文系学部などの知識も必要になることがあります。逆に言うと、色々な知識が後から役に立つということが良くあります。ですので、学部生で「自分は今xx学部にいるのだけど神経科学をやりたいと思っています」という方には、まずは自分が今いる学部での勉強や卒業研究に打ち込んで、その上で自分がやりたい事がやれるような研究室がある大学院を探すことをお勧めしています。神経科学の研究は大学院からでも十分に可能です(学部から始めることも勿論悪いことではないです)。
以上を踏まえた上で、以下では私たちの研究室でやっているようなシステム神経科学で必要とされる知識がどのようなものか具体的に書いてみます。
数理統計については、理系の学部生であれば授業で習う線形代数・微分積分・確率統計を受講したり復習することをお勧めしています。自習する場合には簡単なもので良いので練習問題が沢山のっている教科書を勧めています(例えばマセマ出版社のシリーズ)。具体的な目安としては、統計検定2級くらいの知識があれば神経科学の実験的な研究を始めるには十分だと思っています。
生物学の知識については、大学で細胞生物学や分子生物学の授業があれば、それを受講することを勧めています。自習する場合には「エッセンシャル細胞生物学」を勧めています。
プログラミングはPythonやMatlabを良く使います。やったことが無い人には東京大学のPython入門を一通りやってみることをお勧めしています。
後、大学院では英語で論文を読んだり書いたりするし、海外の研究者との議論は英語で行うので英語は大事です。
神経科学をちゃんと勉強してみたいという方には、「スタンフォード神経生物学」が日本語で読めるなかで一番まとまっていると思います(うちの研究室ではこの本の第二版で輪読会をしています)。
理論神経科学はやっていないです。新しい解析手法を考案したり使ったりすることには取り組んでいますが、理論ではなくて実際の脳活動データに立脚した研究を行っています(自分で実験して取得するデータも公開データも両方利用)。
fMRIで計測したヒト脳活動データ(視覚応答、安静時脳活動)を使った研究をしています。今のところ公開データや共同研究者から提供されるデータを用いた研究が中心です。将来的には自分たちでもfMRI実験をやりたいと思っています。
脳波はfNIRSなどは今のところ扱っていません。