本大会の大会長 木村秀太による、大会全体のコンセプトの説明です。「出題傾向」のページと併せ、是非ご一読ください。
1. 概要
本大会のコンセプトは「2025年度の学生クイズ界における短文基本タイトル戦」です。具体的には、「abcに向けての練習試合」としての位置付けに留まらず、それ自体独立のタイトルとしての価値を有することが明白な大会にしたいと考えています。
2. 理由
なぜ、本大会にabcとは独立の価値を有する短文基本タイトル戦にしようと考えたのか。私は、その根拠を「近年の学生クイズ界における短文基本シーンの状況」に求めました。以下、私の学生時代の経験も交えながら、この点を詳述していきます。
短文基本という競技クイズの一ジャンルを象徴する大会に「abc」が挙げられます。20年を超える歴史、最新回の参加者1100人超えという規模、クイズに通暁したスタッフの方々により一年をかけて用意される問題群、大きな会場と豪華な演出、それら全てが折り重なって今日まで唯一無二のバリューが築かれてきたと思います。私も京都大学に在籍していた4年間、最初から最後までabcで活躍することを目標にクイズをしていました。「短文基本シーンでの活躍を目指す多くの学生にとっては、abcでの活躍が他のクイズ大会での成功体験では代替不可能な固有の意義を有している」と言っても過言ではないでしょう。
しかし、abcの前述したような意義を有し、短文基本シーンでの活躍を目指す学生がabcに強烈な憧憬の眼差しを向けてしまうがゆえに、abcでの活躍を夢見る過程で深刻な苦悩に陥る学生は少なくありません。私もそのような苦悩を抱えた経験を有する一人です。もちろん、この苦悩はabcが多くの学生の目標とされていることの裏返しであり、abcが持つ魅力の証左とも言うべきものですから、abcの主催者の皆さまに改善を促すべき性質のものではありません。むしろ、abcにはこれからも学生の憧れの舞台であって欲しいと強く感じています。とはいえ、やはりabcでの活躍を目指す学生のなかには、年に一度しかないabcの舞台で失敗してしまったがために、その一年間の努力全てが報われなかったような喪失感に襲われてしまう人もいるのが正直なところだと思います。偶然性の高い短文基本というフォーマットにおいて、一年間の努力に対する自己評価がたった一つの大会の結果で決まってしまいかねないというのは、あまりに残酷なものではないでしょうか。
そこで、「abcとは別に、短文基本シーンにおいて学生が本気で活躍を目指そうと思える大会を新しく作ることが有意義なのではないか」と考えるに至ったわけです。もっとも、近年の学生クイズ界における短文基本シーンでは、少なくとも一年間に3大会ほど、abcと同じルール・abcの問題傾向を意識した問題群を用いた「派生大会」が開催されています。大会名に「abc」の名前を冠するものも少なくありません。しかし、これらの「派生大会」は、少なくとも形式面においてabcを徹底的に模倣している点において、abcでの活躍というゴールに至るまでのマイルストーンに位置付けられることを免れないように思われます。むしろ、これらの「派生大会」がマイルストーンに留まるからこそ、学生クイズ界において大きな意義を有すると考えています。私の経験上、abc本番での活躍に格別の意義を見出している学生ほど、「派生大会」についてそのような受け止めをしている人が多かったという印象があります。そして、abc本番の結果に対する受け止め次第でこれらの「派生大会」の結果に対する受け止めまでもが上書きされる点は否めないでしょう。それが「派生大会」がマイルストーンに位置付けられる所以だと思います。だからこそ、「abcでの活躍というゴールに至るまでのマイルストーン」ではなく、「それ自体が短文基本シーンでの活躍を目指す学生にとっての一つのゴールとなるような大会」を創設することに意味があると考えました。たとえ結果の重みにおいてabcには劣後するとしても、学生クイズ界における短文基本シーンで「最終目標」となる大会が一つ増えることは、少なくとも一年間の努力の成果が確定的に成就される可能性を高めることに寄与するのではないでしょうか。
以上にご説明したところをまとめると、本大会は、2025年度に短文基本シーンでの活躍を目指す学生の皆さんがその日々の努力の成果を確定的に成就させられる機会を増やすべく、abcとは独立した「2025年度の学生クイズ界における短文基本タイトル戦」というコンセプトを設定しました。
3. 具体的な努力目標
では、「2025年度の学生クイズ界における短文基本タイトル戦」というコンセプトに資する大会とするため、具体的にどのような点を努力しようと考えているか。この点を詳述させていただきます。
まず、ルールと問題群の両面において、一人の優勝者を決めるのにふさわしいフォーマットの確立に全力を尽くします。ルールにつきましては、本記事とあわせて公開されている企画書をご覧ください。abcのルールを基本にさせていただきつつ、より合理的な真剣勝負の実現に資するよう、私なりに一部変更を加えさせていただきました。また、問題群につきましては、本記事と合わせて公開されている「出題傾向」についての記事をご覧ください。
そして、会場や演出の豪華さにも可能な限り注力いたします。参加者の皆さまに心から活躍したいと思っていただくうえで、クイズの舞台そのものが見た目にかっこいいことは必要不可欠だと思います。専任スタッフの人数が極めて少ない以上、実現できることには限界があるかもしれませんが、従来よりもこの点に注力いたします。
4. さいごに
本大会をabcと独立した「2025年度の学生クイズ界における短文基本タイトル戦」とするべく、我々スタッフ一同、最大限努力することをお約束します。しかし、本コンセプトを実現し、本大会を完成させるには、参加者の皆さまの「短文基本のタイトル戦で活躍したい」という熱い気持ちが不可欠です。本大会がabcをゴールとする道のりの途中にあるマイルストーンと位置付けられるか、それともabcとは独立した一つのゴールと位置付けられるかは、結局のところ参加者の皆さまの受け止めによるというほかなりません。どうか我々のことを信じていただき、学生クイズ界における短文基本シーンに新たなタイトル戦を創設するチャンスを与えていただきたいのです。
紆余曲折を経て2年ぶりの開催となった「学生短文王」。参加者の皆さまと一緒に、固有の意義を持った大会を完成することができましたら、これに勝る喜びはございません。皆さまのエントリーをお待ちしています!
本記事を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。