本大会の大会長 木村秀太による、出題傾向の説明です。「CONCEPT」のページと併せ、是非ご一読ください。
◯はじめに
本大会の使用問題をワンフレーズで表現すると「過去の出題歴に依存しない厳格な短文基本問題」となり、
A.「過去の出題歴に依存しない」
B.「短文」
C.「厳格な基本問題」
の3つの要素から構成されています。以下、それぞれの要素について詳述します。
A.「過去の出題歴に依存しない」
最新の短文基本クイズにおいては、「過去に同様の問題文で出題された」という既成事実の積み重ねにより、純理論的には何ら答えが確定していないであろう段階でボタンを押しても、概ねその出題歴があるものが答えになっているケースが大幅に増えていると考えています。そして、純理論的には同様のフリから答えの異なる問題を制作できる場合でも、「このフリの表現から答えがこれでない問題を出題することは、誤答を誘発する」としてフリの表現の変更などが期待されるケースは珍しくありません。いわば「既成事実に対する保護」が起こっているわけです。界隈総出で既成事実に対する保護を承認することで、安心して押せる定型フリが増え、参加者側の鍛錬の効率が上がる点は否定できません。しかし、既成事実に対するいたずらな保護は、ただでさえ狭く定義された出題範囲をさらに縮減してしまうことに繋がります。問題作成者の立場からすれば、「このフリからこれを答えとする問題の定型性を破壊するな」という無茶な注文をされているようなものです。
そこで、本大会に向けた問題制作おいては、「短文基本シーンにおける過去の出題歴に照らしたとき、フリの定型性を信頼した解答者の誤答を誘発するかもしれない」という視点をあえて排除します。もっとも、「問題文の文法や構造に起因するミスリードは好ましくない」という点は本大会においても強く支持するところですし、そのようなミスリードを回避する努力は最大限尽くします。要約すると、「解答者の誤答を誘発するような問題を作成しない」という問題制作上のルールは維持しつつ、その「解答者の誤答を誘発する」のなかには「解答者が過去の出題歴という既成事実のみを根拠に定型フリであることを期待したが、実際は期待していたのと異なる問題であったために誤答した」ケースを含まないということになります。
B.「短文」
解答者が目で見ることを前提に制作するペーパークイズの問題文については、「漢字仮名交じり文で、疑問符や句読点も含めて60文字以内」にすることを原則とします。一方、解答者が耳で聞くことを前提に制作する早押しクイズの問題文については、前述した「短文」の定義をベースに具体的な音数の基準を設けることを検討しています。
C.「厳格な基本問題」
本大会の問題制作にあたっては、「日常生活に根差した知識や、学校・職場で学べることをもとに正解できるような問題」という「基本問題」の定義を拡大解釈することを徹底的に避けたうえで、個々の問題が基本問題の定義を満たすよう最大限努力します。近年の短文基本クイズにおいては、「基本問題の題材やフリの選択には定義上の厳しい制限があるため、やがて新規性のある基本問題を制作できなくなるのではないか」という強い憂慮からか、あるいは基本問題の定義に忠実な問題制作に起因する閉塞感への抵抗からか、「基本問題」として出題可能な題材やフリの範囲を拡大解釈することがメジャーな潮流になりつつあると感じています。しかし、このような拡大解釈は、「クイズに初めて触れるうえで勧めやすいものにする」という基本問題の趣旨に照らせば好ましい傾向ではないと私は思います。何より、定義に忠実な基本問題の出題を信じて鍛錬を重ねるプレーヤーの期待を裏切ることになりかねません。本大会は、「基本問題の射程を正確に測ろうとしたうえで、射程内の問題を正解することの完成度を高めようとする」プレーヤーの努力を適切に評価できることを目指します。
一方で、「出題する題材があまりに平易であること」の一点をもって出題を回避することはしませんし、一つ一つの問題が多くの参加者の知的好奇心を刺激するに足りるものであることを特段追求しません。誤解を恐れずに砕けた表現をするのであれば、「つまらない問題でも臆せず出題します」となるでしょうか。なぜなら、「短文基本のクイズ大会においては、1問正解することは最終目標としての側面を有し得ず、あくまで勝利のための道具にすぎない」という考えが根底にあるからです。本大会における主催者の目標は、一人でも多くの人が触れて面白いと感じる問題を一問でも多く作ることではなく、短文基本クイズの最強を決めるのにふさわしい問題群を作ることです。そして、その問題群を構成する「基本問題」の定義には、知的好奇心の刺激に寄与するクイズ然とした題材であることは含まれていないわけです。むしろ、殊更にクイズの形にして問うことが野暮なようにさえ思われる「常識」といえるような題材こそ、「基本問題」の定義に親和的であると考えます。
○最後に
本大会の出題傾向が近年の"短文基本"クイズの潮流と逆行することは重々承知しています。それでもなお、「基本問題」の射程と真摯に向き合い、他でもない「短文基本の大会」で活躍することに特別の執念を燃やしている方が納得しやすい大会にしたいという思いを拭い去ることができませんでした。一方で、「過去の出題歴にとらわれない」という意味で自由な出題を心がけたいのも否定できませんでした。情報の配置構造や表現の自然さに気を配り、「さっさと押そうとしすぎず、とりあえず問題文を聞いてみよう」と感じていただけるような問題を制作する努力を尽くします。たとえ初見・初耳の問題であっても、まずは問題文とにらめっこしていただけたらと思います。
短文基本の大会において、それ以上の出題傾向を事前に説明することは異例中の異例であるとは思いますが、本記事が本大会に参加するか否かの決定や対策の方針を決める際の参考になれば幸いです。皆さまのエントリーをお待ちしています!
本記事を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。