東大3生の人へのメッセージ | 前田拓也 助教

どこの所属?
現在,私の研究グループは,電気系工学専攻 中野・種村研究室に所属しております.
学生居室は工学部3号館126室(中野・種村研究室と共用)になります.

どんな研究をするの?
私の研究グループでは,ワイドバンドギャップ半導体(主に窒化ガリウムGaNや炭化ケイ素SiC,酸化ガリウムGa2O3)の電子物性解明やデバイス試作に関する研究を行っております.ワイドギャップ半導体を用いれば,シリコンSiの限界を大きく超える非常に高耐圧で低損失なパワーデバイスを作製することができます.SiCデバイスについてはすでに電気自動車や鉄道に,GaNデバイスについてはPC用ACアダプタなどに実用化もされています.今後,持続可能な社会の実現に向けて省エネルギー化や電力利用効率の向上への要求は益々強まるばかりであり,ワイドギャップ半導体パワーデバイスの更なる性能向上が求められています.また,ワイドギャップ半導体はパワーデバイスのみならず,5G通信基地局などに使用される高出力な高周波増幅デバイスや宇宙探索応用を目指した超高温デバイスの研究開発も進められています.

GaNやSiCのパワーデバイスは,既に実用化が始まっているとはいえ材料の潜在能力を十分に引き出せている状況ではなく,物性評価やプロセス技術開発などの基礎研究に基づく更なる性能向上が必要です.私の研究室では,下記のような項目が重要であると考え,興味・関心を持って研究に取り組みます.
ワイドギャップ半導体の物性評価:材料特有の高電界物性や高電界キャリア輸送特性の解明
根本的に新しいデバイス構造概念の提案と実証:デバイスの高性能化や新機能発現
強誘電体や超伝導体などの機能性材料と半導体の融合:これまでにない革新的デバイスの試作
どの項目も,半導体工学や固体物理(量子力学や統計力学),材料科学,電子工学などの広い学問分野に根ざした学際的研究であり「応用物理」です.
もしやりたいことがあれば,ゼロからテーマを立ち上げることも可能です(大いにサポートします).

研究って何するの?
研究は,ある課題(あるいは興味や好奇心がある問い)に対して,それを解決するための実験や計算・シミュレーションをデザイン・実行し,
得られた結果を解析・考察・解釈・議論し,学会や論文で他の研究者に発表する(極めてクリエイティブな)活動だと考えます.
具体的には,私や共同研究者と議論したり学会や論文で情報収集することで,何が解くべき問いか(研究テーマ)を考え,
実験(デバイス作製や測定など)を行い,データを解析・解釈し,責任を持って研究結果を世界へ発信します.
4年生で配属されても卒業論文の結果を国内外の学会や国際論文誌で発表することを目指していただきます!
研究は,受け身ではなく自立した活動ですが,研究テーマや方向性は提示しますし,
実験やデータの解釈,プレゼンや作文技術について,情熱と優しさを持って妥協なく教育・指導します!

研究室ができたばかりなのに研究できるの?
私は2022年4月に着任したばかりですが,東京大学には豊富な共用装置があり,非常に環境に恵まれています.
特に,武田先端知ビルのスーパークリーンルームを活用することで,研究レベルでは最先端デバイスを試作することができます.
また,私の研究室の特徴として,東京大学内や国内外の大学・企業と積極的に共同研究を行なっております.
最先端の半導体材料を用いてデバイスを設計・試作することができます.
(主な共同研究先: 大阪大学,名古屋大学,Cornell University,住友電工,住友化学,三菱ケミカル,ノベルクリスタルテクノロジー,など)
また,幸いにもいくつかの研究費に早速採択され,固有の実験装置もいくつか導入済み・随時導入していきます.
2023年度に配属されてすぐに研究できる環境が整っております!

どんな学生が向いている?
・物理・数学が好きな学生
・理論だけでなく自分で手を動かしてものづくりをしてみたい学生(デバイス作製は非常に面白いです!)
・半導体工学(物性やデバイス)の研究に興味がある学生

就職先は?
私のグループからはまだ卒業生がいないのでなんとも言えませんが,
学部卒の場合,専門に関係なく様々な大学院や企業に進学・就職可能だと思います.
修士卒の場合,国内のメーカーが中心的な就職先になると考えられます.
企業との共同研究や学会で実際に企業研究開発のお話を聞くことができるため,就職の参考になると思います.
ワイドギャップ半導体は国内メーカーが国際的にも高い競争力を有しており,人材の需要も大きいと考えられます.
博士卒の場合,上記のような国内研究職だけでなく,
海外大学・研究機関での博士研究員や企業就職も視野に入ると思います.
私は2年間アメリカで研究員をしていましたので,海外経験をお伝えすることができます.
電子工学のPhDがあれば(かつ英語が話せてグローバルで見ても優秀であればですが)
博士卒業後すぐにGoogleやApple, Amazonなどで超高収入を得ることも可能です(アメリカでは全く珍しくありません).
博士課程はネガティブなイメージを持たれがちですが,
半導体分野の博士号は研究者・技術者として世界的に活躍するためのプラチナチケットです!
博士だから就職先に困るなんてことは絶対ないと保証できます.
東京大学での進学はもちろん,海外大学院への進学も強く推奨・応援します.

その他 Q&A
Q. 研究室って忙しいですか?
A. 研究に費やす時間は多いと思いますが,時間はかなり自由です.

Q. コアタイムありますか?
A. ありません.学生の自由を尊重します(怠惰はダメです).週一程度のミーティングには出席していただきます.

Q. 研究室はどんな雰囲気ですか?
A. まだ私のグループには学生はいません,これから皆さんと研究室をつくりあげていきます.
2023年度は中野・種村研に配属される学生の中の希望者を指導させていただきます.

Q. 研究室の待遇はどんな感じですか?
A. 博士進学を志す大学院生は給料を貰いながら研究することができます(アメリカでは当たり前です).
東京大学や日本学生支援機構,日本学術振興会の制度を活用することで,
金銭的に困窮することなく研究に打ち込めるようにサポートするようにします.

Q. 半導体の将来って明るいですか?やばい?
A. 分野として非常に重要かつ国際的な競争力が求められると断言できます.
国内の半導体・電機メーカーが厳しい状況にありますが,世界的にはずっと成長産業で今後も変わらないと考えます.
電子機器がなくならない限り,あらゆるモノに半導体デバイスが必須です.その進化は止まらないでしょう.
特に,化合物半導体分野は国内企業・大学が強い競争力を有しております(今後は皆さんにかかっています).

Q. 半導体の良い教科書ってありますか?
A.  「半導体デバイスの基礎(上・中・下), B.L. アンダーソン 著, 樺沢宇紀 訳, 丸善出版」「半導体の物理, 御子柴宣夫, 著, 培風館」
他にも基本的な教科書は研究室に揃っています.より専門的な内容は英語の教科書や学術論文を読んで学習・情報収集します.

Q. 研究する上で何が必要ですか?
A. 私の出身の研究室(京大木本研)では「4つのK」を教わりました.
これは「好奇心」「向上心」「協調性」「完遂力(気合い)」を意味します.
自然現象に興味関心を抱き,自己研鑽の意識を持ち,周囲の研究者と良いコミュニケーションをし,
重要と考えた研究課題 / 仕事をやり抜く情熱や誇りを身につけることを目指してください.能力は後から付いてきます.

Q. 前田先生ってどんな人ですか?
A. 工学部3号館125室にいるので会いにきてください(連絡先: tmaeda"at"g.ecc.u-tokyo.ac.jp).アポ無しでもOKです.