観光資源である鍾乳洞や洞窟には、照明によって微細藻類が繁茂してしまうことがあります。今回、人体に無害な紫外線波長領域 ”222 nm”を用いて、洞窟内の藻類(照明植生)を安全かつ効率的に除去することができました。
琵琶湖の一次生産は過去30年間で減少しているものの、1970年代や2000年代とほぼ変わらないことが明らかとなりました。一方、質的評価として、動物プランクトンが食べられない/食べられるサイズの一次生産の比を1992年と比較すると、こちらもあまり変わらない結果となりました。なぜ大型藻類がいまだに健在なのかはまだ分かっていませんが、どうも沿岸環境が大型藻類にとって好ましい環境のようです。
Primary production in Lake Biwa has clearly decreased over the past 30 years, but still as high as in the 1970s and the 2000s. On the other hand, as a qualitative assessment, the comparison of the inedible/edible primary production size for zooplankton showed that it changes minimally compared to the 1992's . It is not unclear why large algae are still healthy, but likely the coastal environment is favorable for them.
陸域由来のリター(落ち葉)は生食連鎖と腐食連鎖のどちらを刺激するのか?リターと光を操作するメソコスム実験によって、落ち葉からの急速なリンの溶出が一次生産を刺激し、動物プランクトンを増加させることが明らかとなりました。
Does terrestrial litter (fallen leaves) stimulate the green or the brown food chain? Mesocosm experiments manipulating litter and light have shown that rapid phosphorus leaching from fallen leaves stimulates primary production and increases zooplankton.
温暖化によって減ると考えられていたのに、琵琶湖では時々、大型緑藻のブルームが起こっています。本研究では、栄養塩と光のストレスに対する小型・大型藻類の反応の違いと、琵琶湖の季節的な鉛直混合という2つの視点から、メカニズムを考察しました。
Large green algal blooms have occurred occasionally in Lake Biwa, although they were thought to be reduced by global warming. In this study, we investigated the mechanism from two perspectives: the different responses of small and large algae to nutrient and light stress, and the seasonal vertical mixing in Lake Biwa.
植物プランクトンの光合成は、水界環境の重要な指標ですが、測定にはとても時間と労力がかかります。そこで、クロロフィル蛍光法の一つである高速フラッシュ蛍光光度法(FRRf)を用いて、従来法(13Cトレーサー法)の結果を比較し、光合成量や光合成活性を現場で、リアルタイムに推定する手法の開発を琵琶湖で行いました。
Phytoplankton photosynthesis is an important indicator of the aquatic environment, but it is very time-consuming and labor intensive to measure. We developed a method to estimate the amount of photosynthesis and photosynthetic activity in situ and in real time by comparing the results of conventional 13C tracer method with fast repetition rate fluorometry (FRRf) in Lake Biwa.
ミジンコ付に着く藻類がいる?試しにクロロフィル蛍光法を用いたところ、うまく光合成活性を測定することができました。せっかくなので、彼らの生態を調べるための手法をビデオ付き論文で紹介することにしました。詳しい紹介記事
風間健宏, 早川和秀, 霜鳥孝一, 今井章雄 & 小松一弘 (2021). 高速フラッシュ蛍光光度法を用いた光合成活性と基礎生産のリアルタイム計測. 地球環境 25, 31–42
高速フラッシュ蛍光光度法(FRRf)は、光合成をリアルタイム測定できるとされ、主に海洋学の分野で研究が進められています。しかし湖沼分野では、まだまだ研究が進んでいません。そこでこの手法を周知するために、測定原理や他の光合成測定法との違い、現在の研究状況、問題点などについて、日本語で解説しました。
干潟にはプランクトンがたくさん出現し、特に植物プランクトンの生産が高いことは知られていましたが、動物プランクトンによる2次、3次生産の見積もりは、ほとんどありませんでした。本研究により、夏は繊毛虫、それ以外の季節はカイアシの生産が高いことが分かりました。修士過程の研究で、その後の繊毛虫研究のきっかけとなりました。
瀬戸内水研のでの成果です。海底の堆積物をコアサンプラーで抜き出して栄養塩フラックスを測る方法において、バクテリアの活動が影響を与えることを示しました。
河口域のプランクトン群集動態は、急激に変化することが知られています。本研究では、原生動物の中で有鐘繊毛虫に着目し、2日ごとに動態を調べました。その結果、カイアシのような捕食者よりも、塩分やエサによる影響が大きいことを明らかにしました。
原生動物プランクトンの代表格である繊毛虫には、殻を持つタイプと持たないタイプがいます。殻をもつものは有鐘繊毛虫といい、殻形質をもとに分類が決められています。しかし本研究により、重要とされる形質のいくつかは、核DNA(18S-rRNA)配列を元にした分子系統樹を全く反映しておらず、分類見直しの必要性が示唆されました。