振動分光法を用いて試料をありのままに観察・分析する。
振動分光法を用いて試料をありのままに観察・分析する。
試料にレーザー光を照射すると、分子結合振動に由来するラマン散乱光が発生します。これを分光分析することによって、試料がどのような化学結合を持つのか、また結合状態がどうなっているのか、どのような種類の分子が存在するのか、ありのままに観察できます。さらに、レーザーを2次元にスキャンすれば、顕微ラマンイメージングでその分布を可視化することも可能です。このラマン顕微鏡を用いて、様々な試料を観察しています。また、原子同士の強い共有結合の情報ではなく、弱い分子間力(ファンデルワールス力)を可視化できる低周波ラマン分光法や、低温環境でラマン分析できる装置など、独自技術も開発しています。赤外吸収分光法など、新しい技術にも挑戦しています。
T. Umakoshi*, et al., J. Phys. Chem. A, 127, 1849−1856 (2023).
T. Moriyama, T. Umakoshi*, et al., ACS Omega, 6, 9520-9527 (2021).
T. Sugiyama, T. Umakoshi, et al., Analyst, 146, 1268 (2021).
R. T. Sam, T. Umakoshi, et a., Sci. Rep., 10, 21227 (2020).
T. Umakoshi, et al., J. Phys. Chem. C, 124(12), 6922-6928 (2020).
B. S. Bhardwaj, T. Umakoshi, et al., Sci. Rep., 9, 15149 (2019).
プラズモニクスで空間分解能を高める。
光学顕微鏡の空間分解能は、回折限界によって波長の半分程度(約500 nm)に制限されています。光を自由電子集団の量子であるプラズモンと結合させることによって、ナノスケールに局在した光(近接場光)を生成できます。この近接場光を金属探針の先端に生成し、回折限界を超えた空間分解能で観察できる技術を、「近接場光学顕微鏡」と呼びます。この顕微法を用いれば、ナノスケールの空間分解能(約10 nm)で、ラマンイメージングも可能です。様々な試料の観察だけでなく、測定再現性や検出感度、イメージング速度などを向上し、究極の光学ナノ顕微鏡を実現することも目指しています。
T. Umakoshi* et al., Sci. Rep., 12, 12776 (2022).
R. Kato, T. Umakoshi*, et al., Sci. Adv., 8, eabo4021 (2022).
R. Kato, T. Umakoshi*, et al., Nanotechnology, 31, 335207 (2020).
R. Kato, T. Umakoshi*, et al., Appl. Phys. Lett., 114, 073105 (2019).
T. Umakoshi, et al., Appl. Phys. Express, 5, 052001 (2012).
光の波長をナノスケールで自在に制御して新しい光技術を生み出す。
近接場光を発生させる方法は、いくつか存在しますが、先鋭な金属構造上でプラズモンを伝搬させて、先端で高強度な近接場光を生成する方法を「プラズモン超集束」と呼びます。様々な特長を持っていますが、特にユニークなのは非常に広帯域であることです。様々な波長で動作するので、広帯域な白いナノ光源を生成したり、様々な波長の光をナノスケールで共存させたりすることが可能です。この広帯域性に着目して、超解像イメージング技術や光センサー、さらにより積極的に分子をナノレベルで操作する技術など、新しい光技術を開発しています。
T. Li, T. Umakoshi*, et al., Opt. Express, 33, 26930-26938 (2025).
T. Umakoshi*, et al., arXiv, 2207.12839.
K. Taguchi, T. Umakoshi*, et al., J. Phys. Chem. C, 125, 6378-6386 (2021).
T. Umakoshi*, et al., Sci. Adv., 6(23), eaba4179 (2020).
T. Umakoshi, et al., Nanoscale, 8, 5634-5640, (2016).
ナノスケールの世界を針で見て光で知る、リアルタイムに。
探針を試料上で二次元にスキャンすることによって、試料の形状を画像として得られます。近接場光学顕微鏡の元にもなった原子間力顕微鏡(atomic force microscopy: AFM)という技術で、ナノスケールの空間分解能を持っています。通常は針をスキャンするのに1画像に数分以上かかりますが、近年これを超高速化してリアルタイムで生体分子などが動く様子を観察できる「高速AFM」が開発されました。この高速AFMに、さらに光技術を融合できれば、高速AFMでナノスケールの世界を動画撮影しながら、光技術で詳細に調べるなど、ユニークかつ強力な計測装置を実現できます。近接場光学顕微鏡で動画撮影できる技術や、光照射で反応が誘起された所を高速AFM観察できる技術など、様々な高速AFM/光技術融合装置を開発しています。
K. Yang, T. Umakoshi*, et al., Nano Lett., 24, 2805-2811 (2024).
T. Umakoshi, et al., BBA Gen. Sub., 1864, 129325 (2020).
T. Umakoshi et al., Colloids Surf. B, 167, 267-274 (2018).