太陽-惑星/恒星-系外惑星という系は天文学において最も基礎的な天体系です。私は太陽/恒星が示す様々な現象の性質にはまだまだ未解明の現象が沢山あります。私は恒星の自転・構造・磁気活動に関する観測データの解析・観測結果の理論的解釈という観点から研究を行っています。
恒星の振動(星震学)
地球における地震学と同様、恒星も表面振動を調べる事で内部構造を推定することができます(星震学と呼びます)。振動数や振幅などの振動データは恒星内部の物理状態を反映して変化する為、逆に振動データから内部状態を推定する事ができ、星震学は恒星内部の探る有力な手段となっています。
自転が速い1.2-1.8太陽質量の変光星(かじき座ガンマ型変光星)の振動において新しく見つかった、内核と外層の振動の共鳴現象に関して考察し、この振動の特性から自転速度や内核と外層の境界付近の構造が制限可能であることを解析的に導出しました (Tokuno & Takata 2022)。
恒星の自転進化
磁場による角運動量輸送により、太陽含め主系列段階にある太陽型星の自転速度は時間と共に遅くなる事(磁気制動)が分かっています。近年では恒星の自転進化は古典的なモデルでは説明できない複雑な振る舞いを示していることがわかり始めています。
差動回転を加味した太陽程度の質量の恒星の自転進化について簡単なモデルを考案し、その性質を考察しました。その結果、差動回転の効果を考えることで観測で説明されていなかった観測事実を解決できる事を指摘しました (Tokuno, Suzuki & Shoda 2023)。
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恒星・惑星の潮汐作用
恒星-惑星間の潮汐相互作用は惑星の軌道進化において重要な役割を果たしていると考えられています。しかし、潮汐相互作用の具体的な機構と効率は明らかになっていないというのが現状であり、理論的・観測的な探究が現在進行形で進められています。
小質量星とその近傍を周回しているガス惑星という系の角運動量進化に対して、力学系という数学分野を応用することで年齢推定を使用せずに潮汐相互作用の効率の上限を決める新しい手法を提案しました (Tokuno, Fukui & Suzuki 2024)。
赤色巨星Kepler-56で報告されている特異な自転構造(外層の高速自転とコア-外層間の自転軸不揃い)が惑星との潮汐作用の産物であるとして形成シナリオを検討しました。その結果、ホットジュピターの潮汐飲み込みがあればKepler-56を再現できることを指摘しました (Tokuno 2025)。
太陽・恒星の磁気活動
黒点やフレアといった太陽の表面磁気活動は、太陽という恒星を特徴づけるという観点や惑星環境への影響を定量化するという観点から非常に重要です。太陽に近い性質を持つ恒星(太陽型星)の中には太陽よりもはるかに活発な恒星磁気活動を持つものが見つかっており、太陽の磁気活動と比較検討することによって太陽・太陽型星の磁気活動に関する包括的理解が可能になります。
太陽・太陽型星での黒点進化段階ごとのフレア発生頻度の時系列変化を調査しました。その結果、フレア発生頻度は黒点サイズやフレアエネルギーによらず共通の時系列変化を示し、太陽と太陽型星で類似した物理過程が働いている可能性が示唆されました (Tokuno, Namekata, Maehara & Toriumi 2025)。
古典籍の記述の中には、過去の言語的・社会的・科学的情報が含まれています。これらを検証することは人文学・理学両方にとってデータとしての価値を高めます。しかし、アジアの古典籍は言語的困難から検証がまだ進んでいないのが現状です。私は東アジアや南アジアに関する文献の記述の科学的検証に挑戦しています。
see also : SPinACH (SPecialists in Astronomy, Classics, and History) group
南アジアの文献調査
南アジアにおける仏典においては天文学に関する類似表現が広範な範囲で散見されています。当研究ではこの記述が日食に由来する記述なのではないかという仮説に基づき、文献学的考察を行っています。
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東アジアの気候記録に関する統計調査
気候変動を調査する上では全球的なデータに基づく考察が必要であるにも関わらず、ヨーロッパに比べてアジアに関する気候記録に関しては検討例が多くありません。当研究では東アジアの気象記録を統計解析することでその性質を調査しています。
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