メッセージ

MESSAGE TO CANDIDATES FOR OUR LAB

はじめに

当研究室の特色は,ディスカッションの多さです.教員,先輩,後輩分け隔てなく活発に議論を行い,海外からの訪問研究者とも論議を交わす機会が頻繁にあります.他者からの新しい考え方を柔軟に取り入れながら研究を進めるスタイルで,知的な刺激にあふれています.

人との議論を好まないタイプの方には向かないかもしれませんので,ぜひ事前に研究室見学をして,自分に合っているかを確かめてください.田川教授は時間があればアポなしでも研究室見学に応じます.

段階的プログラムの具体例

当研究室の「段階的プログラム」を具体的に示しますので,学生生活のイメージに役立ててください.

 ただしこれはあくまで標準的な目安となるものであり,学生の個性,潜在能力,得意分野を最大限引き出せるように,教員が密に面談(定期的な面談は年4回以上,各1時間程度)を実施して,一人一人プログラムをカスタマイズしていきます.

    また特に博士課程は,相当多岐に渡り標準的なプログラムを示すのは困難なため,ある1モデルケースを記載しています.

流体の実験が数多くできる!

日本で数台しかない高速度カメラが充実しているため,流体画像解析の実験環境が整っています.ハイスピードの現象をカメラでとらえることで,知られざる流体の仕組み,現象,原理を明らかにする可能性を秘めています.また,実験ではこれらの装置を使用して自由に環境を組み立てることができるので,自分で色々なやり方を数多く試せることも魅力です.学術的に難しい数式ではありますが,美しい流線型の運動を描くため,機能美に迫れ,単純に目で見て美しく楽しい画像が撮れます(高速度カメラで撮った画像集はこちら).

下の「粘い液体ジェットが操れる」という画像は,流体の原理の解明がものづくりにつながっている一例です.ものづくりについては次の項目で記しますが,流体実験のその先にものづくりが待っているのです.

ものづくり が できる!

当研究室で目指すものづくりは,既にあるものを改良したり,非効率的なものを効率的にすることではなく,まったく新しいものを生み出すことです.現在我々が取り組んでいるのが,無針注射の開発と,車に粘性塗料を塗る開発です.一緒にものづくりに携わりませんか?

グローバル な力試しができる!

VISIONページでも紹介しておりますが,当研究室の特色の一つに「グローバル」が挙げられます.

 研究室から学生を海外に派遣する場合,一般的な海外研修や留学のように学生として教わる立場というよりも,

一人前の研究者として共同研究を行うことが目的となります.ここで言う力試しとは,こちらの技術やアイデアをベースに,派遣先の環境や技術を借りて研究を行うことを指しています.

 また一方で,海外から研究者を招いた際に,英語で自分の研究について説明する場面も多いため,海外に行かなくても研究室内でグローバルな力試しをする機会もたくさん用意されています.

 さらには,学生が海外の学会で発表する機会も多く,これまで多数の先輩学生たちが国際学会で受賞しています.受賞の様子はこちら

安心して研究に没頭できる研究環境が整っている!

研究室は,知的な自立をトレーニングし,成長(=今の自分から変化)する場所であるため,決して居心地が良いばかりではありません.「今の自分ではいけない,成長して新たな自信を付けたい」と求める状態は,心身の消耗が激しく,居心地の良さが一部犠牲になるためです.しかし一方で,「今の自分のままでいたい,失敗が怖い,変化が嫌だ」という相反する気持ちを抱くことも自然なことです.車で例えると,アクセルとブレーキのように,一方に偏ると暴走するか一歩も動けなくなってしまうため,どちらも重要で,バランス良く両方機能することで上手に進んで行きます.

 失敗を恐れてうまくやろうと自分にプレッシャーをかけ過ぎたり,隣の人と比べたりと,誤ったアクセルの踏み方が過度なストレスになり得ます.特に,研究とは「誰も知らないことを明らかにする行為」であるが故に,「必ずできなければいけないこと」と捉えてしまうと危険です.「できるかどうか分からないことを探究しているため,研究した結果,できないこともある」と適正に捉えることが重要です.アクセルとブレーキのバランスが崩れたとき,精神的負荷がかかり,心の病につながるケースも少なくありません.当研究室では,そうした不調を予防し,安心して研究に没頭できる研究環境づくりを心掛けています.活動時間を17時までとしていること,長期休暇を設けていること(詳細はこちら(本ページ内「メリハリのある研究生活が送れる!」参照))も,その取り組みの一つですが,さらに2020年度より,定期的な面談と休息を徹底するために,7週間の研究活動と1週間の面談期間を設けることにしました.この期間中は,個別面談以外の時間は完全フリーとなります.平日9時〜17時に研究に没頭し,17時以降は休息にあてる生活を7週間続け,1週間は体と脳を休ませる,というサイクルです.

 もちろん,万が一心の病等にかかった場合は相応の対処を行いますので,少しでも不調を感じたら教員に相談してください.

 適正に「研究」の意味を捉え,安心して研究活動を行えるよう,今後も環境整備を徹底していきます.

MESSAGE TO WORKING STUDENT CANDIDATES FOR OUR LAB

本学の社会人博士課程制度について

学位を2年あるいは1年で取得する短縮修了が可能

 博士後期課程の標準修業年限は3年ですが,修士の学位をすでに持っている人は,研究の進捗状況によっては,3年未満(最短では1年)で学位を取得することが可能(文科省の規定により,博士前期課程(修士課程)と博士後期課程の在籍年数が3年以上あることが必要)です.当初は3年の予定で入学した場合でも,研究が順調に進めば,途中からでも短縮修了に合わせて学位論文の審査のスケジュールが組まれるなど,柔軟な対応を行っています.当研究室では,2018年度社会人2名が修了期間短縮制度を使い博士後期課程在籍1年間で学位を取得した実績があります.

大学院講義 – 受講は必須ではない –

 博士論文のための研究(「機械システム工学特別セミナー」)と「特別計画研究」により,学位取得のために必要な単位が充足されます.(「特別計画研究」は,社会人に配慮された内容になっており,限られた時間でも無理なく単位を取得することが出来ます.)したがって,講義に出席する必要はありません.しかし,希望すれば自由に講義を受けることもでき,単位を取得することもできます.

学位審査について - 査読付き論文が3編以上必要 -

 指導教員の指導の下に博士論文を執筆し,その論文の内容について学位審査が行われます.まず,予備審査では,指導教員を含む5名の審査員(教員)の前でプレゼンテーションを行い,本審査に進んで良いかが判断されるとともに,博士論文やプレゼンテーションをブラッシュアップするためのアドバイスを受けます.本審査は公開されて行われます.この時点で,博士論文を構成する内容の査読付論文(いわゆる定期刊行ジャーナル論文,査読付国際会議プロシーディングス)が3編以上有ること(掲載済みもしくは掲載可)が条件となります.

当研究室の研究概要について

従来と異なる液体駆動力として衝撃力に着目し,慣性力が粘性力の1,000倍以上大きい超音速マイクロジェット(高Re数流れ)の生成手法を世界で初めて開発しました(図1a, Tagawa et al., Phys. Rev. X, 2012).さらに液体容器への打撃による簡便なジェット生成手法を新たに開発し,高速ジェットに加え,既存技術に比べ500倍以上高粘度の液体ジェットの吐出に成功しました(図1b).本手法(特許第6482658号,国外特許申請JST支援対象(採択率15%))は日経産業新聞(2015年)や日建新聞電子版(2018年),海外サイトEurekAlert(2018年)に特集記事が掲載されるなど注目されており,現在,機能性材料(粘着剤,細胞培養液ほか)の吐出による新技術へ展開しています.一方,学術的には,比表面積10万倍位以上のマイクロジェットにおける動的界面特性の影響の解明などが実現でき,新しい学理構築に貢献しています.衝撃力に着目するという優れた着眼点に基づき,レーザーパルスによる衝撃力および金属打撃による衝撃力により各々次世代技術の基盤を構築していいます.

LET'S GET A DOCTORAL DEGREE!

博士号を目指す方,大募集中!!社会人博士 大歓迎!!   -博士号取得 とても近い田川義之研究室-

本専攻の博士号取得要件は,大学院在籍中に3編の学術論文を発表することです.当研究室は早ければ修士の頃から学術論文を執筆し,出来るだけ多くの投稿機会を設けます.修士で2編の学術論文が採択された事例(2018年度に博士号を取得した2名の社会人博士の例)もあり,その2名は修了期間短縮制度を使い(詳細はこちら(本ページ内「博士号の制度と優遇」参照))博士後期課程在籍1年間で1編の学術論文を発表し,博士号を取得しました.下記に示すとおり,手厚いサポートでステップアップできる体制が整っています.

1報目:〜修士・博士1年頃

初めての学術論文執筆経験.原稿第一稿から執筆し,何度も大幅修正を繰り返した後に投稿.論文構想からレビューの返答まで一つ一つのプロセスでスタッフからの手厚いサポートを受けつつ掲載に至る.論文掲載まで時間と労力が3編の中で最もかかるが,この経験で見違えるような知的成長ができる!

2報目:博士1年・博士2年頃

1編目の発展版.論文掲載までの各プロセスを独力でトライ.サポートが必要なプロセスに対し適時スタッフから支援.研究をまとめる力がメキメキつく!

3報目:博士2年・博士3年頃

論文の核の部分に自身の研究アイデアがふんだんに盛り込まれているもの.論文への貢献度は教員と対等(50対50).社会へ出るときの自信作に!

社会人博士について

 社会人博士は,就業と学業の両立が大変なイメージがあるかもしれませんが,大学院講義の受講が必須ではないなど,無理なく博士号取得要件が満たせるよう十分配慮されています.田川義之研究室では,社会人博士も大募集中です(詳細はこちら).

博士号制度優遇

本学工学府では,修士課程を「博士前期課程」,博士課程を「博士後期課程」と位置付けています.つまり,機械システム工学専攻の大学院生は全員「博士課程」に所属していることになります.

 この意味は,本専攻では大学院生に博士号取得を目指すこと前提に制度設計されているということです*1(背景についてはこちら(本ページ内「日本社会が博士号人材を求めている」参照)).

 そのため,博士号を目指す学生に対して様々な優遇制度が設けられています.以下に紹介します.

修了期間短縮制度

特に優れた研究業績者は博士前期課程(修士)から通算最短3年で博士号取得*2

修了時期の自由度

博士後期課程学生の人生設計に配慮し,年に4度(6月,9月,12月,3月)の修了機会

入学金免除

本学の博士前期課程修了者に限り博士後期課程進学に必要な入学金を免除

授業料免除

成績優秀者に対し,博士後期課程入学年度後期分の授業料全額を免除

RA採用

研究助手(RA)として採用し,研究教育活動の一部に対して給与を支給*3

優秀者奨学金

WoS又はScopusに収載された英文学術雑誌に研究論文を発表した者に対して奨学金を支給

海外派遣プログラム

海外大学・研究機関等への派遣費用を全額助成.派遣期間は年間2〜6ヶ月程度を想定

日本社会博士号人材求めている

これまで世界では,産業革命によって大変革が起きてきました*4そして昨今,第四次産業革命を向かえる時代に差しかかっていると言われています.日本もこの新しい社会を「Society 5.0」*5 [a]として提起し,IoT,ビッグデータ,AI(人工知能),ロボットの活用が注目されています.

 しかし近年,新しい知識の創出量の指標である発表論文数(図1)が他の先進国と比べて伸び悩んでおり,日本の研究力の低下が問題視されています.この伸び悩みは,我が国の博士号取得者(図2)の伸び悩みと強い相関があります.

 「科学技術イノベーションを担うのは『人』である」と文部科学省が提言*6 [b]するように,この危機的状況を打開するためには,科学技術イノベーションを推進する優秀な科学者の育成と確保が欠かせません.これからの大学には,博士号取得者数を伸ばし,世界で活躍できる研究リーダーの育成が強く求められています.

    前述した,本学の大学院が修士学生を博士前期課程と位置づけ,博士号取得を見据えた制度となっているのはそのためです.


博士(後期)課程進学者の減少理由の一つとして,博士号取得者のキャリアは大学教員になる以外ない,という偏見を払拭できていないことが指摘されています.しかし近年は民間企業においても博士号取得者人材を高く評価し,その活用が推し進められており(図3),社会人博士への期待も高まっています.また,博士号を目指す場合,学費を払い続けなければならない点,結婚をして家計支持者となる年頃となる点も,進学を躊躇させる理由と指摘されています.そこで本学においては前述した博士後期課程学生への多様な優遇措置を実施し,安心して進学できる環境を整えています.

さて,今日求められているグローバルな舞台で活躍できる人材の育成と,当研究室が掲げるビジョン「新たな混相流分野 "動的界面力学" の『国際研究拠点』となる!」の中の「招聘研究を軸とした国際ネットワーク」とは,非常にマッチしていると言えるでしょう.文部科学省の諮問委員会である中央教育審議会大学分科会は,「グローバルに活躍し未来を牽引する「知のプロフェッショナル」育成のための大学院改革を推進するため,世界最高水準の教育力と研究力を備え人材交流・共同研究のハブとなる「卓越大学院(仮称)」の形成などを提言した」*10 [f]と述べています.また,「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の概要」*11 [g]の中でも「国際的な頭脳獲得競争の激化の中で我が国が生き抜くためには,優れた研究人材が世界中から集う”国際頭脳循環のハブ”となる研究拠点の更なる強化が必須」と示されています.この「ハブ」の役割が,まさに当研究室の目指す「国際ネットワーク」です.無論,研究室ですので混相流という分野の中ですが,世界中から研究者を招聘し,そして研究室から世界へ研究者(学生含む)を送る環境の中で切磋琢磨することで,学生は凄まじい成長を遂げます.成長した学生は,日本で,そして世界で通用する人材として羽ばたきます.

皆さんは日本の未来です.当研究室の整った環境を活用し,存分に力を付けてください

修了生に聞いた!農工大で博士号をとって,良かった点,社会で役立っている点

田川義之研究室で博士号を取得した先輩に,農工大で博士号を取得した経験を通して,良かった点,社会で役に立っている点などについて聞いてみました!博士号の取得が自身のキャリアや社会にどのように活かされるのかを考える材料になれば幸いです!


2019年度博士号取得学生A(博士号取得後・企業就職)


1番良かった点としては視野が広がったことです。世界中の最先端の研究に触れて知見・ 視野を広げられたことはドクター課程でしか経験できないことだと思います。また社会で役立っている点としては課題達成能力を養えたことです。働いているときに発生する課題・障害を達成・解決する方法などを提案する機会が多く、その点は評価していただいています。


2018年度博士号取得学生B(博士号取得後・アカデミック)


農工大は研究の国際化にも力を入れており学生の海外派遣等を実施しています。私も在学中にサポートいただきましたが、その中で得たネットワーク、英語運用能力や、国際的 な感覚は、海外大で研究をするための大きな力になっていると感じます。(これらは、研究だけでなく広く活用可能な、transferable skillsだと考えており、それらを得られたことが非常に重要だったと思います。) 農工大の研究設備は充実しており、最先端のものが揃っているので、幅広い技術に触れることができます。また学内での共同研究も盛んです。これらの学生時代に得た経験やノウハウは研究を計画・遂行するうえで役に立っています。特に、隣接分野の研究者と共同作業をする際には、学生時代に触れた技術や発想に共通する部分も多く、大いに助けられています。 国内で大学としての知名度が高いことに加え、研究者として一流の先生方が揃っているため、海外の研究者からも認知されていると感じます。海外で研究活動をする上で、共通の知り合いがいる、というのはコミュニケーションのきっかけとしては重要だと感じてお り、その点は良かった点だと思います。


2018年度博士号取得学生C(社会人博士)


博士号をもっていることから、会社で様々な経験をさせてもらえました。 例えば、新規探索のプロジェクトとして新しい課題を自ら探し、 それを実現するためのフィージビリティスタディを主体となって実施しました。 また、海外での活動を積極的に後押ししてくれました。 海外工場との技術交流会や国際展示会への参加などです。会社で役立っていると特に感じる”博士課程での経験で養った”力は、 自分で課題を見つけ、それを筋道立てて進めいていく研究推進力、研究内容を相手にわかりやすく興味を持ってもらえるように発表するプレゼンテー ション力です。博士号を持っていること、また博士課程での経験は会社でも活き、活躍のきっかけを与えてくれたと実感しています。

引用

[a] Society(ソサエティ)5.0,内閣府ホームページ

[b] 科学技術・学術審議会人材委員会・中央教育審議会大学分科会大学院部会合同部会(第1回)配付資料,【資料1-1】「科学技術・学術審議会人材委員会・中央教育審議会大学分科会大学院部会合同部会の設置について」,文部科学省

[c] 文部科学省 科学技術・学術政策研究所「科学研究のベンチマーキング 2017 -論文分析でみる世界の研究活動の変化と日本の状況-」,村上・伊神,p.13,図表11,2017

[d] 文部科学省 科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2018」3.4学位取得者の国際比較,図表3-4-4

[e] 文部科学省 科学技術・学術政策研究所「民間企業における博士の採用と活用 -製造業の研究開発部門を中心とするインタビューからの示唆-」,篠田・鐘ヶ江・岡本,P.4,図表1.4より抜粋,2014

[f] 2040年を見据えた大学院教育のあるべき姿 〜社会を先導する人材の育成に向けた体質改善の方策〜 (審議まとめ),中央教育審議会大学分科会,P.1,文部科学省

[g] 世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の概要,文部科学省