工場や倉庫など消防法上の防火対象物に該当する建物には、所轄の消防署による立ち入り検査が定期的に入ります。立ち入り検査では消火設備や避難経路、危険物の貯蔵・取扱状況などが確認されることになりますが、その過程で建築基準法上の確認済証や検査済証の有無について確認を求められる場面も少なくないようです。火災時の安全性は建物本体の遵法性とも切り離せないため、消防担当者の関心がそこに及ぶのは自然な流れかと思います。
工場の中には、戦後の早い時期に建てられたもの、生産規模の拡大に伴って何度も増築を重ねてきたものが少なくありません。先代から引き継いだ書類関係をきちんと整理しないまま現在に至っていたり、増築の都度確認申請がなされていなかったりして、結果として検査済証がない建物のまま操業を続けているというケースは多いかと思います。日々の生産活動に支障がないため、書類の不備をことさら問題と感じてこられなかった工場のオーナー様も多いでしょう。
ところが、近年は消防の立ち入り検査で「確認済証や検査済証が見当たらない」「建築基準法に適合していない増築の疑いがある」といった事実が判明した場合、その情報が所轄の建築指導課に共有される運用が定着してきているようです。背景には、平成27年12月に国土交通省と消防庁から発出された「建築物への立入検査等に係る関係行政機関による情報共有・連携体制の構築に関するガイドライン」があり、これにより建築部局と消防部局の間で情報共有と連携の枠組みが整備されました。実は、建築指導課が情報提供を受けると、所有者に対して建築基準法への適合状況の確認を求める行政指導を行うことがあり、これを放置すると是正命令や使用制限といった次の段階へ進む可能性もあります。消防の指摘から始まった話が、操業の継続そのものに関わる事態へと進んでしまう訳です。
それでは、書類が揃っていない工場の所有者は、こうした行政指導にどのように応えればよいのでしょうか?
そこで登場するのが「ガイドライン調査」になります(ガイドライン調査については以前の記事「その1 ガイドライン調査とは?」をお読みください)。ガイドライン調査により既存建物の現況と建築基準法への適合状況を客観的に確認し、是正が必要な項目があれば計画的に是正していくことで、建築指導課に対して遵法性を示す根拠資料を提示できるようになります。指導を真摯に受け止め、調査と是正のプロセスを段階的に進めることで、生産活動への影響を最小限に抑えつつ、問題を一つずつ解決していく道筋が立つかと思います。
【豆知識:中二階は「棚」ではなく「建築物」】
工場では、生産ラインの拡張や保管スペース確保のため、後付けで「中二階」を設置している例が非常に多く見受けられます。倉庫内に組まれたスチール製の棚であれば建築物には該当しませんが、人が常時昇降して作業や事務を行う中二階は建築基準法上の「建築物」とみなされ、その新設は増築として確認申請・完了検査の対象になります。
ガイドライン調査の現場では、ほぼすべての工場案件で確認申請を経ていない中二階が見つかっているのが実情かと思います。 弊社では、消防の立ち入り検査をきっかけに建築指導課から確認を求められた工場のオーナー様からご相談を受け、ガイドライン調査により遵法性を確認し、操業を継続したまま課題を整理していった実績が多くあります。
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