IPO企業の公開価格形成に関わる提言(上) IPO企業の公開価格形成に関わる提言(下) 

IPO企業の調査】

 日本のIPO市場における資金調達の現状について、ブックビルディング制度導入以降のデータを用いてまとめています。

日本のIPO企業の資金調達に関する状況について

主な傾向は以下のとおりである(詳細は上部リンクのPDFファイルを参照)。

・ブックビルディング期(1997-2020)の初期収益率 は平均71.3%と、入札期(1992-1997、平均11.4%)や米国(平均27.3%)と比べて高い(表1を参照)。近年は増加傾向にあり、2013年以降で平均98.6%(ジャスダックやマザーズなどのベンチャー向け市場は平均120.3%)となっている。 

・IPO後2日目以降の長期株価収益率は平均的に低下しているわけではない。

・2013年から2019年におけるベンチャー向け市場(ジャスダック、マザーズ)でIPOした企業の資金調達時の想定経済損失は、1社あたり約19.7億円である(平均調達額26.5億、平均株式時価総額160.9億円)。

・株式時価総額別の平均初期収益率の推移をみると時価総額500億円以上の企業の初期収益率は500億円未満の企業と比べ低い。東証1部上場企業というよりは、ベンチャー企業向け市場(旧新興三市場 )において初期収益率の問題が深刻である。

・公開価格設定時の仮条件レンジと初期収益率の関係を見ると、公開価格が仮条件の上限に設定された場合の初期収益率は高い。近年ではほとんどのIPO企業の公開価格は仮条件の上限に設定されている。

・国内投資家のみを割当の対象としたIPO企業と比べ、海外機関投資家などを含めたグローバルオファリングを行ったIPO企業の初期収益率は低い。

・情報・通信業の初期収益率は高い。

Dataの出所一覧

・IPOデータ:J.Ritter HP(金子隆氏提供、アイ・エヌ情報センター社

・配当落ち修正済み株価リターンデータ:NPM社

・財務データ:Quick社