キラル分子スピントロニクスの開拓
近年、キラル分子を通過した電子におけるスピン偏極効果:Chiral-induced spin-selectivity effect (CISS効果)が注目されています。我々はこのCISS効果によるスピン偏極効果を利用した新たな有機スピントロニクスデバイスの開発を進めています。例えば、熱と光に応答するキラル分子モーターを利用した熱/光制御型スピントロニクスデバイスを報告しています。
Nat. Commun. 2019, Adv. Mater. 2023, Nat. Nanotechnol. 2025
キラルファンデルワールス超格子の創製とキラル物性の開拓
CISS効果に代表されるように、近年キラル物質における特異な量子物性が注目を集めています。しかし、キラルな構造を持つ伝導体や磁性体を開発するための設計指針は未だ確立されていません。我々は、多彩な電子物性を示すファンデルワールス層状物質の層間に電気化学的に分子挿入することで、キラルな凝縮系物質:キラルファンデルワールス超格子を創製する手法を提案しています。実際に、キラルな金属物質におけるほぼ完全なスピン選択性を実現しています。
Adv. Mater. 2023, Adv. Sci 2022
有機モット絶縁体を用いた新奇超伝導デバイスの開発
古典的なバンド理論では金属になると予想されるのも関わらず、電子間の強いクーロン相互作用によって絶縁化した物質をモット絶縁体と呼び、高温超伝導体の母物質としても知られています。我々は有機モット絶縁体であるκ型BEDT-TTF塩結晶を用いた新奇超伝導デバイスの開発に取り組んでいます。これまでに、光によって絶縁体状態と超伝導状態をスイッチできる光超伝導トランジスタの開発に成功しています。
Science 2015, Adv. Mater. 2017, Phys. Chem. Chem. Phys. 2018 (Invited Review)