大会企画
「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」―フランスの画家ポール・ゴーギャンの有名な絵画のタイトルです。人間の一生を過去(どこから来たのか),現在(何者か),未来(どこへ行くのか)の「時間の観念」に分けて描いたものとされています。産業保健人間工学会も誕生から30年を迎える今、ゴーギャンに習い、設立経緯、現在、そして向かう未来について会員の皆様と共有する大会企画を用意いたしました。
産業保健人間工学会初代会長である神代雅晴先生より、基調講演として設立経緯を、学会の現状の取り組みを本大会長である榎原毅先生より、そして学会の向かうべき未来についてのシンポジウムを用意しています。赤津順一先生、池上徹先生、久保智英先生、市川陽子先生より未来を考える話題を提供いただき、次の30年の学会の方向性を会員の皆様と議論したいと思います。
■ 基調講演 11/22(土)12:45-13:45
司会:赤津順一(産業保健人間工学会会長/日本予防医学協会)
産業保健人間工学会の設立経緯
~文字では残せなかった誕生と生い立ち秘話
神代 雅晴
(産業医科大学 名誉教授/株式会社エルゴマ研究所 代表取締役)
【講演内容】
1991年に労働衛生の三管理の一角を成す作業管理の実装研究を目指して産業保健人間工学研究会が誕生し、1996年には産業保健人間工学学会として設立されました。誕生期に掲げた“一枚の写真が語る人間工学”論議の研究会精神を受け継ぎ、「Practice & its Theory」の研究団体と位置付けられました。本講演では文字では書き残せなかったこれまでの設立経緯ならびに30年の歩みを私観し、今後の産業保健人間工学の方向性を会員諸氏と議論するきっかけとしたい。
■ 大会長講演 11/22(土)16:50-17:50
司会:斎藤 真(産業保健人間工学会副会長/三重県立看護大学)
産業保健人間工学会の今
~我々は今、何に取り組むべきか
榎原 毅
(産業医科大学 人間工学研究室 教授)
【講演内容】
産業保健人間工学会が現在連携・参画している事業に、陸上貨物運送業を対象とした新たな腰痛予防対策指針の開発事業(通称CoMITプロジェクト)およびデジタルメンタルヘルスの予防介入指針の開発事業(通称DeLiGHTプロジェクト)があります。いずれも関連学会・団体および行政と連携し、協同して新たな予防策のスタンダートを提唱する新しいタイプの取り組みです。現在本学会が参画しているそれら事業の経験をもとに、産業保健人間工学が今、果たすべき役割について私見を紹介し、皆様と議論したいと思います。
■ シンポジウム 11/23(日)9:00-10:40
司会:榎原 毅(産業医科大学・人間工学教授)
産業保健人間工学会の未来
~産業保健人間工学の次の30年を切り拓く
「働く」の語源:労働と健康の基礎
池上 徹(大原記念労働科学研究所)
【講演内容】
働き方改革の構想から早10年。世の働き方への関心も高まり、時に怪しげな言説、「『働く』とは、『傍(はた)を楽(らく)にすること』です」が、各種コンサルタントや社労士などから流布されるようになった。一見、産業保健、あるいは人間工学とは疎遠な話であるが、ネット上のSNS情報というのは繰り返されることで真実味を帯びてしまう危険性がある。はたして、人類にとって「働く」とは何なのか、語源を探ることからその意義と健康的な人間生活とは何かを考えてみたい。
産業保健とネクストアクション2040
赤津 順一(産業保健人間工学会会⾧・一般財団法人日本予防医学協会)
【講演内容】
産業保健の役割は、高度経済成長期までの感染症・労働災害防止、1990年代以降の作業関連疾病を含む健康管理、そして2000年初頭以降は多様な労働者を対象とした健康リスクマネジメントへと拡大してきました。今後は、健康管理にとどまらず、働き方の改善や活力ある組織づくりへの貢献も期待されます。現場に基づく“Practice and its theory”型の対応を通じ、健康・安全の確保のみならず、生産性向上や職場活性化を目指す産業保健人間工学会が果たすべき役割を改めて考えたい。
産業疲労のこれまでとこれから:疲れたら休む、休める、休ませる社会に向けて
久保 智英(独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所)
【講演内容】
本講演は産業疲労研究会の代表世話人という立場から、本研究会のこれまでの歴史や活動の紹介とともに、これからの方向性について私見を展開したい。とりわけ、労働者の疲労の可逆性という特徴に着目した「労働者の疲労回復3原則」の考え方をもとに、本研究会が今後、疲れたら休む、休める、休ませる社会の実現に向けて、どのように研究及び実践において貢献できるのか?貢献していくべきなのか?について講演することとする。
多様な人材を支える産業保健人間工学
市川 陽子(三重県立看護大学)
【講演内容】
これまで、助産師として児が誕生する瞬間に多く立ち会ってきた。多くの新生児は健常児として出生するが、疾患や障がいを有して出生する児もいる。疾患や障がいを有する児が成長したときには、各個人の特性に配慮がなされ、得意な力を発揮していきいきと働いて欲しい。これは、私が助産師として働く中で願ってきたことである。今回のシンポジウムでは、個別の配慮が必要な労働者の例をとりあげ、多数派の特性も少数派の特性も尊重する産業保健人間工学研究について考えたい。
作業管理の実践講習会「VRを活用した職場巡視」
11/23(日)13:15-14:45
コーディネーター:安藤 肇(産業医科大学・作業関連疾患予防学)
谷 直道(産業医科大学・人間工学)
松田文子(大原記念労働科学研究所)
酒井一輝(産業医科大学・人間工学)
【概要】
介護施設の直接介助(食事・移乗介助)・間接介助(リネン交換・物品運搬など)を対象に、バーチャルリアリティ(VR)を活用した職場巡視を体験します(対象施設は予定。変更の可能性あり)。
小グループに分かれてVR映像で職場巡視を体験した後、各グループ単位で改善案について話し合い、発表して頂きます。ベテランはもちろん、作業管理の基本となる職場巡視を未体験の方は是非ご参加ください。
(公社)日本産業衛生学会 エイジマネジメント研究会
11/22(土)13:55-15:10 会議室
【プログラム】
13:55~14:00 開会挨拶/ 赤津順一 (エイジマネジメント研究会 代表世話人)
14:00~14:40 話題提供/ 松田文子 (大原記念労働科学研究所)
『高年齢労働者の就労に合わせた職場改善』
14:40~15:10 一般演題 (3題を予定)
プログラム
産業保健人間工学会第30回大会プログラム
11 月22日(土)
【開 会 式】 12:00~12:15
【総 会】 12:15~12:45
【基調講演】12:45~13:45 司会 赤津 順一 (産業保健人間工学会会長,日本予防医学協会)
産業保健人間工学会の設立経緯~文字では残せなかった誕生と生い立ち秘話
神代 雅晴 (産業医科大学 名誉教授,株式会社エルゴマ研究所 代表取締役)
【一般講演1】 13:55~15:10 座長 酒井 一輝(産業医科大学)
1–1 ユーザーフレンドリーな衛生マスクの開発に向けた高齢者のマスク着用に関する意識調査
○ 森島 美佳 (金沢大学)
1–2 配薬エラーを防ぐための設備要件に関する研究
○ 前田 真由美,市川 陽子 (三重県立看護大学),長谷川 智之(名古屋市立大学), 斎藤 真(三重県立看護大学)
1–3 静脈採血に用いられる皮静脈と身体的特徴および生活習慣の関係
○ 長谷川 智之 (名古屋市立大学),斎藤 真 (三重県立看護大学)
1–4 創造性を発揮できるワーケーションの作業環境に関する検討
○ 小林 大二 (公立千歳科学技術大学),吉田 伊吹 (公立千歳科学技術大学大学院)
1–5 モバイルファーマシーと小型無人飛行機による災害支援の試み
○ 若松 千尋,洲崎 好香,吉武 毅人 (第一薬科大学看護学部), 城戸 克己,大光 正男 (第一薬科大学薬学部)
【(公社)日本産業衛生学会エイジマネジメント研究会】 13:55~15:10 会議室
13:55~14:00 開会挨拶/ 赤津順一 (エイジマネジメント研究会 代表世話人)
14:00~14:40 『高年齢労働者の就労に合わせた職場改善』 話題提供/ 松田文子 (大原記念労働科学研究所)
14:40~15:10 一般演題 (3 題を予定)
【一般講演2】 15:25~16:40 座長 水野 有希(日本女子体育大学)
2–1 ABW(Activity-Based Working)の人間工学的評価の試み ― 作業内容と作業場所の適合性 —
○ 北島 洋樹,石井 賢治,松田 文子 (大原記念労働科学研究所)
2–2 若手労働者の職場のウェルビーイングと心理的居場所感の関連
○ 庄司 直人,吉田 貴則 (朝日大学)
2–3 健康リスク情報の受容性に影響する要因— 情報提示方法とヘルスリテラシーの交互作用 —
○ 松﨑一基,酒井一輝 (産業医科大学),玉田葉月 (愛知淑徳大学),松木太郎 (広島国際大学),榎原毅 (産業医科大学)
2–4 高年齢労働者における主観的体力低下と職業性転倒との関係
○ 松垣 竜太郎,大神 明 (産業医科大学産業生態科学研究所作業関連疾患予防学)
2–5 職場の積極的腰痛対策 On the Job Exercise の提案
○ 田中 孝之,日下 聖,野田 紫音 (北海道大学),榎原 毅,谷 直道 (産業医科大学)
【大会長講演】 16:50~17:50 司会 斎藤 真 (産業保健人間工学会副会長,三重県立看護大学)
産業保健人間工学会の今 ~我々は今,何に取り組むべきか
榎原 毅 (産業医科大学人間工学研究室)
【懇 親 会】 18:00~19:30
11 月23日(日)
【企画シンポジウム】 9:00~10:40 司会 榎原 毅 (産業医科大学人間工学研究室)
産業保健人間工学会の未来~産業保健人間工学の次の30年を切り拓く
「働く」の語源:労働と健康の基礎
池上 徹 (大原記念労働科学研究所)
産業保健とネクストアクション2040
赤津 順一 (産業保健人間工学会会長,一般財団法人日本予防医学協会)
産業疲労のこれまでとこれから:疲れたら休む,休める,休ませる社会に向けて
久保 智英 (独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所)
多様な人材を支える産業保健人間工学
市川 陽子 (三重県立看護大学)
【一般講演3】 11:00~12:15 座長 笠松 慶子 (東京都立大学)
3–1 VR空間での自己競争型鏡映描写課題におけるフロー状態とパターン2反応への影響
○ 倉岡 宏幸 (公立千歳科学技術大学),吉田 伊吹 (公立千歳科学技術大学大学院), 小林 大二 (公立千歳科学技術大学)
3–2 予防的観点からみた手首用サポーターの評価
○ 松岡 敏生 (三重県工業研究所),常見 麻芙 (医療法人山下病院), 松崎 一平 (医療法人山下病院)
3–3 立位でのVDT作業における身体愁訴と作業環境の関連性
○ 藤野 博仁,伊東 ありす,井本 夢香 (産業医科大学),酒井 一輝 (産業医科大学大学院), 谷 直道,榎原 毅 (産業医科大学人間工学研究室)
3–4 眼球運動データを用いたリフレクションが観察技術におよぼす効果
○ 斎藤 真,八木 なつみ (三重県立看護大学),長谷川 智之 (名古屋市立大学), 市川 陽子,大平 肇子 (三重県立看護大学)
3–5 内視鏡スタッフに対する人間工学的対策― One Minute Triple Stretch の考案と検証 ―
○ 常見 麻芙,松崎 一平 (医療法人山下病院),堀 寧 (名古屋市立大学), 林 香月 (名古屋市立大学付属東部医療センター),玉田 葉月 (愛知淑徳大学), 山田 翔太 (名古屋市立大学付属西部医療センター),松崎 一基 (日本保健医療大学), 酒井 一輝 (産業医科大学),上島 通浩 (名古屋市立大学大学院医学研究科), 榎原 毅 (産業医科大学)
【作業管理の実践講習会】 13:15~14:45 VRを活用した職場巡視
コーディネーター: 安藤 肇 (産業医科大学作業関連疾患予防学)
谷 直道 (産業医科大学人間工学研究室)
松田 文子 (大原記念労働科学研究所)
酒井 一輝 (産業医科大学人間工学研究室)
【閉 会 式】 14:45~15:00
タイムテーブル
10/1up 🆕 11/23(日)には昼食を用意いたします。参加申込時にお申し込みください。(土日は学内の売店が休業しております)
フロアマップ
①ラマッツィーニ小ホール ②ロビー ③大会事務局