ミュンヘン大学
2011-2015年
高橋隆博教授が学外の資金を獲得し関西大学に設立した「なにわ大阪文化遺産学研究センター」は、その後藪田貫教授が同じく新たに外部資金を獲得して「大阪都市遺産研究センター」となった。私は3つの研究班の一つの主幹として都市大阪の文化遺産というべき『住友文庫』の研究を担当した。現在も大阪市中之島に立っている府立中之島図書館は1904年に開館したが、その建設だけでなく蔵書の購入やその後の継続雑誌の購入、さらには新館の増築費用をすべて住友家が寄贈した。第1次大戦後大大阪へと発展する時期に住友家はドイツへ留学していた田丸節郎のドイツの学位論文購入費用をすべて負担し、図書館へ寄贈した。医学の他、工学、農学、理学など理科系の学位論文が合本されて、書架数列を埋めている。しかしそれらは目録化されることなく、100年間書庫に眠っていた。私は学外の研究者にその存在価値を伝えるために目録を作成し、4巻に分けて刊行した。さらにオンライン目録化して、現在は自由にアクセスできる。
成果:『大阪都市遺産研究センター研究叢書 別集4-1~4 住友文庫ドイツ医学学位論文目録』全4巻、2013~15年
*残部僅少ですが研究者に謹呈可能です。但し送料をご負担ください。詳しくは私のメールアドレス(トップページ最下段参照)にご連絡ください。
寛文長崎図屏風
2005-2007年
野間晴雄教授の科研研究会で、大航海時代・重商主義時代における西洋と東洋の文化の出会いを共通テーマにした研究会に、私はイングランドと日本の出会いを課題にして、分担者として参加した。1673年イングランド東インド会社の商船リターン号が長崎に来航して毛織物貿易再開を求めた事件を、大英図書館に所蔵されている未刊行史料をもとに論文を作成した。これに関するテーマで、他にも論文を発表した。
成果:『関西大学東西学術研究所国際共同研究シリーズ7 海の回廊と文化の出会い アジア・世界をつなぐ』2009年 関西大学出版会
久米邦武
藪田貫教授が科研費を取得して開始した共同研究がその後、関西大学協定校であるベルギーのカトリック・ル―ヴァン大学と共同して研究することになった。ヴァンドゥ・ヴァラ教授を代表者としてディミトリ助教授やアリアン・ウェルフ研究員が参加し、相互に日本、ベルギー、オランダの大学や史料館を訪問し文書と解読して論文を作成した。私はベルギーの歴史家アンリ・ピレンヌと日本の久米邦武の筆禍事件をテーマとして論文を公表した。
成果:「国際交流助成基金による関西大学と協定校間の共同研究成果報告書『19世紀の日本とベルギー・近代化と国際環境』」2002年
ケムブリッジシァ、トリプロウの教区教会
科研による総合研究Aによる5年間の共同研究の成果。研究代表者である高山博教授から代表者役を私が引き継ぎました。1987年7月にケムブリッジ大学J.C.Holt教授主催の中世ラテン語羊皮紙写本解読転写講習合宿に参加した10人が再集結して結成した研究会が母体。1990年第二日本の若手研究者は、西欧各地の大学院生が受けている訓練と同じく、西洋各地の文書館に所蔵されている未刊行のラテン語写本を解読転写して、それをもとにした実証研究の方法を、日本の研究にも導入することを目指して、古文書学とその技術を習得するために渡欧しました。私は合宿終了後1989年3月まで1年半に渉ってHolt教授の指導の下に、13世紀ケムブリッジシアの巡回裁判記録を転写し、それに基づいて口頭発表し論文を作成しました。アメリカの学会でも報告しました。22名の寄稿者は西欧各地の原史料を用いた論文を下記の書物に発表しました。
研究成果:國方敬司、直江眞一編『史料が語る中世ヨーロッパ』刀水書房、2004年
豊臣来大阪図屏風
高橋隆博教授が主宰する関西大学なにわ大阪文化遺産学研究センターが、ケルン大学フランチェスカ・エームケ教授を招聘して開かれた国際シンポジウムで、私は新発見された豊臣期大坂図屏風がオランダ東インド会社によって、ヨーロッパにもたらされ、その後オーストリア・グラーツのエッゲンベルク城に所蔵されるまでの過程について考察した。東大史料偏差所や日蘭協会の所蔵される文書を根拠にルートを推測し、ヨーロッパにおいて屏風が分断され、上塗りされたことを突き止めた。
成果:「新発見『豊臣期大阪図屏風』を読む」2007年、関西大学なにわ大阪文化遺産学研究センター。
ブービーヌ教会のステンドグラス
2007年に私が渡辺節夫教授(青山学院大学)に声をかけ、それぞれのゼミの院生たちや、若手研究者を集めて中世英仏関係の研究会を始めた。その後加藤玄(日本女子大学)も参加して、関大大学、青山学院大学、日本女子大学を会場に研究会を続けた。一国完結史的な歴史像を離れて、西欧全体を視野に入れて、個々の地域、人間集団、キリスト教思想などを研究し、その後も科研を取得して、ドイツ史研究者を含め、二つの研究成果を公表した。現在休会中。若手による再開を待っています。
『中世英仏関係史―ノルマン征服から百年戦争終結まで―』創元社、2012年
『帝国で読み解く中世ヨーロッパ』ミネルヴァ書房、2017年
ジロンド県文書館
2009~2014年
服部良久教授(京都大学)が主宰する科学研究費による研究テーマ「紛争解決とコミュニケーション」の共同研究に、「地域の紛争解決と王国(帝国)の秩序機能」分野の統括者として参加した。
成果:『コミュニケーションから読む中近世ヨーロッパ史:紛争と秩序のタペストリー』 (MINERVA 西洋史ライブラリー)、2015年、ミネルヴァ書房
アヌシー文書館
2011-2015年
江川温教授(大阪大学)が主宰する科学研究費による研究テーマの共同研究に研究分担者として参加した。フランス王家であるカペー家に対抗して、西フランスに別の平和領域としての帝国的権力構造を築いたアンジュー家の、自己正当化行動を研究した。ノルマンディ公としての主権の確立過程や、結婚を通じてのサヴォワ家との連携を分析した。
成果:「中世カトリック圏君主権の神話的・歴史的正統化」科研基盤研究(B)科研基盤研究成果報告書、2015年