内閣府特命担当大臣(こども政策・少子化対策・若者活躍・男女共同参画)
女性活躍担当大臣
小倉 將信 様
私たちは、希望すれば夫婦双方とも氏を変えずに婚姻し、その夫婦の子は父と母どちらの氏を称することも可能となる制度の導入を要望します。以下その理由を記します。
現在の日本の法律では、夫婦は婚姻の際に夫または妻の氏を選んで氏を統一、すなわち夫婦の片方が必ず氏を変えなくてはなりません。しかし、仕事上やアイデンティティ、氏の継承、その他さまざまな事情で結婚での氏の変更を望まない人たちがいます。
また、現在の日本の法律では、父や母と氏が異なっている子は父と母どちらの氏を名乗ることもできます。しかし、婚姻で氏を統一した父母の元に生まれた子は、父母の離婚などがない限り、父と母の氏から選ぶことはできません。父母の婚姻届の提出によって、子の選べる氏の豊かさが狭められている状態です。
氏の継承を望んでいる人にとって結婚による氏の変更は、自らの氏を子に継承できる可能性を失うことです。これは、いわゆる旧姓の通称使用では解決できません。氏の継承のために子を祖父母の養子にすれば良いという意見もありますが、そうすると親は親権を失ってしまいます。そもそも祖父母が存命でなければ、その方法は使えません。
氏の継承のために婚姻届を提出できない人たちがいます。子が父と母どちらの氏でも継承できるようにするために離婚届を出すかどうか悩んでいる夫婦がいます。そんな両親を見ている子どもたちがいます。今の婚姻制度が、結婚による氏の断絶という問題に対応できていないために、結婚や出産、子育ての意欲を喪失している人たちがいて、それは子どもの心にも影響を与えています。
また、「女の子はいずれ結婚して姓が変わるんだから」と言われて苦しみながら育つ人もいます。婚姻による改氏を予想されるのは殆どの場合女性です。親から子へ継承されるという性格を持つ氏ですが、女子は継続の可能性をほぼ剥奪された形でしか氏を得ることができません。このことが子どもの人格形成に影響しているという事実にもどうか目を向けてください。
希望する人には夫婦それぞれの氏での結婚が認められるようになれば、私たちは婚姻届を出して法律で守られた家庭を築き、さらに安心して子を産み育てることができるようになります。そして、子は父母の婚姻の破綻と引き換えにせずとも氏を選べるようになると私たちは考えています。
令和5年5月12日
実家の名前を継承したい姉妹の会
「選択的夫婦別姓制度ができれば私は別姓を選び、子どもの一人を自分の名字にしたいと思っています。友人にそう話したところ『名字を変えたくない気持ちは分かるし選択的夫婦別姓には賛成よ。でも子どもの名字にこだわるのはおかしいわ。だって子どもはあなたの所有物ではないのだから』とたしなめられまして・・・」というご相談をいただくことがあります。このような時、私たちは次のようにお答えしています。
子の氏(名字)のルールを定めている民法790条に基づいて出生時に子が称することができる氏は親の氏だけです。婚姻届を出している両親の元に生まれた子は、父の氏でも母の氏でもどちらを称することも対等に認められています。
しかし、現在の法律では夫婦は氏を統一しなくてはなりません。そのため夫婦の片方は結婚によって自分の氏を失います。そして、失われた方の氏は「子が称する氏」にはなりません。
現状では結婚で氏を手放すのはほとんどの場合、女性です。ほとんどの男性は自分の氏を保ったまま結婚し、その氏が子の氏になっていますが、「子は親の所有物ではない」などと責められることはありません。ところが女性が同じことを望むと、なぜか理由の説明を求められたり、「子は親の所有物ではない」と言われたりします。
自分の氏を保ったまま結婚し、更にその氏を子にも名乗ってもらいたいという気持ちを法律的に表現するならば、「自分の氏が民法790条に基づく『子が称する氏』たり得るままで結婚したい」となるでしょう。
子が親の氏を称する規定は現行民法に盛り込まれており、「子は親の所有物だから」ではありません。「子が称することができる氏のままで結婚する」ことはすでに夫婦の片方はできていることです。親として自分の氏が民法790条の規定に基づく「子が称する氏」でありたいと思うことは自然なことであり、男女平等に尊重されるべき思いであると私たちは考えています。
夫婦双方が婚姻前の氏を「子が称する氏」とすることができるような法制度の実現を願っています。
令和4年6月28日
実家の名前を継承したい姉妹の会
私たち「実家の名前を継承したい姉妹の会」はこれまで地道な活動を続けて参りました。その活動を進めている過程においていくつか法的に知っておきたい事柄がでてきていたのですが、この度、各方面のご尽力により法務省民事局の見解をお聞かせいただけることになりました。
2022年(令和4年)5月19日、衆議院議員会館において法務省民事局、衆議院法制局よりそれぞれ数名の方々、自民党「氏継承議員連盟」の国会議員の皆様方、「実家の名前を継承したい姉妹の会」から数名出席のもと会合が持たれ、氏や家制度また選択的夫婦別氏制のいわゆる法制審議会答申案についての質問にご回答をいただきました。貴重な機会を設けてくださった自民党「氏継承議員連盟」、法務省および衆議院法制局に感謝申し上げます。
その時にいただいた回答を参考にして当会の見解を以下の通りまとめました。
①氏は「家」の名称なの?
1898年(明治31年)に制定された、いわゆる家制度下では、氏は家の名で戸主及び家族は「其家の氏を称す」と定められていました。家制度は1947年(昭和22年)に廃止されたので、氏は家制度でいうところの「家」の名称ではなくなりました。現代においての氏は、個人のものであると同時に、ゆるやかに家族を表すものであると私たちは考えています。
②現行民法に「子が親の氏を称する」という規定が盛り込まれたのは家制度の考え方に因るの?
現代において「氏が継承されている」と一般的に思われているのは、民法に基づいて「子が親の氏を称する」ことで成り立っていると私たちは考えています。
子が称する氏の定め方は民法790条1)に規定されていますが、この条文が現行民法に盛り込まれたのは家制度の考え方に因るのではありません。家制度自体が廃止されているので、民法790条が家制度を根拠とするものではないことは明らかです。
また、民法に基づいて子が親または養親の氏を称することは門地による差別にも当たらないと私たちは考えています2)。
民法に基づいて子が親または養親の氏を称することは日本国憲法の精神に合致していると言えるでしょう。
③民法と戸籍法の関係は?氏の在り方や親族的身分関係を定めているのは民法それとも戸籍法?
戸籍法は戸籍の作成・手続きなどを定めた法律です。戸籍法によると、戸籍は「一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する」とされており、同じ氏の者だけが同じ戸籍に在籍しています。このことをもって「夫婦親子は同一氏同一戸籍であるべき」と考える人がいるようです。
しかし、例えば、夫婦と同じ戸籍に記載されている子が必ずしも夫婦の双方と法律上の親子関係にあるとは限りません3)。その逆に、法律上の身分関係が親子であっても氏が異なっていれば戸籍が異なります。このように、同一戸籍であるか否かと法律上の親子であるか否かは必ずしも一致していません。
戸籍は民法の規定に基づく手続法である戸籍法によって編製されており、夫婦・親子の氏の在り方や親族的身分関係は民法によって定められています。
④選択的夫婦別氏制度が導入されると、戸籍の記載はどう変わるの?
現在の戸籍は筆頭者の欄に「氏名」が記され、個人事項のところは、それぞれ「名」のみが記載されています。1996年に法制審議会は選択的夫婦別氏制度の導入を含む「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申しましたが、この、いわゆる法制審案による戸籍は筆頭者の欄は現行と変わらず「氏名」が記載され、個人事項のところは、それぞれ「氏」と「名」が記載されることになると想定されています。
⑤選択的夫婦別氏制度が導入されると、別氏夫婦の子の氏と戸籍はどうなるの?
いわゆる法制審案によれば、別氏夫婦は婚姻の際に夫または妻の氏を子が称する氏として定めなければならないとされており、その子は婚姻の際に定められた氏を称するものとされています。
法務省に確認したところ「婚姻中の父母の子でその一方の氏を称するものは、父母の戸籍に入るものとされている」とのことです。このことから父(母)を筆頭者とする父母の戸籍に入っている子は法制審案の家裁の許可を得ての「子の氏の変更」4)で母(父)の氏になっても、父母の戸籍に入ったままと言えるでしょう。
また法務省に確認したところ法制審案においても「父または母のいずれとも異なる氏を称する子は、父母の戸籍に入ることはない」とのことです。
⑥選択的夫婦別氏制度が導入されると、戸籍の機能はどう変わるの?
法務省としては、「仮に選択的夫婦別氏制度が導入された場合であっても、戸籍の機能やその重要性については変わりないと考えている」とのことです。
現在の戸籍は「日本国民の親族的身分関係を登録・公証する制度であり、戸籍を辿ることによって、特定個人の氏の異動等を含めた身分関係の履歴が明らかになるものである」と言われていますが、選択的夫婦別氏制度が導入されても、この機能に変わりはないと言えるでしょう。
⑦子が称する氏はどこに記載されているの?
戸籍には氏を公証、すなわち公(おおやけ)に証明しているという面があるので、民法790条に基づいて子が称する氏は、子の出生時に戸籍に記載されている父母の氏または母の氏です。
⑧親の「通称」は子が称する氏になるの?
婚姻の際に氏を変えた者が職場等で利用する婚姻前の氏という意味での「通称」は、民法790条に基づいて子が称する氏にはなりません。
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1)民法第790条
嫡出である子は、父母の氏を称する。ただし、子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏を称する。
嫡出でない子は、母の氏を称する。
2)日本国憲法第14条
すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
3)例えば子の母が、子を出産した後に離婚し、その後再婚して再婚後の夫の氏を称している場合など、子の母が氏を改めたことにより、子が母と氏を異にするときは、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法(第98条第1項)の定めるところにより届け出ることにより、再婚後の母の氏を称することができる(民法第791条第1項)。この場合には、子は再婚後の夫婦の戸籍に入籍することとなるが、再婚後の夫と子との間には、(別途養子縁組をしない限り、)法律上の親子関係は生じることはない。このように、同一戸籍に在籍している者が親子関係にあるとは限らない。
4)民法の一部を改正する法律案要綱(一部抜粋)
第四 子の氏
三 子の氏の変更
子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができるものとする。ただし、子の父母が氏を異にする夫婦であって子が未成年であるときは、父母の婚姻中は、特別の事情があるときでなければ、これをすることができないものとする。
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令和4年6月3日 作成
実家の名前を継承したい姉妹の会
「夫婦双方の氏を守るために、結婚式は挙げるけれど婚姻届は出さない、という方法を考えているのですが、どう思いますか?」と聞かれることがあります。また、「ペーパー離婚すれば、子どもの氏は、夫婦双方の氏から選べると聞いたのですが、離婚届を出すのはためらいがあります」と悩んでいる夫婦もいます。
民法には、「子は父母の氏を称する」という規定が790条にあります。これは、子にとっては氏の取得のルールですが、親にとっては氏の継承についての規定として機能していると私たちは考えています。
そして、もし父母のどちらか、あるいは両方が子と異なる氏の場合、子は、民法791条「子の氏の変更」により、父の氏でも母の氏でも、どちらの氏でも選んで、それを称することができます。
ところが、現在は民法750条により婚姻中の夫婦は例外なく同氏です。このため、子が父母の氏から選べると言っても、それは、父母の離婚や、父母が元々婚姻届を出していないなどの理由で、父母が法律的には夫婦ではない場合、あるいは、父母の離再婚や養子縁組などで、父母が氏を変えた場合に限られます。
家制度がなくなり、家族内の氏の豊かさは一部広がりを見せているといえます。とはいえ、婚姻中の父母が必ず同氏であることによって、子の選ぶ氏の豊かさが、父母の婚姻の破綻とセットになるという「ねじれ」とも言える現象が生まれてきているように思います。
家制度時代には、氏は「戸主と家族」に一つと法律で定められており、氏を同じくする人が家族でした。すなわち、家制度時代の氏は、氏の異なる人を家族から排除する機能を有していたと言えると思います。しかし、今は法律で決まった家制度はなく、現代の家族は、既に複数の氏を容認しています。
希望する夫婦が双方の氏を保ったまま婚姻届を出すことが可能になれば、子は「父母の婚姻の破綻」と引き換えにしなくても、父母双方の氏から選んで称することができるようになると私たちは考えています。
令和4年3月15日
実家の名前を継承したい姉妹の会
「『氏は個人のものか家族のものか』について、どのように考えているのですか?会の名称に『実家』とあるので気になります」というお問い合わせをいただくことがあります。このような時、私たちは次のようにお答えしています。
氏が個人のものか家族のものかは、単純にどちらかに決められるものではないと私たちは考えています。
明治時代にできたいわゆる「家制度」があった時代には、法律上の制度として「家」がありました。家制度下では、氏は家名であり、戸主の下、その「家」に属する「家族」の範囲が法律で規定されていました。つまり、「家族の氏」は必ず一つで、それは「戸主の氏」と同じでした。同じ家族かどうかを見分ける基準は、氏が同じかどうかでした。
しかし、現行民法には「家族」の範囲を示す明確な条文はありません。家族の範囲が法律で定められていないのですから、現代の家族の中にある氏は必ずしも一つとは限りません。家族の中に複数の氏がある場合もあります。例えば、当会の名称にもなっている「実家の名前」ですが、実家の両親が(母方)祖父母と同居しているなどの理由で、「実家に二つの氏がある」という人もいるでしょう。つまり、現在の氏は、同じ家族かどうかを見分ける基準にはなっていません。家制度時代には、法律上の「家」に氏があり、その氏は「戸主と家族」に一つだったこととの比較から、法律上の「家」がなくなった現行民法下では氏は個人のものと解釈するのが一般的なようです。
その一方で、現行民法には790条「子は父母の氏を称する」という規定があります。この規定によって、子から見れば氏の取得が、親から見れば氏の継承が行われ、その結果として、同じ家族の中に氏を同じくする人が広がっていきます。つまり、現行民法の氏は、家族の繋がりをゆるやかに表すものであるとも言えるでしょう。
このようなことから私たちは、現行民法の氏は、個人のものであると同時に、ゆるやかに家族を表すものでもあると考えています。
会の名称に「実家」という言葉があるのは、氏が、個人のものであるか家族のものであるかは対立する考え方ではない、という私たちの思いの表れです。
令和4年3月8日
実家の名前を継承したい姉妹の会
「私は選択的夫婦別姓制度ができれば別姓を選び、子どもの一人を自分の名字にしたいと思っているのですが、別姓賛成の人から『ダメよ、子の氏にこだわるのは家制度の考え方よ』と言われまして・・・」というご相談をいただくことがあります。このような時、私たちは次のようにお答えしています。
親の氏が子の氏になることは、親にとっても子にとっても権利の一つであるとも言えるでしょう。明治時代にできたいわゆる「家制度」があった時代には、結婚した女性は“無能力者”とされ、かなりの権利を放棄する事が法律で決められていました。現代において、母親が子に自分の氏を望むことを家制度的な考え方として否定的に扱うことは、むしろ、結婚した女性は法的に無能力者であるという戦前の意識のままであり、それこそが、まさに家制度の考え方ではないでしょうか。
家制度のない現在でも、夫婦のうちの片方は「親から継承して得た自分の氏」も、その氏の「子への継承の可能性」も、どちらも保持したまま結婚できます。しかし、夫婦のもう片方は、どちらも手放さなくてはなりません。そして、結婚で氏を手放すのはほとんどの場合、女性です。子の氏にこだわる男性がいるのであれば、子の氏にこだわる女性がいるのも自然なことであり、その思いを消し去ったり否定したりする必要は全くないと思います。
希望すれば夫婦双方が自らの氏を保ったまま結婚し、さらには子への氏の継承が可能になる制度ができることを願っています。
令和4年2月7日
実家の名前を継承したい姉妹の会
「実家の名前を継承したい」というと、「それは戦前の家制度の発想だと思いますが、家制度の考え方に基づいた思いを叶えるために法改正を希望しているのですか?」というご意見をいただくことがあります。このような時、私たちは次のようにお答えしています。
明治31年にできた、家父長制を基本とする、いわゆる「家制度」があった時代には、「家」の氏、すなわち「家名」というものが法律上存在していました。もし、その家制度下にあった「家名」を復活させ、それを当時のような仕組みで継承したいと望んでいる人がいるとしたらどうでしょう?その思いは、人それぞれの思いとしてまわりの人に認められることはあっても、その思いを叶えるために法改正されることはないと私たちは考えています。
なぜなら、その思いは、廃止された家制度の考え方に基づいているからです。その思いを叶える法改正とは家制度の復活を意味しますが、家制度は、その差別規定が日本国憲法の精神に合致しなかったために廃止されたと言われています。そのような制度の復活はできないので、その思いを叶えるための法改正はできないと言うのが妥当でしょう。
しかし、私たちが望んでいるのは、家制度時代の「家名」を継承することではありません。私たちは家名という言葉を、現在の法律における「氏」という意味で使っています。私たちが望んでいるのは、現在の法律における「氏」の継承です。
そして、氏を「継承したい」という思いも、家制度時代の発想によるものではありません。なぜなら、氏の継承は家制度以前から行われていたからです。
また、「氏の継承」は、家制度廃止とともに行われなくなったわけでもありません。私たちは、出生に伴って親から氏を取得し、子ができれば自らの氏が子に継承されており、現在でも氏の継承は行われています。
つまり、「氏の継承」は家制度の有無とは関係なく行われています。古来より氏が継承されてきたのは、家制度の考え方に基づいてではなく、「継承」が氏のもつ性質だからです。氏には、継承される権利が内在していると思われます。
現在でも、夫婦のうちの片方は、「親から継承して得た自分の氏」も、その氏の「子への継承の可能性」も、どちらも保持したまま結婚できます。しかし、夫婦のもう片方は、どちらも手放さなくてはなりません。
そして、私たちが氏の継承を望んでいるのは、その氏が、由緒があるからとか、希少性があるからではありません。それが「自分が継承して得た『自分の』氏」だからです。
夫婦双方ともに、自分が継承して得た「自分の」氏を保ったまま結婚し、かつ、子への継承の可能性を持つこともできるようにする法改正は、日本国憲法の精神に合致するものではないでしょうか。
希望すれば夫婦双方の氏の継承が可能になる制度ができることを願っています。
令和3年5月23日
実家の名前を継承したい姉妹の会
「家名を継ぎたい」というと、「家名という言葉を使うのは家制度時代の発想によるものであり、今の時代にそぐわないのでは?」 と思う人もいるようです。このような時、私たちは次のようにお答えしています。
家名という言葉の使われ方は、時代とともに変化してきました。
1898年(明治31年)に制定され、法律上の制度としての「家」が規定されていた「家制度」の時代には、「家」の氏、すなわち「家名」というものが法律上存在し、それは「戸主の氏」を指しました。
1947年(昭和22年)、「家制度」は廃止されました。現在の法律には「家」も「家名」もありませんが、私たち一人一人に氏があり、それを家名と呼ぶ人はいます。
また、私たちが日常使っている「氏」「姓」「名字」「苗字」という言葉は、もともと成り立ちが違い、意味もそれぞれ異なっていたそうです。しかし、現在、これらの言葉は、一般的には同じ意味で使われており、家名という言葉も同じ意味で使われることがあります。
ただし、これらの言葉は、現在の法律では「氏」に統一されており、法律上は「家名」も「姓」「名字」「苗字」という言葉もないようです。
このようなことから、現在でも家名という言葉が使われるとき、それは家制度下の「家名」とは意味が違っていると私たちは考えています。家制度を彷彿させるとして家名という言葉を好まない人もいますが、私たちは、家名を氏と同じ意味で使っています。家制度下での「家名」ではありません。
長い歴史の中では、「氏」「姓」「名字」「苗字」「家名」の意味がそれぞれ異なる時代、あるいは特定の身分の人しか氏を公称することが許されない時代、また、新しい氏の創設が可能な時代もあったようです。歴史的・伝統的な意味を考えると、人によって氏の捉え方は様々なのかも知れません。しかし、氏が家族の歴史の中で継承されてきたものであることに変わりはありません。氏の継承は、家制度以前から行われてきました。
しかし、今の日本の法律では、婚姻届と引き換えに夫婦のどちらかが「継承して得た自らの氏」を不本意であっても失い、氏のさらなる継承も諦めなければなりません。
希望すれば夫婦双方が自らの氏を保ったまま結婚し、さらには子への氏の継承が可能になる制度ができることを願っています。
令和3年5月17日
実家の名前を継承したい姉妹の会
「実家の氏を継承したいという思いは、今では廃止された家制度の考え方では?古風な考え方では?」というご意見をいただくことがあります。このような時、私たちは次のようにお答えしています。
氏の存在はすでに飛鳥時代には確認されており、その継承方法は、時代によって、地域によって、様々であったと言われています。一方で、家制度のような仕組みは一部の人々の間に室町時代頃にはあったようですが、それが法律上の「家制度」として全国民に適用されるようになったのは明治時代のことです。つまり、氏の継承は家制度ができる前から行われていました。氏を継承したいという思いは、家制度によってできた考え方ではなく、古来より存在している自然な思いではないでしょうか。
また、これは時代を問わない思いであるとも私たちは考えています。なぜなら、氏の継承は現在でも行われているからです。私たちは出生に伴って名付けられ、親の氏を取得します。そして子ができれば、子に氏が継承されます。こうして氏は受け継がれていきます。
しかし、今の日本の法律では、夫婦は婚姻の際、夫または妻の氏を選んで氏を統一しなくてはなりません。このことは、婚姻で失われた方の氏はそこで途絶えることを意味します。
明治の「家制度」ができるまでは、夫婦は必ずしも同氏ではありませんでした。「家制度」で、同じ家に属する者は皆「その家の氏を称する」と定められた結果、初めて、すべての日本人夫婦が同氏となりました。戦後になって「家制度」はなくなりましたが、現在の制度では、すべての日本人夫婦は同氏になるよう直接規定が置かれています。すべての夫婦は同氏にしなければならないという法律の規定のために、氏の継承の柔軟性が損なわれていると私たちは考えています。
希望する人には夫婦双方の氏の継承が可能になる制度ができることを願っています。
令和3年5月7日
実家の名前を継承したい姉妹の会
※ 現在では「氏」、「姓」、「名字」、「苗字」という言葉は、一般的には同じ意味で使われています。「家名」という言葉を同じ意味で使う人もいます。しかし、もともとこれらの言葉は、成り立ちも、その意味も、それぞれ異なっていたと言われています。本稿では「氏」という言葉を使用していますが、すべて現在使われている意味で用いています。
親や先祖から受け継いだ名字(氏)を大切に思う気持ちは自然なものです。例えば田舎の「伝統的な祭り」や「風習」が過疎化で途絶えようとしていて、それを残そう守ろうという動きは広く好意的に受け取られます。古いもの、例えば、文化財や親の形見の品を大切にすることも共感されます。それと同様に、男性であれ女性であれ、由緒があるか希少であるかに関わらず、継承して得た自分の氏に誇りを持ち、大切にしたいと思うことは、自然なことと思います。
しかし、今の日本の法律では、夫婦は婚姻の際、夫または妻の氏を選んで氏を統一しなくてはなりません。このことは、婚姻によって夫婦どちらかの氏の継承が途絶えてしまうことを意味します。婚姻で途絶えた氏をつないでいくために養子縁組制度を利用する人もいますが、そこには親権の喪失や相続など様々な課題があり、一般的とは言えないようです。このため、婚姻届を出せない状態が続いたり、あるいは婚姻届と引き換えに夫婦のどちらかが氏の継承を諦めざるを得なかったりと辛い思いを抱えるケースが増えています。
結婚で氏を手放すのはほとんどの場合、女性です。それは自らの氏が子に継承される可能性を手放すことでもあります。女の子しか生まれなかったから仕方がない・・・親は、そう思って氏の継承を諦めるかもしれません。しかし、女性たちの中には、誇りを持って積極的に氏を継承したいと願う人もいます。その根底にあるのは、親を思う子の気持ち、先祖とのつながりを大切に思う気持ちです。その思いに国会議員の皆様が応えてくださることを切望しています。
名前が原因で、婚姻届が出せず出産もできない長男長女カップルや、何人もの彼氏と別れざるを得なかった女性もいます。すべての夫婦は同姓にしなければならないという法律の規定が、結婚や出産のハードルとなっています。
女性たちの願いに応えて改姓した男性たちも苦しんでいます。
この問題に直面している人々を救済するための速やかな法整備を国会と政府に求めます。
令和3年4月8日
実家の名前を継承したい姉妹の会
連絡先:shimainokai@icloud.com
氏の継承問題は、現在の養子縁組制度を活用することで解決できるという意見があります。 しかし、私たちは、今の養子縁組制度で氏の継承問題を解決することはできないと考えます。
例えば、結婚によって妻が改姓し、生まれてくる子を妻の両親の養子にするという方法では以下のような問題点があります。
問題点1)養子となると親権者は養親になり、実親の親権からは離脱する。
このことは以下の理由で問題である。
a) 実親は親権を失う。
b) 養親が親権を、実親が事実上の監護権を持つ状態、すなわち離婚において親権と監護権が分離する場合と同様の状態が養親と実親の間に作出されることとなる。これは、親権者と事実上の監護者(実親)の意見が合わないとき子の立場が引き裂かれることになり、子の福祉の観点から望ましい状態ではない。
c) 養子縁組をした後に養親が亡くなった場合、実親に親権は戻らず、親権者が不在になるため、未成年後見人を立てなければならない。その際、実親が未成年後見人に選任されるとは限らず、たとえ実親が選任されたとしても、未成年後見人は親権者とは違い広範な制約がある。
Q:離婚の際に婚氏続称できるように、養子縁組後すぐに離縁すれば氏の継承ができるのでは?
A:離婚の際の婚氏続称には、婚姻期間の定めはない(民法第767条)が、養子縁組の離縁の場合は、縁組の日から7年を経過していないと離縁の際に称していた氏を称することができない。(民法第816条2項)
問題点2)養親の存在と協力が必要。
これは、妻に実家の氏を継承する意思があっても、何らかの理由で養親(ここでは妻の親)の協力が得られない場合には氏の継承ができないということである。
具体的には、以下のようなケースが想定される。
a) 妻の親が亡くなっていたり、養子縁組行為をする意思能力を欠いていたりする場合
b) 妻の親が養子縁組に対して消極的な場合
・問題点1)に述べたように,養子縁組をすると親権者は養親になる。そのため、たとえ氏の継承を望む気持ちが妻の親にあったとしても、養親になることを親がためらう場合がある。
・養子縁組は相続に影響を与える。そのため、たとえ氏の継承を望む気持ちが妻の親にあったとしても、他の相続人への配慮から、養子縁組を親がためらう場合がある。
Q:養子が相続放棄をすれば相続に影響ないのでは?
A:被相続人(ここでは養親)生存中の相続放棄はできない。 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けた時に限り、その効力を生ずる(民法第1043条)。このように遺留分の放棄は可能であるが、氏を継承するため養子縁組した場合に許可されるかどうかは不明である。また、たとえ遺留分を放棄したとしても、あくまで「遺留分だけの放棄」であり、養子が相続人であることに変わりはない。
問題点3)一時的に氏の継承が途絶えている期間が生じる。
婚姻時点で妻の親が存命であり、その協力が得られたとしても、婚姻届を提出する際に妻が改姓することで、婚姻届提出時から子が出生し養子縁組をするまでの期間、氏の継承が途絶える期間が生じる。
このことは以下の理由で問題である。
a) 養子縁組で氏を継承する前に妻の親が亡くなったり、養子縁組の意思能力を欠くに至ったりしてしまった場合、養子縁組制度によって氏の継承をすることができなくなる。
b) 婚姻時の改姓により、妻は氏の継承を一旦途絶えさせることになるが、これは自己の意に反することであるため、妻は精神的苦痛を感じる。 更に、妻は、氏の継承が途絶えている期間中ずっと精神的苦痛を感じ続けることとなる。
Q:「氏の継承が途絶えている期間」はどのくらいか?
A:第1子誕生後すぐにその子を養子縁組するとしても、事実婚等によって妻が出産まで実家の氏を使用し続けない限り、婚姻による妻の改姓から出産後の養子縁組による氏の継承まで最短でも1年ほどの期間を要する。
A:経済的事情や思うように妊娠できない等の理由により、数年以上かかる場合もある。
A:子の誕生後すぐではなく、子がある程度成長してから養子縁組する場合は、更に長期間を要する。
問題点4)養子縁組によって子一代に限り氏を継承することはできても、次世代以降も氏を継承することは難しい。
ケースとしては以下の場合が想定される。
妻(A)の子(B)を妻の親の養子にする。B が、その後婚姻によって改姓した場合、A の実家の氏の継承のためにB の子(C)を妻 A の両親の養子にしようとする。仮に平均初産年齢が現在と同様に30歳程度で推移していくとしても、C が生まれるときには、妻 A の両親は90歳を超えており、亡くなっていたり養子縁組の意思能力を欠いたりしている可能性もあり、養子縁組をすることができない場合もある。
そのため、A の実家の氏の継承は、A、B および C に継承の意思があったとしても養子縁組では解決しない。
問題点5)結婚での改姓により、妻自身は婚姻前の氏を失う。
このことは以下の理由で問題である。
a) 妻自らが実家の氏を継承したい気持ちがある場合は、改姓によって自らの氏を失うことは自己の意に反することであるため、妻は精神的苦痛を感じる。更に、妻は、婚姻後ずっと精神的苦痛を感じ続けることとなる。
b) 思うように妊娠できない等の理由で養子を迎える場合、養親となる妻自身が実家の氏を継承していなければ、養子に実家の氏を継いでもらうことはできない。
以上のような問題点があることから、私たちは、今の養子縁組制度で氏の継承問題を解決することはできないと考えます。
平成30年4月27日
実家の名前を継承したい姉妹の会