水準測量による誤差には器械誤差、人為的誤差、自然現象による誤差があります。
器械誤差には視準軸誤差、標尺の零点誤差、標尺の目盛誤差があります。
①視準軸誤差
視準軸誤差は、気泡管軸と視準軸が平行でないために、レベルを整準しても視準軸が水平にならないことによって生じる誤差です。水準誤差で最も大きな影響を与えるために十分注意する必要があります。レベルの視準軸を調整するときは次式によって調整していきます。
②標尺の零点誤差
標尺の零点誤差は、長期使用によって標尺の底部がすり減り、正しい零点を示さないことによって生じる誤差です。レベルの据え付け回数を偶数にすることでこの誤差を消去することができます。
③標尺の目盛誤差
標尺の目盛誤差は、標尺の目盛が正しくないことによって生じる誤差であり、鋼巻尺などと比較して補正を行います。
例題1:レベルの視準線を点検するために下図のような観測を行った。このとき、レベルの位置Bにおける標尺2の読取値をいくらにすればよいか。
まずは、レベルの視準線の調整量の式に値を代入していきます。
調整量の結果より、レベルBにおける水準器軸と視準軸が平行であるときの標尺2の読取値は次のようになります。
人為的誤差としては、視差、標尺の傾きによる誤差、標尺の継ぎ目不正による誤差、標尺の沈下による誤差があります。
①視差
視差は、接眼レンズと対物レンズの焦点が合っていないために生じる誤差です。十字線がはっきり見えるように接眼レンズを調整し、合焦つまみで対物レンズを焦準すれば誤差を消去することができます。
②標尺の傾きによる誤差
標尺の傾きによる誤差は、標尺を鉛直に立てていないことによって生じる誤差です。気泡管を有する標尺の場合は気泡管を見ながら鉛直に立てていきます。気泡管を有しない標尺の場合は標尺をウェービングさせることで誤差を少なくしていきます。
③標尺の継ぎ目不正による誤差
標尺の継ぎ目不正による誤差は、上に伸ばせる標尺を用いたときに目盛が合っていないために生じる誤差であり、きちんと確認することで誤差を防ぐことができます。
④標尺の沈下による誤差
標尺の沈下による誤差は、地盤沈下によって生じる誤差であり、地盤の硬いところを選べば誤差を未然に防ぐ事ができます。
例題2:長さ3 [m] の標尺が後方に30 [cm] 傾いた状態で値を読取ったところ2.000 [m] であった。このときの傾きによる誤差の影響はいくらか。
まずは、縮尺2.0 [m] のところの傾いた量を求めていきます。
自然現象による誤差としては、球差と気差があります。
①球差
球差は、地球の曲率によって生じる誤差です。A点とB点の高低差を測るとき、AB間の距離が長くなると地球の曲率が無視できなくなります。球差による補正量は次式によって表すことができ、
このとき、Lは球面上の距離 [m]、Rは地球の半径 [m] です。
②気差
大気の密度が高くなると、望遠鏡を通過する光線は下方に屈折します。このように大気によって生じる誤差が気差であり、次式によって表すことができます。
このとき、Kは光の屈折率であり、0.12〜0.14の値をとります。
また、両方の影響を受けるときの誤差を両差といい、次式によって表わされます。
水準測量の誤差の調整は測定方法によって異なってきます。
①一方が未知点で往復した場合
一方が既知点、他方が未知点で水準測量を往復したときは、往路と復路の測定結果の平均値が地盤高となります。
②既知点2点間を往復した場合
両方が既知点で水準測量を往復したときの調整量は、終点における誤差を始点からの距離に比例して分配していきます。式にすると次のようになります。
③水準環測量の場合
水準環測量は既知点Aから始まり、既知点Aで終わる測量であり、開始時と終了時の地盤高が一致しないときは誤差を距離の長さで比例配分していきます。また、このときの誤差を閉合誤差といいます。
④複数の既知点から1点の地盤高を求める場合
測定値の信頼度を数値で表したものを重さといい、それぞれの既知点からの距離の逆数が測定値の重さとなります。この測定値の重さを使って地盤高を式で表すと次のようになります。
⑤1つの既知点から複数のルートを通って1点の地盤高を求める場合
ルートの距離の逆数を測定値の重さとして、それぞれのルートから得られた地盤高の最確値を求めれば大丈夫です。式にすると次のようになります。
では、例題を2問解いていきます。
例題3:下図に示す水準測量を行い、表の結果を得た。この水準測量の許容誤差を5√S [mm] としたとき、再測すべき路線はどれか。ただし、Sは観測距離 [km] とする。
まずは、各環の閉合誤差と許容誤差を求めていきます。閉合誤差を計算するときに矢印と逆方向に進む場合は観測高低差の符号を逆にする必要があります。
計算の結果、環132のみが許容誤差内に収まっていることが分かりました。次に、環2364について考えていきます。
環2364を計算すると、許容誤差内に収まっています。従って、再測すべき路線は5となります。
例題4:下図のように水準点Eを新設するため、水準点A〜Dを既知点として水準測量を行った。このとき、水準点Eの最確値はいくらか。
では、直接水準点Eの標高を求めていきます。
まとめとして、水準測量の誤差には機械誤差、人為的誤差、自然現象による誤差があります。