誤差とは測定値と真値との差を意味し、生じる原因は過誤、定誤差、不定誤差に大別されます。
①過誤
過誤は測定者の不注意によって生じる誤差であり、目盛りの読み間違いや記帳ミスなどが挙げられます。十分に注意するかデータチェックを行うことで除去することが可能です。
②定誤差
定誤差は生じる原因が明らかな誤差で、計算または観測の工夫により除去することができます。定誤差は観測者の癖による個人誤差、光の屈折などが原因で生じる自然誤差に分けられます。
②不定誤差
不定誤差は過誤、定誤差を取り除いても生じる原因不明の誤差であり、誤差論に基づいて処理することで真値に最も近い値(最確値)が求められるようになります。
距離測量で生じる低誤差を補正する方法として、特性値補正、傾斜補正、温度補正、張力補正、たるみ補正、標高補正などがあります。
①特性値補正
正しい長さと使用巻尺の長さの差を特性値といい、次式によって補正することができます。
このとき、Ccは特性値補正値 [m]、δは特性値 [m]、Sは巻尺の長さ [m]、lは巻尺の読み [m] です。
②傾斜補正
高低差がある傾斜値で斜距離を測定したときの補正値は次式によって表わされます。
このとき、Ciは傾斜補正値 [m] です。
③温度補正
巻尺の検定温度とは異なる温度で距離測定したときは、次式によって補正を行う必要があります。
このとき、Ctは温度補正値 [m]、εは熱膨張係数 [/℃]、tは測定時の温度 [℃]、t0は検定時の温度 [℃] です。
④張力補正
鋼巻尺は検定時の張力で測定したときに正しい値を得ることができます。しかし、検定時の張力で測定し続けることは困難なので、次式によって補正します。検定時の張力よりも大きければ、巻尺は伸びるため、補正値は正となります。
このとき、Cpは張力補正値 [m]、Pは測定時の張力 [N]、検定時の張力 [N]、Aは巻尺の断面積 [mm2]、Eは巻尺の弾性係数 [N/mm2] です。
⑤たるみ補正
巻尺の自重によるたるみによって生じる誤差の補正値は次式によって求められます。たるみによる誤差は必ず真値より測定値が大きくなるため、補正値は常に負となります。
このとき、Csはたるみ補正値 [m]、ωは巻尺の単位長さあたりの重量 [N/m]、Pは測定時の張力 [N] です。
⑥標高補正
標高の高い場所で精密な距離測定を行うためには、得られた測定値を平均海面に換算しないといけません。
このとき、Chは標高補正値 [m]、Hは測定地点の平均標高 [m]、Rは地球の平均半径 [m] です。
では、例題を1問解いていきます。
例題1:50 [m] の鋼巻尺を使用し距離測定を行った。中間点を5 [m] として測定したところ49.8736 [m] の結果が得られた。また、測定時の温度は30.5 [℃]、張力は147.2 [N]、高低差は0.942 [m] であった。このときの測定結果を補正せよ。ただし、検定温度は10 [℃]、検定時の張力は98.1 [N]、巻尺の重量は0.49 [N/m]、断面積は0.00508 [cm2]、弾性係数は20.58 [N/cm2]、線膨張係数は1.2×10-5 [/℃] とする。
問題文より、傾斜補正、温度補正、張力補正、たるみ補正が必要であることが分かります。では、補正値を求めていきます。
これらの補正値を測定値に加減し、補正をかけていきます。
まとめとして、誤差には過誤、定誤差、不定誤差があり、定誤差は特性値補正、傾斜補正、温度補正、張力補正、たるみ補正、標高補正などで除去することができます。