材齢の若いコンクリートは多くの水酸化カルシウムが存在するためにpH12〜13の強アルカリ性を示すのですが、時間が経つと水酸化カルシウムと二酸化炭素が反応し、炭酸カルシウムに変化してしまうためにアルカリ性が弱くなります。この反応を中性化といいます。中性化が起きると鉄筋周りの不動態皮膜がなくなってしまうため、鉄筋の腐食が始まります。
中性化の進行速度は√t則で表すことができ、この式からある程度の予測をすることができます。
このとき、Cは中性化深さ [mm]、Aは中性化速度係数 [mm/√year]、tは経過時間 [year] です。
例えば、竣工後16年のコンクリートの中性化深さが8 [mm] だったときの9年後の中性化深さを予測していきます。
中性化深さの測定にはフェノールフタレイン溶液を使用します。フェノールフタレイン溶液をコンクリートに噴霧すると中性化していないコンクリートの表面は赤紫色に変色します。変色しない部分が中性化深さであり、変色した部分を中性化残りといいます。鉄筋の腐食開始時期の判定基準は、塩害を考慮しない場合は中性化残りが10 [mm] 以下になったとき、考慮する場合は20 [mm] 以下になったときとしています。
中性化を抑制する方法としては、水セメント比を小さくする、高炉セメントやフライアッシュセメントは使わずに普通ポルトランドセメントを使用する、鉄筋までのかぶり厚さを大きくする、空気中の二酸化炭素を減らすなどがあります。また、中性化を受ける鉄筋コンクリート構造物の状態は5つに分けられており、劣化状態と劣化の進行度の関係性は以下のように示されています。
中性化によるひび割れには表面含浸工法、表面被覆工法、ひび割れ注入工法、ひび割充填工法、断面修復工法が使用されます。中性化による鉄筋の腐食には電気防食工法が使用されます。これら工法の詳しい内容については8.1 塩害を参照して下さい。
既に中性化したコンクリートのアルカリ性を回復する方法としては再アルカリ化工法があります。再アルカリ化工法はコンクリート表面に陽極材と電解質溶液を設置し、陽極からコンクリート中の鉄筋(陰極)へ直流電流を流すことによってアルカリ性溶液をコンクリート中に浸透させ、コンクリート本来のpH値程度まで回復させる工法です。再アルカリ化を行うための電流量は通常1 [A/m2] 程度で、約1~2週間の通電を行うのが一般的です。
まとめとして、中性化は強アルカリ性のコンクリートが弱アルカリ性に変化する劣化現象のことであり、鉄筋を腐食させる要因となります。また、中性化の進行速度は√t則で表すことができます。中性化したコンクリートを回復する工法としては再アルカリ化工法がよく使われます。