アルカリ骨材反応はコンクリートに含まれるアルカリ性の水溶液と骨材が反応し、膨張する劣化現象です。アルカリ骨材反応はアルカリシリカ反応(ASR)、アルカリ炭酸塩反応に分けることができるのですが、日本においてはほとんどがASRです。また、アルカリ炭酸塩反応も実際には石灰石中の微晶質シリカに起因するASRであることが明らかになってきました。
コンクリートは本来、高いアルカリ性を有しています。そのアルカリ分がコンクリートに使用された反応性骨材中と化学反応を起こし、反応性骨材の周りにアルカリシリカゲルを生成します。このアルカリシリカゲルと水が反応すると膨張してしまいます。これがASRの劣化メカニズムとなります。ASRによるコンクリートの劣化は水とアルカリが供給される条件下で長期間にわたってゆっくりと進行が進んでいきます。そのため、水の供給が少ない場合はASRが起こりにくくなります。
ASRによって骨材が膨張すると、無筋コンクリートや鉄筋の少ないコンクリートの場合はコンクリート表面に亀甲状のひび割れが発生します。また、鉄筋コンクリートの場合は鉄筋による拘束を受けて、主鉄筋方向と平行にひび割れが発生します。
ASRを抑制する方法としては、コンクリート中のアルカリ総量を少なくする、高炉セメントやフライアッシュセメントを使用する、無害な骨材を使用するなどがあります。また、ASRを受ける鉄筋コンクリート構造物の状態は4つに分けられており、劣化状態と劣化の進行度の関係性は以下のように示されています。
ASRによる膨張を消失させる工法として内部圧入工法があります。ASRにより生成したアルカリシリカゲルの吸水膨張は、リチウムイオンの供給により抑制することができます。リチウムイオンはアルカリシリカゲル中のナトリウムイオンやカリウムイオンと置換して、吸水膨張性を示さないリチウムシリケートを生成することにより、ゲルを非膨張化することができます。このとき、リチウムイオンの供給方法としては表面被覆工法やひび割れ注入工法などもあるのですが、内部圧入工法が最も信頼性が高いとされています。
ASRによる膨張を物理的に抑制する工法としては接着工法や巻立て工法があります。これら工法はコンクリート表面に部材を追加することでASRによる膨張を物理的に拘束します。ただし、部材形状が複雑な場合や設置可能な範囲が限られている場合などのときは膨張拘束の効果を得ることができないため、十分に検討する必要があります。
まとめとして、アルカリと水の供給により骨材周りのアルカリシリカゲルが膨張する劣化現象をASRといいます。ASRによる膨張を消失させる工法として内部圧入工法、ASRによる膨張を物理的に抑制する工法として接着工法、巻立て工法があります。