化学的浸食は外部環境から供給される化学物質とコンクリートが化学反応を起こすことによって生じる劣化現象であり、一般的なものとして硫酸塩、硫酸による侵食が挙げられます。空気中の二酸化炭素などの炭酸による化学的侵食については中性化として取り扱います。
①硫酸塩による化学的侵食
石膏などに含まれる硫酸塩(硫酸カルシウムや硫酸マグネシウム)はアルミネート相との水和反応によってエトリンガイトを生成します。エトリンガイトは強度を発現し、緻密性を上げてくれるメリットがあるのですが、多すぎるとコンクリートが膨張してしまい、ひび割れを引き起こします。硫酸塩による化学的侵食が起きやすい場所としては、海岸付近や硫酸塩を多く含む土壌、工場などが挙げられます。
②硫酸による化学的侵食
硫酸による化学的侵食が起きやすい場所としては、下水や温泉地が挙げられます。硫酸はコンクリート中のセメント水和物と化学反応し、水に溶けにくいセメント水和物を可溶性物質に変化させ、コンクリートを分解していきます。劣化がひどくなると骨材の剥離・剥落も引き起こします。
下水には屎尿や洗剤などの硫酸が含まれているのですが、それらの濃度ではコンクリートは劣化しません。しかし、下水管内が嫌気環境(酸素がない状態)になると、嫌気性微生物が多く繁殖し、その嫌気性微生物の一種である硫酸還元細菌が下水中の硫酸から硫化水素を生成し始めます。硫化水素は腐った卵のような臭いであり、悪臭の原因となるためにできるだけ外部に漏れないような対策が取られます。その結果、硫化水素の濃度は上昇してしまい、今度はコンクリート表面にいる硫黄酸化細菌が硫化水素を硫酸に戻し始めます。このようにして、コンクリートの気相部が激しく劣化をしていきます。
化学的侵食を抑制するためには水セメント比を小さくする必要があります。また、化学的侵食を受ける鉄筋コンクリート構造物の状態は4つに分けられており、劣化状態と劣化の進行度の関係性は以下のように示されています。
まとめとして、化学的侵食は化学物質とコンクリートが化学反応を起こすことによって生じる劣化現象であり、代表的な化学物質としては硫酸塩や硫酸が挙げられます。硫酸による侵食はpHが原因、硫酸塩による侵食は硫酸濃度が原因といわれています。