鉄鋼の腐食は電気化学的な現象です。まずは、鉄板表面の鉄が鉄イオンとなって溶け出します。すると、鉄板内部を移動してきた電子が酸素と水に反応し水酸化物イオンを生成します。その水酸化物イオンと鉄イオンが反応し水酸化鉄(Ⅱ)が生成され、更に酸素と反応することで酸化鉄(Ⅲ)すなわち赤錆となります。
この腐食メカニズムを化学式で示すと次式のようになります。
鉄鋼の腐食を防止する方法としては、SMA材の使用、非金属による表面被覆工法、電気防食工法などがあります。鉄鋼の腐食は環境に支配されるものであるため、あらゆる環境で完全な耐食性を発揮する材料は存在しません。そのため、条件に応じて使い分ける必要があります。また、電気防食工法はコンクリート内部にある腐食した鉄鋼を補修するときにも使用される工法であるため、詳細な内容については8.1 塩害で述べるとします。
表面被覆工法に使われる非金属としてはスズ(Sn)、亜鉛(Zn)があります。スズは金属の中でも融点が低いために常温で加工しやすく、水や酸素、炭酸ガス、有機酸にほとんど侵されないので、表面被膜材としてよく使用されます。
亜鉛は常温では脆いのですが、100〜150℃で延性が増します。そこで、高熱に溶かした亜鉛の中に鉄鋼を入れると、鉄鋼の表面に亜鉛の層が覆います。この亜鉛層が大気に触れると鉄鋼表面に緻密な保護被膜が形成され、この保護被膜が腐食防止に有効となります。また、これを犠牲防食作用といいます。ちなみに、溶融亜鉛にどぶ浸けする方法を溶融亜鉛めっき工法といいます。
まとめとして、腐食は鉄が溶け出し、水や酸素との反応を経て赤錆を生成する現象のことです。腐食を防止する方法としては表面被覆工法があり、表面被覆工法に使用される非金属は一般的にスズや亜鉛が用いられます。