7.2 浅い基礎の支持力

下図のような基礎によって載荷された等分布荷重の一断面を考えます。地盤はせん断破壊を起こすような塑性状態にあり、基礎の底面と地盤の間には十分な摩擦があるとします。このような状態の場合、基礎底面化の領域Ⅰはランキン土圧の主働状態に相当し、基礎構造物と一体になって地盤に押し込まれていきます。領域Ⅱは側方および斜め方向に流動を起こす過渡域であり、放射状せん断帯と呼ばれます。領域Ⅲはランキン土圧の受働状態に相当し、水平方向の土圧が鉛直方向の土被り圧より大きいため、引張作用が起こり、領域Ⅲは地表面に盛り上がりをみせるようになります。

テルツァギによる浅い基礎の支持力公式は次のようになります。

このとき、qは全般せん断の極限支持力度 [N/m2]、q'は局部せん断の極限支持力度 [N/m2]、Bは基礎荷重底面の最小幅 [m]、Nc、Nr、Nqは全般せん断の支持力係数 [単位なし]、Nc'、Nr'、Nq'は局部せん断の支持力係数 [単位なし] です。

局部せん断は破壊点が不明確であり、応力-ひずみ曲線も複雑な挙動を示すために正確な計算をするのが困難です。そこで便宜上、内部摩擦角を低下させ、粘着力を2/3倍としています。また、支持力係数は下図によって求めることができます。

テルツァギの公式を使うためには、その地盤が全般せん断か局部せん断かを判断する必要があります。しかし、この判定は一般的に困難な場合が多いです。そこで、その不都合を避けるために国土交通省は、全般せん断と局部せん断の区別がないテルツァギの修正公式を定めています。

このとき、qaは長期許容支持力度 [N/m2]、qa'は短期許容支持力度 [N/m2]、γ1は基礎底面地盤の単位体積重量 [N/m3]、γ2は基礎底面より上方地盤の単位体積重量 [N/m3]、αとβは形状係数 [単位なし] です。

長期許容支持力とは上部構造物の自重や基礎などの長期にわたる荷重に対する許容支持力のことです。また、短期許容支持力とは長期荷重に地震荷重や風荷重などを加算した短期荷重に対する許容支持力のことです。支持力や形状係数は以下の図表によって求めることができます。

例題を3問解いていきます。

例題1:粘性土地盤から試料を採取し、一軸圧縮試験を行ったところ、一次圧縮強さqu=4.0 [N/cm2] を得た。この地盤にべた基礎を施工した場合の極限支持力をテルツァギの支持力の式から求めよ。

地盤が粘性土なので局部せん断の式を適応し、内部摩擦角は0°となります。その結果、粘着力は次式から求められます。粘着力の式の導出については5.2 せん断試験を参照して下さい。また、べた基礎であるために根入れ深さは0となり、局部せん断における極限支持力を計算すると次のようになります。

例題2:下図のような帯状基礎における長期許容支持力をテルツァギの修正公式から求めよ。ただし、地盤は砂地盤とし、内部摩擦角は36°とする。

連続基礎から形状係数はα=1.0、β=0.5、砂質土から粘着力は0となります。支持力係数は上の表を参考にして下さい。あとは得られた値を式に代入すれば長期許容支持力が求まります。

例題3:下図のように地下水位が基礎底面より上にある場合と下にある場合のγ1およびγ2を導け。

まずは、地下水位が基礎底面より上にある場合を求めていきます。

次に、地下水位が基礎底面より下にある場合を求めていきます。

最後に支持力公式に対する補正について述べていきます。ここでは、4つの補正方法について記しておきます。

①根入れ深さの影響に対する補正

基礎底面より上にある土のせん断抵抗について考え、根入れ深さが0〜B程度のフーチング基礎に対して次のような補正をマイヤーホフが行いました。

このとき、dcは地盤の粘着力に関する補正係数 [単位なし]、drは基礎荷重底面の幅に関する補正係数 [単位なし]、dqは基礎底面の根入れ深さに関する補正係数 [単位なし] です。

②傾斜荷重に対する補正

斜杭などの傾斜荷重に対する補正として、マイヤーホフは荷重の傾きをθとしたときの補正係数を求めました。また、新しい支持力公式ではこの傾斜荷重に対する補正係数が採用されています。

このとき、icは地盤の粘着力に関する補正係数 [単位なし]、irは基礎荷重底面の幅に関する補正係数 [単位なし]、iqは基礎底面の根入れ深さに関する補正係数 [単位なし] です。

新しい支持力公式における支持力係数は下の図表から求まります。

③偏心荷重に対する補正

基礎に偏心鉛直荷重が作用する場合について、マイヤーホフは載荷点が中心点となるような有効幅を考え、その有効幅を使えば支持力が得られることを示しました。

このとき、B'は有効幅 [m]、eは偏心量 [m]、qdeは偏心荷重を受けた基礎の支持力度 [N/m2]、qdは有効幅に対する基礎の支持力度 [N/m2] です。

④地震時における内部摩擦角の補正

地震時の内部摩擦角は次のように補正されます。

このとき、φeは内部摩擦角の補正値 [rad]、θ0は地震合成角 [rad]、khは水平震度 [単位なし]、kvは鉛直震度 [単位なし] です。

まとめとして、浅い基礎の支持力を求める式としては、テルツァギの公式、テルツァギの修正公式、テルツァギの修正公式に傾斜荷重を補正したものなどがあります。