7.3 深い基礎の支持力

深い基礎にはピアケーソンなどがあります。また、杭基礎は効果作用によって次の4種類に分けられます。

①上部構造からの荷重を深い地中の支持層に伝える支持杭

②粘土層や砂層が厚く支持層が深い場合に杭周辺の摩擦力や粘着力によって荷重を支える摩擦杭

③緩い地盤を締め固めることができる締固め杭

④杭の曲げ強さによって横荷重を支える水平支持杭

杭基礎が深い場合は、杭周面の摩擦力と杭先端の抵抗力を考える必要があり、支持力は次式で表わされます。

このとき、Qは杭の極限支持力 [N]、Qpは杭の先端支持力 [N]、Qfは杭周面の摩擦抵抗力 [N]、Apは杭先端の断面積 [m2]、Afは杭の周面積 [m2]、qeは杭先端地盤の極限支持力度 [N/m2]、fsは杭周面の摩擦応力 [N/m2] です。

マイヤーホフは理論的に支持力係数から支持力が求められる式を提案しました。しかし、支持力係数は内部摩擦角から推定、内部摩擦角はN値(地盤の硬さを表す値)から推定されており、マイヤーホフの支持力公式は多くの誤差を含んでいます。そのため日本では、このマイヤーホフの支持力公式を修正し、建築鋼杭基礎設計基準においてN値から直接支持力が求められる式を定めています。

このとき、Nは杭先端の設計用N値、Nsは各砂層の平均N値、Ncは各粘土層の平均N値、Qaは許容支持力 [N]、Fsは安全率です。

道路橋示方書では、支持杭の安全率を3.0、摩擦杭の安全率を4.0と設定しています。

一本の杭の支持力が隣接する杭の影響を受けない場合を単杭といい、上式によって極限支持力を求めることができます。しかし、杭が相互に影響し合うほどに接近して打設された場合は群杭として扱われ、全体の支持力は単杭の支持力に杭本数を掛けても求めることはできません。群杭の支持力算定式は様々なものがありますが、次式が最も分かりやすいです。ちなみに、杭の中心間隔が杭径の2.5倍以上あれば単杭として扱われます。

このとき、Aは群杭全体の断面積 [m2]、Lは群杭の周長 [m]、τfは杭に接する土のせん断強さ [N/m2] です。

杭が受ける上部構造からの荷重は杭先端の支持力と杭周面の摩擦力によって支えます。このような場合の摩擦力は杭を支持する方向に作用するので正の摩擦力と呼ばれます。一方、粘土層が圧密によって沈下を起こすと、杭は支持力で支えられているので沈下しませんが、杭を下方に押し下げようとする力が働きます。このような摩擦力を負の摩擦力と呼びます。負の摩擦力を考慮する場合の支持力は次式を満足する必要があります。

このとき、Qnfは負の摩擦抵抗力 [N] です。

安全率は通常1.2〜1.5に設定されます。

杭基礎は基本的に、上部構造からの荷重を支持層に伝えるために施工しますが、周辺状況によっては杭に水平荷重を作用させる場合があります。また、地震時には横揺れにより杭に水平荷重が作用することになります。杭が水平荷重を受けた場合の極限支持力を求めることは非常に難しいのですが、梁の微分方程式からたわみを求める方法を応用すれば求めることができます。ここでは、結果のみを示しておきます。

このとき、Haは許容水平支持力 [N]、δは許容水平変位 [m]、Khは水平地盤反力係数 [N/m3]、EIは杭の曲げ剛性 [N・m2]、Esは土の弾性係数 [N/m2] です。

では、例題を1問解いて終わりましょう。

例題:下図のような多層地盤に打設された打込み杭の極限支持力と許容支持力を鋼杭基礎設計基準に従って求めよ。また、上部構造からの荷重350 [kN] が作用したときの負の摩擦力に対する安全性を検討せよ。ただし、許容支持力の安全率は3.0、負の摩擦力の安全率は1.2とする。

まずは、極限支持力を計算するのに必要な諸量を求めていきます。

では、極限支持力と許容支持力を求めていきます。

次に、負の摩擦力に対する安全性を検討します。このとき、杭先端地盤のN値から杭先端の極限支持力を求めていきます。また、建築基礎構造設計指針のN値は、打込み杭のときは杭先端から下に1B、上に4B間の平均N値となります。場所打ち杭・埋込み杭におけるN値は、杭先端から下に1B、上に1B間の平均N値です。

計算の結果、安全であることが分かりました。ちなみに、内部摩擦角からN値を算定するときや杭先端の極限支持力を求めるときは以下の式がよく使用されます。

まとめとして、一般的に杭基礎が深い場合は、杭周面の摩擦抵抗力と杭先端の抵抗力で支持力が求められます。また、圧密によって沈下を起こすと、負の摩擦抵抗力が発生します。負の摩擦抵抗力はネガティブフリクションとも呼ばれたりします。