5.2 せん断試験

土のせん断強さを試験的に求める方法として、室内試験と現場試験があります。ここでは、そのうち代表的な4つの方法について解説していきます。

①直接せん断試験

直接せん断試験のうちで、最も一般的に行われているのが一面せん断試験です。一面せん断試験は、まず上下2段に分かれた構造のせん断箱に試料を詰めます。次に、せん断箱の上部から荷重をかけ、下箱だけにせん断力を加えます。すると、下箱が一定速度で移動し、上箱にセットした検力計でせん断力を測定することができます。試料は、一般的に直径6.0 [cm]、厚さ2.0 [cm] に成形したものを用います。試験結果は、下図に示すようにせん断応力と水平変位の図によって整理していきます。また、この図から最大せん断応力が求まります。

一面せん断試験は、欠点としてせん断ひずみとせん断応力がせん断上で均一にならない、せん断中に面積Aが減少するなどが挙げられます。しかし、試験が簡単であることや大型のせん断箱が容易に制作することが出来るなどメリットも多くあり、実用的な方法として多用されています。

②三軸圧縮試験

三軸圧縮試験は地盤中の応力を容易に再現することができ、試料の排水条件の調節や間隙水圧の測定など、直接せん断試験の欠点を除くことが可能なため、信頼度の高い試験法として広く用いられています。

試料は直径を3.0〜5.0 [cm]、高さを7.0〜10.0 [cm] に成形したものを使用し、ゴムスリーブで包み圧縮室にセットします。次に、圧縮室に加圧水を注入し、供試体に拘束圧σ3を加えます。その後、試料の上面から圧力σdを載荷し、試料を破壊させます。その破壊までの過程における軸ひずみε、間隙水圧u、体積変化⊿Vなどを測定していきます。このとき、加えられている圧力は、軸圧が最大主応力σ1(σ3d)、側圧が最小主応力σ3となっており、モールの破壊円を描くことができます。そのため、いくつかのモールの破壊円を描けばクーロンの破壊線が得られます。

クーロンの破壊線から主応力を求めると、次のようになります。また、次式をモール・クーロンの破壊線と呼びます。

③一軸圧縮試験

一軸圧縮試験は、三軸圧縮試験の拘束力σ3が0の場合に相当します。従って、破壊時のモールの応力円とクーロンの破壊線の関係は下図のように描かれます。

一軸圧縮試験における最大主応力σ1は、一次圧縮強さと定義され、土の強度を表す重要な定数です。また、モール・クーロンの破壊線から粘着力を求めると次のようになります。

このとき、quは一次圧縮強さ [kN/m2] です。

破壊面と最大主応力面のなす角は、三軸圧縮試験と同様にθ=π/4+φ/2なので、粘着力は角度を測定すれば上式より求めることができます。また、飽和した粘土の場合、間隙水が排出できない速度で圧縮するため、内部摩擦角が見かけ上0となります。そのため、粘着力は一次圧縮強さの半分となります。

一軸圧縮試験で乱さない試料と練り返した試料の両方を試験したとき、これらの最大せん断応力(せん断強さ)は著しく異なることが多いです。このとき、練り返した試料における最大せん断応力の減少割合を鋭敏比といい、次式で定義されます。

このとき、Srは鋭敏比 [単位なし]、qrは練り返した試料における最大せん断応力 [kN/m2] です。

④ベーン試験

ベーン試験は、極めて軟弱な粘土地盤で、乱さない試料が採取困難な場合に原位置で調査する試験です。ベーン試験は、下図に示すように、4枚の長方形の羽根を十字につけたロッドを地盤に差し込み、ロッドが回転したときの抵抗力を測定することで最大せん断応力(せん断強さ)を求めます。

せん断時の最大回転力は、せん断された円柱形の土の上下の端面と円柱の周囲に発生したせん断応力のモーメントの合計に等しくなります。従って、次式が成立します。また、その式を変形することで、最大せん断応力が求まります。

まとめとして、土のせん断強さを求める試験は、室内試験として直接せん断試験、三軸圧縮試験、一軸圧縮試験、現場試験としてベーン試験があります。精度としては、三軸圧縮試験、一軸圧縮試験、直接せん断試験の順ですが、簡便さとしては逆となります。