間隙が飽和された地盤のとき、水位差があれば水は間隙をぬって流れていきます。この流れを浸透流といい、図は次のようになります。
点aの水圧は点bの水圧よりγwhだけ大きいことがわかります。この圧力差を浸透圧といい、浸透圧が大きいほど水の流れようとするエネルギーは大きくなります。また、土試料の長さlが大きいほど水は流れにくくなります。この水が流れようとする勢いを表すものとして圧力勾配があります。圧力勾配は次式で表わすことができます。
このとき、ipは圧力勾配 [N/m3]、hは水位差 [m] です。
圧力勾配は浸透圧と土試料の長さの比で求められます。また、水の単位体積重量は定数なので、勾配は水位差と土試料の長さのみで表すことができます。
このとき、iは動水勾配 [単位なし] です。
フランスの技術者ヘンリー・ダルシーはこの動水勾配と水の流速に法則があることを発見しました。この法則をダルシーの法則といい、次式で表わされます。ただし、この法則は水の流れが層流のときにのみ適応できます。地下水は小さな間隙をぬって流れているため、流速は遅くなります。そのため、地下水の流れは層流であるといわれています。層流については、水理学 4.2 流れの分類を参照して下さい。
このとき、vは流速 [m/s]、kは透水係数 [m/s] です。
透水係数は土の透水性の大きさを表しており、水を通しにくい粘土では透水係数は小さく、水を通しやすい砂では大きくなります。また、土試料の断面積Aに流れる単位時間当たりの透水量は次のようになります。
このとき、qは単位時間当たりの透水量 [m3/s] です。
しかし、実際に土中で水が流れるのは間隙部分のみであり、間隙断面積に対する流速は次のようになります。
このとき、Avは間隙断面積 [m2]、vvは間隙の流速 [m/s] です。
間隙の流速は、全断面の流速より速くなります。しかし、間隙断面積を求めることはほとんど不可能であるため、実務上は全断面積Aが用いられます。では、1問例題を解いてみましょう。
例題:下図のような堤防の下に透水係数k=2.0×10-2 [cm/s]、厚さd=2.0 [m]の砂層がある。このとき、堤防長さ1m当たりの1日の透水量を求めよ。ただし、河川敷の洗掘地点から漏水地点までの距離は40.0 [m]、水位差は5.0 [m]とする。
一日あたりの透水量はダルシーの法則より求めることができます。
透水係数には理論式があり、式は次のように表わされます。この式は土粒子が等径の球体で構成していると仮定されているので注意して下さい。
このとき、Dsは土粒子の直径 [cm]、Cは定数 [単位なし] です。
実際の土は、等径球体の土粒子で構成されているわけではないですが、上式が近似的に成り立つとして以下の式が一般的に使われています。
一つ目は間隙比と透水係数の関係を表わしています。間隙比が大きければ水は通りやすく、透水係数は間隙比の2乗に比例することが経験的に知られています。二つ目は水の粘性係数と透水係数の関係を表しています。粘性係数が低いほど水は通りやすくなり、透水係数は粘性係数に反比例します。粘性係数は温度によって変化するので次の表を参考にして下さい。通常、透水係数は温度15℃のときの値が用いられます。
また、有効径D10を使って透水係数を求める方法もあります。この方法は土の粒径が大きいほど水が通りやすくなることを用いて求めます。式は次のようになります。
このとき、C1は実験定数 [(cm・s)-1] であり、C1≒100として用いられます。
この式は、透水係数を決定する要因が土の細粒分のみであり、粗粒土は透水係数に無関係であることを意味しています。
まとめとして、間隙が飽和された地盤を流れる水を浸透流といい、浸透流の流速はダルシーの法則から求めることができます。