不飽和地盤(不飽和水帯と毛管水帯)では、毛細管現象によって地下水を吸い上げたり、地上からの水を浸透させたりしてします。一般的に地上より地下の方が毛細作用は多いので、ここでも地下水の毛細管現象について考えていきます。毛細管現象の細かい話については水理学 1.3 水の毛細管現象を参照して下さい。まずは、規則正しい管の毛細管現象によって吸い上げられる水の高さを求めていきます。
このとき、hcは毛管上昇高さ [m]、Tは表面張力 [N/m] です。
理論値は上式で求められるのですが、実際の土中はガラス管のように規則正しくなく、大小の毛細管が複雑に入り混じっています。そこで、毛管上昇高さの近似式として次の式が与えられます。
このとき、D10は有効径 [cm]、Cは粒子の形と粒子表面の化学的汚れに関する実験定数 [cm2] であり、C=0.1〜0.5の値を取ると考えられています。
この式は実験的にある程度正しい値を示すことが認められており、砂のような粗粒土(砂質土や礫質土)における毛管上昇高さは小さくなることがわかります。また、規則正しい管におけるサクション(水を吸い上げる力)を求めます。このときは管全体の力の釣り合いではなく、メニスカス(水面上昇よって生じた曲面)に着目して式を立てる必要があります。メニスカスには、大気圧による力、表面張力と間隙水圧による力が働いています。
このとき、Sはサクション [N/m2]、p0は大気圧 [N/m2]、uwは間隙水圧 [N/m2] です。
サクションは毛管圧とも呼ばれ、大気圧と間隙水圧の差の絶対値によって求められます。また、管内では大気圧より間隙水圧のほうが大きいため負圧となり、その頂部で -γwhcの値をとります。図にすると次のような感じです。
サクションは砂のような土粒子間に見かけの粘着力(凝縮力)を与えます。乾燥した砂に水を与えると簡単に土塊をつくることができ、さらに水を増やし続けると飽和状態になり、サクションが失われ土塊は崩壊します。これらを利用し、サクションや毛管上昇高さからある程度の土の状態を把握することができます。
このとき、pFの値は土の状態を表しています。pFが0のとき土は飽和状態にあり、pFが7のとき土は乾燥状態にあります。例えば、サクションが98 [kN/m2] のとき、pFは次のようになります。
寒冷地では、地中の温度が氷点下以下になると土の間隙中にある水が凍り始めます。この土中内の氷の結晶をアイスレンズといいます。4℃の水が-10℃まで冷えアイスレンジができると、その体積は約9%も上昇します。その結果、地表面が隆起してしまう現象を凍上といいます。凍上は道路や滑走路を不均一に持ち上げ、大きな被害をもたらします。また、アイスレンジが融解したときに地盤が軟弱化し、支持力の低下や道路や滑走路の沈下を招く恐れもあります。これら凍上現象には毛細管現象が大きく関わっています。凍上の起こりやすい地盤を調べると、次のようなことが分かります。
①毛管上昇高さが大きく、かつ透水性がよい
②飽和水帯からの水の供給が十分である
③凍結時間が長い
このことから、毛細管現象のあまり起きない粗粒土では凍上現象も起きにくいことがわかります。また、粘土は毛管上昇高さは大きいのですが、透水性が悪く、凍結が長期間にわたって連続しないため凍上現象は起こりにくい傾向にあります。一方、シルトは毛管上昇高さが大きく透水性もよいため、シルト質の土でよく起こることが知られています。凍上現象を起こしやすい土の粒度範囲は次のように求められています。
凍上を防ぐ工法としては、以下の方法が用いられています。
①地下水面からの水の供給を遮断する
②地下水面を低下させる
③凍上性の土を掘削して、凍上の起こりにくい材料と置き換える
④断熱材を設け、土の温度低下を防ぐ
まとめとして、細粒土(シルトや粘土)では毛細管現象が起きやすく、ある程度の高さまで水は上昇します。このとき、水を吸い上げる力をサクションといい、サクションは大気圧と間隙水圧の差の絶対値で表わされます。寒冷地においては、凍上と呼ばれる現象が起きており、毛細管現象が一つの起因とされています。