地形測量は地形図を作成するための測量です。地形図は平面とみなせる区域に分割した土地について適切な縮尺で定められた記号を用いて図化したものです。地表面の高低や地物の位置などの情報が盛り込まれてるので、工事の計画や設計に活用されています。
地形図の縮尺は分数の大きさによって三種類に分類されます。また、国土地理院が発行している地形図には1/2500、1/5000、1/10000、1/25000、1/50000、1/200000、1/500000があり、1/2500と1/5000は国土基本図、1/10000と1/25000と1/50000は地形図、1/200000は地勢図、1/500000は地方図と呼ばれます。
地形図を作成するときの測量は、骨組測量と細部測量に分けられます。骨組測量には水平骨組測量と高低骨組測量があり、細部測量には地物の測量と地形の測量があります。
①骨組測量
a)水平骨組測量
水平骨組測量は基準点の位置を測定する作業であり、三角測量または多角測量(トラバース測量)が用いられます。また、細部測量のために増設した測点を図根点といい、図根点同士の距離は1/500で10[cm]、1/2500で5 [cm] が適当とされています。
b)高低骨組測量
高低骨組測量は基準点の高さを測定する作業です。水準点などの既知点から始まり、各基準点の高さを測定した後に、最初の既知点に戻る必要があります。このとき、誤差が生じた場合は、4.3 水準測量の誤差で述べた方法によって誤差の調整を行います。
②細部測量
a)地物の測量
地物の測量は基準点から近い数カ所を位置決定する場合は放射法が用いられます。基準点から遠く、直接距離測量が不便な場合は前方交会法が用いられます。
b)地形の測量
地形を測量するときは等高線を描く必要があります。等高線は地形の高低や傾斜の緩急を地図に表すために標高の等しい点を連ねた曲線をいいます。下図のように、ある地形を一定間隔の水平面で切り、これらの水平面と地表面が交わる線を水平面上に投影すれば得られます。
等高線を描く方法としては、直接測定法と間接測定法があります。直接測定法は基準点にレベルあるいは平板測量を据え付け、放射法によって高さを求める位置を定め、直接水準測量によって同じ高さの点を数点求めます。地形図上に表示したこれらの点を線で結べば等高線となります。
間接測定法は測量地域内に多くの点をとり、それらの標高を求め、地形図上で標高が同じと考えられるところを線で結んでいく方法です。間接測定法には、座標点法と横断点法があります。座標点法は下図のように、測量地域を長方形に分割して、長方形の頂点の標高を求め、これらの標高から等高線を結んでいく方法です。
横断点法は下図のように、一つの路線に沿って縦断測量を行い、その路線と直角方向に横断測量をします。そして、得られた標高から等高線を結んでいく方法です。
等高線は1 [mm] の間に3本以上入れると、地形図が非常に見づらくなります。そこで、縮尺を1/Sとしたときの等高線間隔は0.4S [mm] とするのが一般的となっています。また、等高線が多くなると数えるのが面倒になるので、5本目毎に太い実線で表し、高さを記入する必要があります。普通の実線で描かれた等高線を主曲線といい、太い実線で描かれた等高線を計曲線といいます。
さらに、傾斜が緩くなると等高線間隔が大きくなり、地形の起伏変化が読み取りにくくなるので、等高線と等高線の間に補助曲線を入れるときもあります。補助曲線が1/2間隔のときは間曲線、1/4間隔のときは助曲線と呼ばれます。縮尺による等高線間隔は下表が標準となっています。
等高線以外には、地性線、ケバ図法、段彩図法、点描図法があります。地性線は山の尾根と谷をそれぞれを連続的に結んだ線をいいます。 また、山の尾根を結んだ線を凸線、山の谷を結んだ線を凹線と呼んだりもします。凸線と凹線はいずれも等高線と直交に交わる性質を持っています。
等高線に直角に描かれた線をケバといい、傾斜が急なときはケバを太く短く描き、傾斜が緩やかなときはケバを細く長く描くことで、地形を長短と濃淡によって視覚的に立体感をもって捉えることができます。
段彩図法は高いところは濃い色で、低いところは淡い色で塗ることにより高低を表す方法です。深い海は青、浅い海は水色、平地は緑色、山岳は茶色や赤色を用いることで色相環による段彩(グラデーション)をつけます。また、点描図法は地形図上のある点の標高を記入することで、地形の起伏を表現する方法です。
ちなみに、地形図に使用される記号としては以下のものがあります。
まとめとして、地形測量は地形図を作成する作業であり、地形図の縮尺は分数の大きさによって大縮尺、中縮尺、小縮尺に分けられます。地形図を作成するためには骨組測量(水平骨組測量、高低骨組測量)と細部測量(地物の測量、地形の測量)を行う必要があります。また、地形を描く方法としては一般的に等高線が用いられます。等高線以外の方法としては、地性線、ケバ図法、段彩図法、点描図法があります。