球面上の地表面を平面の地形図に表現しようとすると、縮尺が小さくなるに従ってひずみや誤差が大きくなっていきます。そのため、距離、角度、面積などの利用目的に応じて地形図を作成しなければいけません。地表面を平面に表現する方法の一つとして、1点に光源を置いて地球表面を投影面に投影する図法を投影図法といいます。地球を球体に近似したときは4種類の投影図法があります。
①正射図法
正射図法は光源が無限に遠いところにあると考えます。半球を投影することができるため、地球中心から直角な方向の距離が正確に投影されます。
②外射図法
外射図法は光源が地球の外にあると考えます。地球の半径をrとすると、光源から投影面までの距離は1.65r、1.35r、1.71rがよく用いられます。外射図法は投影ひずみを平均的に分配することができ、半球よりも広い領域の投影が可能です。
③平射図法
平射図法はステレオ図法とも呼ばれ、光源が地表面にあると考えます。この図法は球面上での角度を正確に投影されるため、投影された地形図を用いて角測定を正しく行うことができます。
④心射図法
心射図法は光源が地球の中心にあると考えます。投影面中心から離れるに従って誤差が大きくなるため、地球の局部を表現するときに用いられます。
その他の図法としては、非投射図法と擬似図法があります。非投射図法は投影図法に補正を加え、目的の性質が得られるように改良したものです。有名なものとしてはメルカトル図法と正距方位図法があります。
また、光源の位置を変えたり、補正を加えるだけでは満足のいく性質が得られない場合もあります。そのような場合には、投影の原理から外れて大きく変形させた図法を用います。この図法を擬似図法といいます。有名なものとしてはモルワイデ図法があります。
モルワイデ図法は面積が正しくなるように作られています。そのため、分布図として利用されています。また、緯線が平行直線であり、同じ緯度である場所が一目で分かります。モルワイデ図法の欠点は、等積になるように緯線の間隔を調整しているため、距離と角度が正しくありません。
メルカトル図法は角度と地形が正しくなるように作られています。角度と形が正しいため、傾斜を考える際に利用しやすいです。また、緯線と経線が並行直進であり、同緯度および同経度の関係がすぐに分かります。そのため、船の舵取が容易であり、航海図として広く利用されています。メルカトル図法の欠点は、緯度によって拡大率が違ってくるため、大きさがバラバラであり、面積と距離が正しくありません。
正距方位図法は中心点から見たときの距離と方位が正しくなるように作られています。また、中心点から目的地までを結んだ線は最短距離となるため、航空図として広く利用されています。正距方位図法の欠点は、面積と角度、中心点以外から目的地までの距離と方位が正しくありません。
国土地理院が発行している地図はガウス-クリューゲル図法に従って作成されています。この図法は下図のように、地軸に対して直角に円筒をかぶせ、地球の中心から地表面を円筒面に投影した図法です。メルカトル図法が地球を球体と仮定しているのに対し、ガウス・クリューゲル図法は地球を回転楕円体と仮定しています。そのため、メルカトル図法より高い精度で投影することが可能となります。
縮尺が1/2500や1/5000の中縮尺の地形図では、平面直交座標系(19座標系)が用いられています。平面直角座標系は、測量法に基づいて横メルカトル図法(厳密にはガウス-クリューゲル図法)による投影図法を採用した座標系をいいます。比較的狭い範囲を扱う場合に適した座標系であり、系番号により対象地域が異なってきます。例えば、東京都であれば平面直交座標系9系を使用します。
また、原点から東西に離れるに従って平面距離が増大していくため、投影距離の誤差を相対的に1/10000以内に収めるよう座標原点に縮尺係数0.9999を与え、かつ、座標原点より東西130km以内を適用範囲とした19の座標系を設けています。
また、縮尺が1/25000や1/50000の小縮尺の地形図では、UTM座標系が用いられます。UTM座標系は、世界均質に精度を保つために開発されたユニバーサル横メルカトル図法(厳密にはガウス-クリューゲル図法)による投影図法を採用した座標系をいいます。ユニバーサル横メルカトル図法は、投影誤差を小さくするために地球を6度毎に合計60個(6度×60=360度)のゾーンに分割しており、それぞれのゾーンの中央経線と赤道の交点が原点となります。
まとめとして、投影図法には正射図法、外射図法、平射図法、心射図法があり、投影図法に補正を加えたものを非投射図法、擬似図法といいます。国土地理院が発行している地図は非投射図法のガウス-クリューゲル図法により投影されており、中縮尺の地形図には平面直交座標系、小縮尺の地形図にはUTM座標系が採用されています。