フレッシュコンクリートは凝結前のコンクリートのことであり、その性質はワーカビリティ、空気量、材料分離で表すことができます。

①ワーカビリティ

ワーカビリティは今まで作業のしやすさと書いてきましたが、実は様々な意味を含んでいます。土木学会の標準示方書では、『材料分離を生じることなく運搬、打ち込み、締固め、仕上げなどの作業が容易にできる程度を表す性質』と紹介しており、その内容にはコンシステンシー、プラスティシティー、フィニッシャビリティーなどの性質が含まれています。

コンシステンシーは水量によって左右される性質であり、物体の硬さ、軟らかさ、脆さ、流動性などの総称を示しています。プラスティシティーは型枠を取ったときのフレッシュコンクリートの材料分離や変形のしにくさを表した性質です。また、フィニッシャビリティーは仕上げの容易さを表す性質です。

以上のことから分かるように、ワーカビリティの中にはコンシステンシーとプラスティシティーという相反するような性質を含んでおり、その意味するところは複雑かつ曖昧といえます。これは、フレッシュコンクリートに要求される性質が複雑多岐にわたるからと言い換えることができます。

ワーカビリティを測定する方法としてはスランプ試験とスランプスロー試験があります。スランプ試験は古くから伝わる方法であり、ワーカビリティの中のコンシステンシーを測定することができます。まず、スランプコーンに3層になるように詰め、その各層を突き棒で25回一様に突きます。その後、スランプコーンを引き上げ、フレッシュコンクリートが下がる量を計測します。その計測した値がスランプ値です。

スランプスロー試験はフレッシュコンクリートのやわらかさの程度を測定する試験で、スランプコーンを引き上げた後の直径を計測します。スランプ値が21 [cm] を超える場合はスランプフロー試験の方がワーカビリティの測定に適しています。直径を計測するときは広がりが最大と思われる部分を測ることに注意して下さい。

②空気量

4.2 混和剤でも述べましたが、コンクリート内部にはエントラップドエア（巻き込み空気）とエントレインドエア（連行空気）と呼ばれる気泡が入っています。エントラップドエアは粗大でいびつな形状であり、あまりよくない気泡とされています。一方、エントレインドエアは独立した微細できれいな球状をしており、コンクリートのワーカビリティを向上することができます。この二つを合わせたものが空気量であり、空気室圧力試験によって求められます。

空気室圧力試験は容器に3層になるように詰め、その各層を突き棒で25回一様に突きます。また、コンクリート表面の空気が見えなくなるように、各層ごとに容器の側面を木づちで10〜15回ほど叩きます。そして、蓋を取り付け、空気室の圧力を高めていきます。最後に、作動弁を開き、そのときの圧力を計測します。その計測した値がコンクリートの見かけの空気量となります。普通コンクリート以外はその見かけの空気量からさらに骨材修正係数を差し引く必要があります。

③材料分離

材料分離はセメント、骨材、混和材料が均等に分布しないために品質が低下する現象であり、単位水量が減少することによりセメントの粘着性が不足し、分離が起こります。また、粗骨材の最大寸法が大きいほど材料分離が著しく、粗骨材の分離はジャンカ（豆板）と呼ばれる施工不良を引き起こします。ジャンカの見た目はあばたや雷おこしによく例えられます。

さらに、セメントや骨材が沈降することによって練混ぜ水が上方に集まる現象をブリーディングといい、ブリーディングが起こるとコンクリート表面に薄い膜（レイタンス）が生じます。レイタンスの上にコンクリートを打設しようとすると付着力が小さくなってしまい、ひび割れの原因となります。また、鉄筋コンクリートでブリーディング生じると、鉄筋は同じ位置にいるのにコンクリートが沈下するため、コンクリート表面に沈下ひび割れを起こします。

ちなみに、凝結が進んでいる状態のコンクリートの上に新たなコンクリートを打ち込む行為を打ち重ねといい、硬化したコンクリートの上に新たなコンクリートを打ち込む行為を打ち継ぎといいます。打ち重ねや打ち継ぎをする場合は境界面が一体化しない現象（コールドジョイント）が発生します。

まとめとして、フレッシュコンクリートはワーカビリティ、空気量、材料分離で表すことができます。ワーカビリティは作業のしやすさを表す性質であり、コンシステンシー、プラスティシティー、フィニッシャビリティーに分けられます。また、ワーカビリティはスランプ試験、スランプフロー試験によって測定することができます。空気量はエントラップドエアとエントレインドエアに分けることができ、空気室圧力試験によって求められます。材料分離は材料が不均一なために品質が低下する現象であり、ジャンカやブリーディング、沈下ひび割れを引き起こします。