コンクリートの性質は強度と体積変化から表すことができます。
①強度
コンクリートの強度には圧縮強度、引張強度、曲げ強度、付着強度などがあるのですが、コンクリートは主に圧縮応力に抵抗する材料として使用されるのがほとんどなので、コンクリートの強度といえば圧縮強度がほとんどです。また、圧縮強度を1とすると、引張強度は約1/10〜1/13、曲げ強度は約1/5〜1/7となります。
コンクリートの中で引張強度が最も低く、鉄筋コンクリートの設計計算でもコンクリートの引張強度を無視して、鉄筋のみで受け持つようにしています。ちなみに、引張強度は円柱供試体の割裂引張強度試験から求めることができ、次式によって表わされます。
このとき、ftは引張強度 [N/m2]、Pは最大荷重 [N]、dは円柱供試体の直径 [m]、lは円柱供試体の長さ [m] です。
引張試験には直接引張試験もあり、直接的に引張強度を求めることができるのですが、最大荷重の近傍で供試体が瞬間的に破断してしまうためにデータが取りにくい問題点があります。
曲げ強度は角柱供試体の曲げ強度試験から求めることができ、次式によって表わされます。
このとき、fbは曲げ強度 [N/m2]、Mは最大曲げモーメント [N]、bは角柱供試体の幅 [m]、hは角柱供試体の高さ [m] です。
付着強度はコンクリートに埋め込んだ鉄筋の引抜力を付着面積で割った値であり、異形鉄筋は丸鋼より大きくなります。
コンクリートの圧縮強度は直径の2倍の高さを持つ円柱供試体の圧縮強度試験から求めることができ、円柱供試体の直径は100 [mm]、125 [mm]、150 [mm] が標準となっています。
コンクリートの圧縮強度は養生と重要な関係があります。養生とは適したな温度と湿度を与え、有害な外力作用を防ぐことであり、養生温度が高いほど圧縮応力の発現が速くなります。また、養生温度が4℃を下回ると強度発現が著しく小さくなります。逆に養生温度が高すぎると長期強度が低くなります。一般に85℃を上回ると有害であるとされています。
コンクリートの応力-ひずみ曲線は下図のようになります。また、コンクリートの弾性係数は圧縮強度の1/3と原点を結ぶ直線の傾きであり、20〜40 [kN/mm2] 程度の値となります。
その他の強度としてはせん断強度や支圧強度があり、次式によって表わされます。
このとき、fsはせん断強度 [N/m2]、fnは支圧強度 [N/m2]、kはコンクリートの種類による係数 [単位なし]、nは係数 [単位なし]、Aは供試体の断面積 [m2]、Aaは支圧を受ける面積 [m2]、fcは圧縮強度 [N/m2] です。
②体積変化
コンクリートの体積変化としては乾燥収縮、自己収縮、プラスティック収縮、温度収縮、クリープ現象などがあります。
乾燥収縮は硬化したコンクリートが乾燥によって内部の水分が蒸発して徐々に収縮する現象であり、最終的に乾燥ひび割れに繋がります。この収縮は工事が終了してから数年後まで続きます。
自己収縮はコンクリートが硬化する前(凝結開始後)にセメントの水和反応によって体積変化する現象であり、コンクリートの外部へ水が蒸発しない場合でも発生します。また、セメントが多いほど水和反応が大きくなるため、自己収縮も大きくなります。一般的に普通コンクリートにおける自己収縮は小さく、無視されることがほとんどです。しかし、水和反応によって起きる温度変化は温度ひび割れを発生させる原因となります。
プラスティック収縮はコンクリートの硬化直後に直射日光や乾燥にさらされると表面が急激に乾燥した結果、コンクリート表面が収縮してこわばる現象をいいます。また、このときに生じるひび割れをプラスティック収縮ひび割れ(初期乾燥ひび割れ)といい、ひび割れが細かく、浅いのが特徴です。
温度収縮はコンクリートの温度が低下するときに収縮する現象であり、温度変化が大きいと温度ひび割れを引き起こします。ちなみに、温度を1℃上げたときの伸びと元の長さの比を線膨張係数といい、コンクリートや鉄筋の線膨張係数は10×10-6程度となります。
コンクリートに持続荷重が作用すると、時間の経過とともにひずみが増大します。この現象をクリープ現象といい、増大したひずみをクリープひずみといいます。クリープひずみは載荷応力にほぼ比例するのですが、最終的には破壊に至ります。これをクリープ破壊といい、クリープ破壊の起こるときの載荷応力をクリープ限度といいます。コンクリートのクリープ限度は、コンクリート強度のおよそ75〜85%程度となります。
まとめとして、コンクリートの性質には強度と体積変化があります。コンクリートの強度としては圧縮強度、引張強度、曲げ強度、付着強度、せん断強度、支圧強度などが挙げられます。また、体積変化としては乾燥収縮、自己収縮、プラスティック収縮、温度収縮、クリープ現象などが挙げられます。