土が外力を受けると、土中にせん断応力が発生します。そのせん断応力が大きくなると土中のある面に沿ってすべりが生じ、すべり破壊が起こります。このすべり破壊をせん断破壊といい、この破壊する面をすべり面、せん断応力に抵抗できる最大の強さをせん断強さといいます。せん断破壊は、すべり面が明らかでない場合もありますが、一般的に下図のように破壊が起こります。
せん断応力は4つのせん断試験によって求めることが出来るのですが、ここでは最も簡単な一面せん断試験から求める方法を記しておきます。詳細については5.2 せん断試験を参照して下さい。一面せん断試験は下図のように試験する方法であり、このときの垂直応力σとせん断応力τは次式で求められます。
このとき、σは垂直応力 [kN/m2]、Pは垂直力 [kN]、τはせん断応力 [kN/m2]、Tはせん断力 [kN] です。
数段階の垂直力Pについて試験を実施し、そのときの最大せん断応力(せん断強さ)を求め、グラフにプロットすると下図のようになります。
図から分かるように、垂直応力と最大せん断応力の関係は一つの近似直線で示されます。この直線はどのくらいで土が破壊するかを描いており、式にすると次のようになります。また、この式をクーロンの破壊線といいます。
このとき、cは粘着力 [kN/m^2]、φは内部摩擦角 [単位なし] です。
右辺の第一項は粘着力といいます。粘着力は土粒子のまわりの吸着水を通じて発揮される土粒子間の結合力に基づくもので、微細な粒子が多い土ほど大きくなります。また、第二項にあるφは摩擦の性質を表していることから内部摩擦角と呼ばれています。一般に、この粘着力と内部摩擦角を合わせて土の強度定数と呼んでいます。クーロンの破壊線はモールの応力円にも関係があります。まずは、下図を見て下さい。
Ⅰの状態のときはモールの応力円がクーロンの破壊線に接していないため、土のせん断応力は破壊にまで至りません。Ⅱの状態のときはモールの応力円がクーロンの破壊線にちょうど接しており、このときの土は破壊時の状態を表わすことになります。また、このときのモ-ルの応力円をモ-ルの破壊円といいます。Ⅲの状態のときは、モールの応力円がクーロンの破壊線を超えており、せん断強さより大きいせん断応力が土の内部に生じていることになるため、現実では不可能な現象といえます。
さらに、モールの破壊円からクーロンの破壊線が求まれば、土がせん断破壊するときの角度も求まります。せん断破壊するときの角度を式で表すと次のようになります。最大せん断応力はθ=π/4または45°のときに発生するのですが、内部摩擦角の影響があるために最大せん断応力面ではせん断破壊は起こりません。
余談として、シャルル・ド・クーロンは18世紀のフランスの物理学者、土木技術者であり、電磁気学の基本式の一つであるクーロンの法則やクーロンの摩擦法則を発見したことで有名です。また、電荷の単位であるクーロンも彼の名にちなんでいます。クーロンの摩擦の法則については1.6 摩擦力で述べていますので、暇なときに見て下さい。
まとめとして、土は外力を受けると内部にせん断応力が発生し、そのせん断応力が大きくなるとせん断破壊を起こす可能性が出てきます。そのため、せん断試験により測定した最大せん断応力(せん断強さ)と垂直応力を図にプロットし、クーロンの破壊線を描くことによりどの程度でせん断破壊するかを確認する必要があります。また、モールの破壊円も求まれば、土がせん断破壊を起こすときの角度を算定できるようになります。