六斎念仏では、太鼓・鉦・笛を中心とする編成によって音楽が構成されています。それぞれの楽器は単なる伴奏ではなく、演目ごとに役割を担い、踊りと密接に結びついています。
通称「ドンドン」と呼ばれている、取手の付いた小型の太鼓です。打面には「右三つ巴」が描かれています。四ツ太鼓では四柄を枠に据えて打ち分け、演目の基礎となる拍子を形づくります。軽快で歯切れのよい音色を持ち、間や緊張感を生み出す重要な役割を担っています。六斎念仏の基本的な太鼓芸を支える楽器です。
焼香太鼓は、巴太鼓と同型ながらやや大きく、金銀の装飾や菊紋を施した格式の高い太鼓です。明治三十年(1897)に極楽院より下賜されたと伝えられています。
かつては「焼香太鼓」という演目もあったといわれますが、現在は伝承されていません。主に発願念仏・結願念仏の際の「打ち出し」や「阿弥陀打ち」に用いられ、儀礼的な場面を象徴する楽器となっています。
豆太鼓は、六斎念仏独特の構造を持つ小型太鼓です。胴の内部に「シラバリ」と呼ばれる皮が張られており、胴鳴りを抑えることで乾いた甲高い音を生み出します。
軽快な打ち分けに適しており、獅子舞、祇園囃子を除くほとんどの演目で用いられます。都市的で洗練された印象を与える音色が特徴です。
六斎念仏では、二つの鉦を一人で擦る「二丁吊り」を用います。すべての演目で使用されます。二股のスリを用いて二つの鉦を同時に打ち、華やかな音色を響かせます。三つ耳の鉦で、囃子鉦よりもやや小ぶりです。
祇園囃子で用いられる五面の鉦です。底側の凹面を打ちます。底を打った時の音が「コン」、上下の縁を打った時の音が「チキチン」です。
千本六斎の囃子鉦は直径21cm、重量3.7kgあります。また、囃子鉦の台は芸能系六斎で唯一の舞台道具です。笠木の上には名入りの提灯が掲げられています。
バチには、鯨鬚の柄に鹿角のカシラを用いた「スリ」を用います。千本六斎会には安政年間の鉦も残されており、代々その音色を継承してきました。
京都の芸能六斎が、各地の六斎念仏と異なる点の一つは「笛」を用いることです。笛の音が加わったのは、風流や色物など、本来の念仏とは異なる芸能的要素が取り入れられた結果と考えられています。
千本六斎の笛は六孔の囃子笛で、一般的な篠笛と比べると胴周りが大きく、芯の太い落ち着いた音色が特徴です。他会の笛も同寸法であることが知られており、共通のルーツを持つと考えられます。
祇園囃子で用いられる「締め太鼓」です。千本六斎会が祇園祭との縁を失った昭和30年頃から使用されなくなり、祇園囃子における太鼓打ちの伝承は途絶えました。
しかし、平成10年(1998)に修理を行い、流しの太鼓踊り用として復活させました。
大太鼓は、六斎念仏の中で最も低音を担う太鼓です。六斎念仏特有の持ち手が付けられており、演技と一体となって扱われます。比較的高い音域の楽器が多い中で、迫力ある低音を響かせる存在として、演出上の聴かせどころを担います。演目の節目で打つ「触れ太鼓」にも用いられるほか、四ツ太鼓、願人坊、そして獅子舞の「地廻り」などで演奏されます。