論文(コメント付)

複素超平面配置の補集合は極小セル分割(セルの枚数=Betti数となるセル分割)を持つことが知られており、複素化された実超平面配置の場合は、吉永先生によるLefschetz超平面切断定理を応用する方法、Salvetti-Settepanellaによる離散Morseを用いて具体的なセルの接着写像が知られています。今回、直線配置の場合についてLefschetzの定理の方法を精密化することで、微分同相型を記述するハンドル分解を得ることができました。また、ハンドル分解を表すKirby図式をA'Campoのdivideを一般化した「カスプ付きdivide」を定義し、それを用いて記述しました。

カスプ付きdivideを発見したのは、確かdivideについてのセミナーがあった直後の先生とのセミナーで、「こうすればdivideっぽく見えるけどどうしてもひねらせる必要が...」「ではカスプをつけて向きを入れ替えてしまえば良いのでは?」というやりとりがあったのをよく覚えています。

超平面配置の補集合の局所系係数コホモロジーはさまざまな文脈で調べられており、あるgenericな条件のもとでの複素係数のコホモロジーは中間次元だけ値が残り、他はすべて0になる(消滅定理)が知られています。この論文では、Cohen-Dimca-Orlikによる消滅定理の条件のもと、複素化実超平面配置の整係数の局所系係数コホモロジーの計算をしました。複素係数のように0となるではなく、Z/2Zのトーションがたくさん出てくるという結果になりました。計算は、吉永先生が導入したchamberの隣接関係を使ってコホモロジーの計算を行う方法に基づいています。

M2の秋頃は局所系係数ホモロジーの計算をずっとして過ごしていました。プレプリントを出した直後、関連する論文がいくつかarXivに上がってドキドキした記憶があります。

二重被覆空間のBetti数と2-トーションの個数についての関係を示しました。超平面配置の補集合の場合、これはMilnorファイバーの(-1)-モノドロミー固有空間に対するPapadima-Suciu予想の精密化にあたります。

アフィン平面代数曲線の補集合は実4次元多様体になります。そのハンドル分解とKirby図式を与える方法を、ブレイドモノドロミーを精密化することで与えました。

修論(1.の内容)が一区切りついた段階で次は何しようかと考えたときに、代数曲線補集合の基本群の勉強をしてLibgoberの結果を知り、「このアイデアはKirby図式まで書けるのでは?」と思ったのがきっかけでした。1.の時ほどexplicitに接着写像が記述できず苦労しましたが、なんとか(想像していた通りに)できました。

カスプ付きディバイドで表すことのできる絡み目の特徴づけを与えました。これによって特にstrongly invertible knotは全てカスプ付きディバイドの絡み目として書けることが従います。(個人的に)本質的な気づきである、signed divideとの関連は2021年の2月には気づいていた。。。

純粋なカンドルの論文。内部自己同型が可換な等質カンドルの特徴づけを行いました。特に、それらは全て自明カンドルのアーベル拡大になります。きっかけは2021年11月の田丸先生の集中講義でした。その講義でこの論文の内容が紹介されていて、一緒に聴講していた同期の斎藤さんと「一般化できるのでは?」という話になってできました。M2の冬は院生室で斎藤さんとずっとSection 4の内容について議論していました。

3次元の超平面配置の(closedな)Milnorファイバーの境界として現れる3次元多様体を調べました.これは孤立特異点の特異点リンクに対応するものです.ジェネリックな配置に対して,Milnorファイバーの境界の1次ホモロジー群を計算した,というのが主結果で,これはSuciuが予想した式そのものになっています.