大般若会とは

大般若経

 『大般若経』、正式には「大般若波羅蜜多経」は西遊記でおなじみの三蔵法師玄奘和尚が天竺より持ち帰り、弟子とともにその生涯を掛けて翻訳した経典で、字数500万字、600巻という長大なものです。「般若|はんにゃ」とは古代インドのサンスクリット語の音写で「物事を真理を見定める智慧」という意味があり、「波羅蜜多|はらみた」とは「完全」とか「最高」という意味があり、双方合わせて「最高の覚りの智慧の経典を意味します。

 内容は「空」に代表される大乗仏教の智慧を説いたもので、それはあえて誤解を恐れず簡潔に説明するならば「世の中の物事は全て諸行無常で常に移り変わり、波や泡のように現れては消えるもので、それは何一つ例外がなく「儚く」「虚空」に等しいものである。であるから物事全ては本来「平等」「清淨」「無辺(隔てるものがない)」である」ということです。

 一見「空」と言われると虚しいもの、儚いもの、無意味なものを想像しがちですが、我々大乗仏教の立場では「だからこそ自由自在で、かつ平等で、苦の原因である我執や偏見の心を離れた清淨な境地である」と捉え、「仏の慈悲も一切に差別なく、そして平等にすべてのものに行き渡るので「虚空」と同質のものである」と説くのです。また「空」であるからこそ「その範囲は際限がなく、無限の広がりと、無限の寿命を持ち、仏の慈悲と智慧もまさにそのように広大で無量無限のものである」と説きます。

大般若会

 大般若会の歴史は古く、古く奈良時代に三論宗、大安寺の道慈律師が朝廷に大般若の転読を諸国の国分寺における年中行事に加えることを願い出たといわれ、結果大般若経典が全国各地に書写され、転読会(大般若会)が勤修されるきっかけを作ったとされております。

 その後は貴族社会の中で、様々な願い事を叶える為の法会として、多く営まれ、平家物語でも大納言成親卿が左大将の就任を願って岩清水八幡宮で大般若会を七日間行ったといった記載があるとおり、願掛けの法会として広く親しまれ、中世以降は地方でも疫病退散、五穀豊穣などの法要として親しまれてきました。

 大般若経600巻という三蔵法師が持ち帰った膨大な経典に強いご利益を期待して行われてきた側面のある法要ですが、同時にこの経典が説く「空」思想における仏の無限の慈悲と智慧を授かること、様々な人々の祈りを集め、そして一切の衆生が「平等に利益」することにこの法要の真意があるように思えます。

 ということは祈る側も自分のご利益のみならず、他の方々へのご利益も一心に祈り、総じて全ての衆生の利益を祈ることが何よりもこの法要においては重要なのでしょう。ですので散華写経に応募頂き、ライブ放送をご覧の皆様方は、どうぞ自分の祈りのみならず、他の方々の祈りにも想いを馳せ、皆の祈りが叶って欲しいと一心にお祈り頂ければと存じます。