本サイトでは、神経障害への対応として熱がない場合はまず温め、痛みが強くなる場合は温めるのをやめる、という案を提示しています。しかし、温めるのがよいのか、冷やすのがよいのか、緊縛界隈でも意見が割れるところです。
医学的には「急性期は冷やし、慢性期は温める」というのが一般的になります。
急性期とは痛みが出てきた時期のことで、このときケガをした場所に負荷がかかり、炎症反応を起こしています。つまり、血流が増加して、腫れ/発熱/疼痛を起こしています。この急性期に重要なのは炎症を抑制することで、ケガした場所を安静にし、発熱を抑えること、つまり冷やすことが重要になります。
冷やすのがよいという意見は、この一般的な医学の知見からの意見となります。
ケガの急性期を過ぎると、慢性期となります。ケガをした場所が疲労し、機能不全に陥っている状態になります。筋肉が硬くなることで血流が阻害され、疲労した場所に酸素と栄養が届かなくなり、その結果、重だるいような痛みが出ます。このことへの対応として、慢性期には温めて血流を改善させ、ケガをした場所に十分な酸素と栄養が行き届くようにする、つまり回復力を上げることが重要となります。
緊縛による神経障害の場合、縄により筋肉や血管が圧迫された状態が、筋肉が硬くなり血流が阻害される慢性期と近い状態になります。
温めるのがよいという意見は、経験則をよりどころとしていますが、この慢性期と緊縛の共通性からも支持されます。
温める/冷やすのいづれでもなく、なにもしないのがよいという意見もあります。
素人判断をして症状を悪化させるのではなく、病院で医師の診察を受け、しかるべき治療を受けるべきという考え方によるものです。
「ちゃんと医師の診察を受け、しかるべき治療を受けるべき」というのは理にかなっているように思えます。ただ、この意見の前提はすぐに医師の診察を受けられる必要があります。
みなさんはいつ緊縛をすることが多いでしょうか?最近は平日昼間にSMバーや縄会で緊縛をする機会もありますが、大多数は夜間や休日ではないでしょうか?整形外科、特に手を専門とする手外科の休日夜間診療はまだ一般的ではなく、医師の診察を受けるには12時間以上、あるいは2日ほどを要する場合もあります。それまでの間、何も対応をしないという判断はあるでしょうか?
「冷やす」のは炎症を抑制することを目的としています。つまり、冷やす前提としてケガをした場所が熱をもっているということになります。ケガをしていない部分と比較して熱をもっていない場合はまず温めるという対応をとるのがよいと考えます。ただし、筋肉の下の神経自体が傷ついて発熱している場合はなかなか気づきにくいということもあります。このため、温めることによって痛みがひどくなるという急性期の症状が出る場合は直ちに温めることを中止しましょう。