フレームランニング研修会 テキスト版
講師 杉山真理先生 東京保健医療専門職大学
主催 埼玉県障害者スポーツ協会
※研修会の内容を加筆修正したものです。音声版、動画版は今後アップする予定です。
1 先日、日本パラ陸上競技連盟主催の「フレームランニング指導者養成講習会」に参加いたしました。伝達講習会として皆様にお話しさせていただきます。
講師の方は、World Ability sportのアジアフレームランニング委員長であるリチャードキース先生でした。フレームランニングの歴史、クラス分け、トレーニングについての講義と実技がありました。
2 日本パラ陸連では、フレームランニングの普及事業を行っており、全国各地で体験会を行っています。その理由は、国際パラ陸連の選手権大会にフレームランニングの参加が決まったことです。2017年にすでに決まっていたことですが、今年のパリパラリンピックで実施される可能性もあって、注目度がアップしていると思います。残念ながら、パリパラリンピックの正式種目にはなりませんでしたが、選手権大会では100m走が実施されています。
3 競技として行う場合に、どのような選手が対象となるかというところですが、脳性麻痺児のための粗大運動能力分類(GMFCS)を用いて説明されていました。これは、小児のリハビリテーション分野で使用されている評価尺度の一つで、運動発達の変化をとらえることを目的として考案されたものです。6歳以降の年齢で最終的に獲得できる能力をレベルⅠ~Ⅴに分類しています。レベルⅠは制限なしに歩行可能、レベルⅡは歩行補助具なしに歩く、レベルⅢは歩行補助具を使って歩く、レベルⅣは自力移動が制限される、レベルⅤは電電同車椅子や環境制御装置を使っても自力移動が非常に制限されるとなっています。レベルⅢ~Ⅳがフレームランニングの主なターゲットになり得るだろうとのことです。
5車椅子レースのクラス分けでいうと、T31~T34が筋緊張亢進で車椅子で競技する選手のクラスになります。このうち、T33とT34の選手がフレームランニングに参加できる可能性があると思います。また、アテトーゼや片麻痺の選手で、立位での競技が難しい場合も、フレームランニングに適応する可能性があると思います。
6 T71とT72がフレームランニングのクラスになります。T71が障害がより重い選手、T72がT71よりも軽度の障害があり、かつフレームランニングの最小障害基準(MIC)をクリアーした選手ということになります。フレームランニングのクラスに該当しない場合は、T31~T38に割り当てることになります。日本パラ陸連のクラス分け委員会では、ただいま勉強中です。
7 フレームランナーは、対象者の身長に合わせてサイズ展開されているようです。世界中で6~7社が製作しています。残念ながら、日本では製作されていません。フレーム、サドル、胸当て、ブレーキ、ハンドルがついていて、調整可能です。
8 パーツの角度や高さを変えることができますし、パーツ自体を交換することもできます。脳性麻痺の方によく見られる足が開きにくく、膝と股関節な伸び切らない状態、はさみ足の場合、フレームと足がぶつかって傷ができることがあるようです。そのような場合には、股関節の内転防止パッドをつけることもできるそうです。競技として行う場合は、ランニングフレームの規格が国際パラ陸連のルール&レギュレーションで決まっています。
9 実際に座ったり、走る時の注意点ですが、先生が強調されていたのは、必ずヘルメットをかぶるということでした。座るだけという場合も、安全対策としてヘルメットをかぶることを徹底する必要があります。講習会時に健常の受講生が試乗する場合にも、厳しくチェックされていました。
10 胸当ては、女性の場合は、おっぱいの下に胸当てがくる位置にセットすると良いようです。胸当てに寄りかかりすぎて呼吸が苦しくならないように、上方につけてわきの下に当たって痛みや傷ができないように注意することが、合わせ方のポイントのようです。
11 基本姿勢についてです。ランニングですので、フレームランナーに座った姿勢を横から見たときに、走ってる姿勢になるようにしましょう。体幹がやや前傾している姿勢が基本で、ランニングしているような格好を目指しましょう。
12 サドルの高さについてですが、多くの選手が尖足になっていると思います。また、スプリント種目では、立位の選手、健常者では、前足部(つま先)が接地しています。フレームランニングでも、つま先が接地するくらいにサドルの高さをセットすることが良いようです。そして、足を動かすときに、股関節の可動域(曲げ伸ばし)が最大限に確保できるようにセッティングすることが重要です。
2024.1.22 埼玉県フレームランニング協会会長 塚越和巳