海外特別研究員としてイギリス(UK)に移住するにあたり,① 海外学振に採択されること,② UK Visaを取得すること,③ UKで賃貸契約すること,の3点は概して障壁になると思います.私の場合,事務手続きを後回しにする癖から事前の情報収集をほとんどせず,②と③に無策で臨み非常に苦労しました(悪因悪果).少数ながらもネット上に残された先人の記録に大変助けられたので,私も誰かの役に立つかもしれない体験談を書き残そうと思います.
最初に重要なこととして,私がここに書けるのは2025年4月渡航のケースです.外国人のUK居住を取り巻く情勢は頻繁にアップデートされています.例えば,渡航許可後に発行されていたBRPカードは2024年に廃止され,現在はeVisaに移行しています.十分な事前確認をお勧めします.当サイトを参考に生じたいかなる不利益にも,私はもちろん一切の責任を負いません.また,引用させていただいた情報に関する全ての権利等は各リンク先の管理者様にあります.別URLで更新されている可能性もありますので参考にする場合はご注意ください.
① 海外学振に採択される
頑張ってください.
② UK Visaを取得する
UK Visaには様々な種類がありますが,海外学振では通常 ‘Temporary Work - Government Authorised Exchange(旧名:Tier 5)’ visaを申請します.本VisaではUK内の受入機関がスポンサーとなることでCertificate of Sponsorship(CoS)番号が発行され,2年間の就労が可能になります.CoS番号の有効期限は3ヶ月なので,この間にVisa申請する必要があります.
採択を受入先に伝えると,CoS番号発行に必要な書類を要求されます.私の場合は↓でした.先人の方々(e.g., 2012年,2014年,2014年,2017年)と微妙に異なりますが,時期によるのか機関によるのかは分かりません.
採用内定通知
Employment references x2
パスポートのコピー
最終学位証明(修士)
その他メールテキスト
私が混乱したのは2点,2. Employment referencesと5に含まれていた ‘£1,270のEvidence of maintenance cost’ でした.結論としては,2は博士課程の指導教員ともう一人のメンターから受入教員宛の英文推薦状をもらい(自分で下書きし,修正・署名をもらった),5はメールテキストで「私は£1,270持っています」と宣言して終わりました.書類の提出後,受入先の事務担当者とビデオ通話し,パスポートと学位証明の原本を手元に持っていることを確認されました.
CoS番号を入手するとオンラインVisa申請が可能になりますが,申請に先んじてワーホリネットのサイトに隅から隅まで目を通すことを強くお勧めします.こちらは異なるVisaカテゴリ(Youth Mobilty Scheme visa)に主眼を置くサイトですが,幅広い情報が丁寧にまとめられており極めて有用です(要求される残高証明額など相違点には要注意).本サイトに従えば誰でも申請フォームを埋められると思います.
オンライン申請完了後,必要書類を揃えてVisa申請センターに赴きました.ちなみに,UK Visaは大使館ではなくVFS Global Visa申請センター(民間委託業者)で申請します.こちらの手続きもワーホリネットのガイドに従いました.念のため色々印刷して行きましたが,結局必要だったのは↓でした.
チェックリスト
申請書
パスポート
予約確認書
滞在先の修正レター(後述)
なお,資金証明はオンラインで事前提出しました.私はゆうちょ銀行の通帳を使いましたが,その翻訳にもワーホリネットの翻訳サービスを利用しました.本当に様様です.
Visa取得のタイムライン
2024.09.27 海外学振の採用内定
2024.10.07 採択を受入研究者に連絡
2024.11.01 受入先からCoS取得に必要な書類の通知
2025.02.17 全書類の送信完了
2025.02.20 CoS番号を受理
2025.02.28 オンラインVisa申請
2025.03.04 通帳翻訳・翻訳証明書を発注
2025.03.08 通帳翻訳・翻訳証明書を受理
2025.03.10 Visa申請センターで書類提出
2025.03.28 審査結果を受信
2025.04.01 パスポートをVisa申請センターで受取,eVisaをアクティベート
2025.04.09 UK入国(無人ゲート)
元々は4/1から渡航予定でしたが,Visa取得が間に合わなかったので学振に連絡して計画を変更しました.こうして見ると誰のせいで遅れたのかは一目瞭然ですね.ちなみに優先サービス(¥98,315 !?)を利用しましたが審査終了まで2週間以上かかりました(公式では通常2週間,優先で1週間).これが情報の修正をしたせいなのか,あるいは優先サービスを使わなければもっと時間を要したのかは分かりません.ウクライナ難民を優先するため遅れるかもとは公式に書いてありました.
さて,先述の通り申請書内の滞在先について修正を行いました.当初は自力で申請フォームを入力し,滞在先欄には「賃貸契約できるまでAirbnbかホテルに泊まる」と馬鹿正直に書いていました.ところが,申請書出力後にワーホリネットを発見し,よく見てみると「滞在先には確定していなくても必ず実在の住所を書け」とあります.確かに,空港で入国審査を受ける際,本当かどうか確かめもしないのにホテルを聞かれるし,予定であっても事前に滞在先を決めておくのが重要なのかもと思い当たり修正することにしました.ワーホリネットでは修正レターの雛形まで提供されています.最初から最後まで至れり尽くせりでした.
③ UKで賃貸契約する
先達の足跡を熟読し(e.g., 1,2,3,4,5,6,7,8),何が必要になるのか事前によく想定しておくことを強くお勧めします.私はこれらを渡航前日に見つけたので,入居までのイメージはおろか国際送金の手段すら持たず,漢らしく完全丸腰で日本を後にしました.以下には私が踏んだ実際のステップを示したのち,注意すべきポイントを列挙しようと思います.
入居までのタイムライン
2025.04.04 航空券を購入
2025.04.06 とりあえず1週間Airbnbを予約
2025.04.07 そういえばどうやって家を借りるのだろうと思いつき,さっと調べて諸々手遅れであると判明
2025.04.08 とりあえず£2,000(¥400,000)ほど空港で両替し,出立
2025.04.09 エディンバラ到着.受入ラボのマネージャーと会い,内見依頼やオファー文の書き方など聞く
2025.04.10 以降ひたすらRightmoveで内見オファー
2025.04.17 Airbnbを2週間延長
2025.04.21 最終的に入居するフラットを内見
2025.04.23 オファーアクセプト,必要書類・情報の通知,デポジット振込
2025.04.25 第三者信用調査フォームの入力完了
2025.04.28 審査完了.契約書類にサインし入居確定
2025.04.30 鍵受領・入居
注意点
国際送金手段の確保
UKでは日常生活で現金必須になることはまずないので,十分な限度額のクレジットカードさえあれば通常支障はありません(Visa/Masterが安全です.試行回数は少ないですがJCBが通ったことは一度もありません).問題は,入居確定後に要求されるデポジットを銀行振込しなければならないことです.私はりそな銀行(!?)にしか口座を持っておらず,窓口を経ずに海外送金する術は無さそうでした(家族を代理人にして行けたでしょうか? 委任状に判子もサインもできませんが).幸い渡航直前の思いつきで現金はそこそこ持っていたので振込先の銀行まで出向いてみましたが,マネーロンダリング対策でアカウント無しでは入金できないとのことでした.この,口座無いので家借りられない,住所無いので口座作れない,のループが詰みゲーを想起させます.最終的には新しく同僚になったポスドクに現金を手渡し,代わりに送金してもらってそのスクリーンショットを不動産屋に送りつけることで攻略しました.
こちらで丁寧に示されているように,日本の住所があるうちにWiseアカウントを開設しておくとよいです.りそな銀行からでも簡単に入送金できています.UK内でも開設自体はできますが,やはり住所証明が要求されます.ここで,私はデポジット振込後まで気づきませんでしたが,実はUKのオンラインバンクMonzoでは証明書類がなくともキャッシュカードの受け取りさえできれば口座を作ることができました(2025年4月).カード受け取り後にアプリから番号など入力して認証するとMonzoの残高証明書(住所付)を発行でき,なんとWiseの開設に使えました.ゲストによる郵便物の受け取りを仮住まいのオーナーが嫌がる可能性があるので(変更忘れでチェックアウト後も届き続けるリスクがある),その場合は難しいですが,職場や同僚の住所を使うなどして何とかできるかもしれません.なお現在でもこれが可能かは確認していません.
各種推薦状・保証人
Visa取得でもそうでしたが,UKではことあるごとに推薦状を求める文化のようです.信用調査では前の大家と雇用主の推薦状(雇用証明)を要求されましたが,結局私はどちらも準備できませんでした.博士課程までいた札幌の町工務店に英語で書類を書いてくれなんて頼めませんし,証明付翻訳を依頼する時間もありませんし(めんどくさい),また例の如く日本学術振興会は特別研究員との雇用関係を頑なに認めないためです.不動産屋や大家によっては半年分の家賃前払いなどで推薦状をスキップできるケースもあるようです.私の場合は少しの工夫の後に受入ラボのPIが保証人となってくれることで契約できましたが,保証人の条件がUK在住で持ち家と一定の収入があることなど結構厳しく,またPIも最初の打診では快諾したのに後から住宅ローンの契約内容によって無理だったかもと言い出すなど(結局OKだった),実はかなり綱渡りをしていた可能性もあります.
内見の様子・競争
内見依頼時にはオンラインからフォームを入力し,大体プルダウンで希望の日付・時間帯を入力しますが,おそらく既に埋まって非表示になっているスロットもかなりあり,希望日前に「入居者が決まったので内見はなくなりました」旨のメールが来る場合がほとんどです(体感では7割以上).とにかく早い者勝ちです.エディンバラはUKでもトップクラスに治安が良い街なので,よっぽど危なそうなエリア(実際行って確かめてはいない)でなければ片っ端からオファーしました.唯一気にした点は,ラボマネージャーからの強いおすすめ:窓が二重(double glazed)であることだけでした.スコットランドは冬寒い上に暖房費は高騰していますし,多少賑やかなエリアでも防音が期待できます.あと可能なら暖房はcentral heatingがよいと思います.ちなみに札幌で暖房費節約に役立っていたダウンジャケット&ズボンは,エディンバラでも1年の半分以上着用しています(寒がりなので).
幸運にも内見の日を迎えられた場合は,大抵物件のオートロックドア前で待っていれば不動産屋が来ます.そしてまた大抵は何人かが手持ち無沙汰そうに立っていて,みんなで一緒に内見することになります(遅れて来るやつもいる).全員ライバルです.内見後,正式なオファーをオンラインフォームなどで送るか,スタッフに直接その意思を伝えることで,大家によるテナント選別の卓に乗ることになります.日英逆のケースで考えてみても,外国人がネイティブに対して不利なのは自明だと思います.しかも私は未だに英語を話すのも聞くのも苦手です(2026年5月).いわんや来た当初をや.数を打ってアカデミックなバックグラウンドと,学振が唯一提供してくれるUK内でも(ちょっとだけ)平均以上の年収を信頼してくれる大家に当たるのを待つのみです.
その他住宅事情
エディンバラに限らず,UKの主要都市では住宅不足や家賃の高騰が深刻です.最終的に入居まで3週間かかりましたが,聞く限り1ヶ月以内に決まるのはかなりラッキーなようです.2025年4月における私の体感としては,一人用フラットは安くても月£1,000(¥200,000)ほど,収入を考えると£1,500程度までかなあといった相場感で探していました.今住んでいる所は£875(契約時.翌年から£925に値上げ)で見つけた中では最安,作りは古かったりちょっと汚かったりもしますがかなり満足しています.ロンドン在住の友人曰く,あちらは比にならないほど家賃が高く,数人でフラットシェアしないとやっていけないほどだそうです(エディンバラでもシェアは割とメジャーみたいですが検討しませんでした).
エディンバラは概して建物が古く,電気式のシャワーが後付けされた物件も多くあります.私の部屋もそうですが,これが夜間に動作せず水しか出なくなることがあります.イマイチ再現性が無いので不動産屋に報告もしていませんが,明らかに夜だけ全水道で水圧が弱くなるので,このせいで安全機能が働いて加熱をストップしている可能性が高そうです.Chat GPT曰く夜間の低水圧はUKあるあるらしいので,備忘録的に書き残しておきます.同僚の一人は1ヶ月電気シャワーが止まって修理もされず,ガスで動く台所の流しとケトルでお湯を調達していると言っていました(私のリスニングが正確なら).日本ではあり得ない住宅トラブルはこの国では茶飯事です.