葉緑体ドロボウから細胞内共生の進化を探る
大沼が神戸大学内海域環境教育センターに講師として着任しました。よろしくお願いいたします。
今後のHP更新は以下の研究室HPがメインになると思います。 よろしければどうぞ。
大沼 亮 博士(理学)
Ryo Onuma, PhD
私は「生物はどのようにして葉緑体を獲得したか」に興味をもって研究しています。葉緑体は,もともと他の生物を食べて生きていた生物が,葉緑体の「もと」となる生物を食べて,自分の細胞の中に住まわせることに成功したという,細胞内共生に由来します。
私は,細胞内共生における「2つの生物が1つの生物として成立する進化」に神秘性を感じ,盗葉緑体性渦鞭毛藻類ヌスットディニウム属を中心に研究してきました。
動画の生物はNusuttodinium aeruginosum(ヌスットディニウム アエルギノーサム)という生き物で,「渦鞭毛藻 (dinoflagellate)」という単細胞生物です。細胞が小さいため,肉眼で見ることはできませんが,淡水の池や湖に生息しており,鮮やかな青緑色をした”葉緑体”をもっています。実はこの葉緑体,もともと自分のものではありません。名前の”ヌスット”にある通り,この生物は他の生物の葉緑体を盗む現象を示し,属名の”ヌスット”は日本語の「盗人」に由来しています。
動画はヌスットディニウムが葉緑体のもとになる生物(クリプト藻)を捕食している動画です。8倍速にしてあります。透明な細胞は葉緑体を食べきってしまった細胞,緑の細胞は葉緑体を維持している細胞です。
ヌスットディニウムは自分自身は葉緑体をもっていませんが,イラストのように,他の藻類を細胞内に取り込んで,その葉緑体をあたかも自分がもとからもっていた葉緑体のように,細胞の中で一時的に維持します。このような葉緑体を盗む現象のことを「盗葉緑体 (kleptochloroplast)」現象といい,細胞内共生の手前であると考えられています。
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