小泉利恵(筑波大学)Q & A

1.学生時代の思い出やその当時打ち込まれたことなどについて教えてください。


学部時代には、いろいろなことに挑戦しました。例えば、手話劇のサークルで手話を学びつつ、大学祭に向けて手話劇の役者や裏方をやりました。その中で失敗・成功体験を繰り返し、見えてくる人の行動や考え方の違い、社会のルールを学び、自分が他の人に合わせられる部分と譲れない部分に気づきました。

 

英語が話せるようになりたいと勉強を続けましたが、英字新聞を購読しては読み切れなかったり、アメリカのニュースを聞いては全然理解できなかったりなど、自分の力より難しすぎる教材で学ぼうとしていて、英語の習得研究を学んだ今から考えると、効果的でない学習をしていました。また、アメリカに2週間のホームステイに行って、ホームシックになりながらも、文化の多様性や英語を話すことで世界が広がることを実感しました。

2.ご自身の専門に取り組まれるようになったきっかけを教えてください。


今までいろいろな英語の試験に挑戦し、スピーキングテストの点が低くて何度も不合格になる経験をしました。どうしてテストの時に上手くふるまえないのかに悩み、最初は自分の力の問題と考えていました。しかし大学4年生のときに、『無責任なテストが「落ちこぼれ」を作る』(大修館書店)という本を読んで、テストが悪いという視点もあり、それを研究の対象にもできるのだということを知り、それがきっかけで今の研究分野に興味を持ちました。

 

中学校教員として定期テストを作る中で、どんな問題を入れたらいいか、どう採点したらいいか、特にスピーキングテストを行うべきか、行うならばどう授業と関係づけながら行うのかなどを悶々と考えました。本を読んでもわからないことばかりで、もう少し勉強したいと大学院に進み、現在に至っています。

3. 研究テーマの魅力や面白さについて教えてください。


振り返ってみてみください。今までに受けたテストで何か疑問に持ったことはあるのではないでしょうか。自分のことで考えると、定期テストに授業で習っていない範囲の問題が出ていたり、逆に授業でやったスピーキングは評価には入らなかったり、スピーチコンテストの出場者や優勝者の選び方に納得がいかなかったり、頑張って書いた英語のライティングも添削がなく、点数も教えてもらえなかったりなど、どうして?と思うことはたくさんありました。またスピーチコンテストで緊張のあまり倒れたこともあり、自分の力以外にも体調やプレッシャーがパフォーマンスに影響してしまうことは実感していました。そのようなテストに関する素朴な疑問が研究テーマになるのが、言語評価・テスティング研究という、私が専門とする分野です。自分自身の疑問は、テストの適切さを調べる、また学習に役立つテストを作るという今のテーマにつながっています。

4.学生へのメッセージをお願いいたします。


自分の興味のあることを突き詰めて取り組んでください。自分が得意でないことにも取り組んでみてください。その中で見える、自分の特徴や周りの反応を観察して、長い人生の中で続けて行っていきたいことを見つけてほしいと思います。それが何か辛いことがあったときに戻れる自分の核になると思います。


何事もいい機会があれば逃さないでください。「チャンスの神様には前髪しかない」は私の好きな言葉です。英語学習に関しては、自分は長期留学がしたかったですができなかったので、その機会がある人には積極的に勧めたいと思います。ただ、留学すれば英語ができるようになるわけではありません。自分自身は、日本で勉強しても十分使えるようになるはずと思って行動してきました。今でも難しいことはたくさんありますが、英語を使って、日本語を話さない友人とやり取りでき、仕事もできています。英語学習で世界と可能性が広がるのを体験してほしいと思います。

本稿は、前任校の清泉女子大学の教員紹介ページへ掲載していたものを転載したものです。問いは清泉女子大学の方々からいただいたもので、大変お世話になりました。